陽菜子’s Diary 11月23日(水)
<陽菜子’s Diary>
11月23日(水)
仲直りした。
藤野くんが、朝、「いつも世話になってるお詫び」って言いながら、大量の飴を私の机に積み上げた!
袋から出してポケットに詰め込んできたらしくて、あとからあとから出てくるから、どれだけ出てくるのかと思って笑ってしまった。たぶん、2袋か3袋分はあったんじゃないかな。笑ったら、怒っていたこともみんな飛んで行ってしまった。
でも、やっぱりちゃんと話したくて、メールにするか、電話にするか迷っていたら、藤野くんが電話をくれた。で、無事に仲直りできた。よかった。
私は藤野くんの「一番仲良しの友達」ってことになった。一番って言っても、もちろん今の時点でってことだけど。それに、女子の中ではってこと。藤野くんにはちゃんと男の子の友達もいるから。
・・・でも、よく考えると、これでもやっぱり近付き過ぎかな?
“特別” は困る。だって、それじゃ、ほかの人とは別格ってことになっちゃうから。
そうしたら、藤野くんが “一番仲良し” はどうかって言ってくれて、それなら、たくさんいる中で単に一番ってことだからいいかな、と思ったけど。
要するに、いざというときの言い訳がほしいだけかも。
だけど、その一番も、あんまり長くないような気がする。
放課後、教室で、里緒と藤野くんが話しているところを見た。2人とも部活があるから、すぐに別々に行ってしまったけど、話しているところはすごくいい雰囲気だった。藤野くんは優しい表情をしていて。里緒は素直で可愛らしい人だから、みんな彼女には優しくしたくなる。私だってそうなんだから、男の子たちはもちろんだよね。
さっき話した様子では、藤野くんは、まだ里緒のことは気付かないみたいだけど、気付いたときには「一番仲良し」は返上しないといけないね。
この前、藤野くんは人気があるんだって本人に言ったら、全然本気にしないで笑ってた。まあ、本当に気付いてないのかもしれない。藤野くんは、そういうことには興味がなさそうに見えるからね。
でも、更衣室やトイレでちらっと聞こえる話題とかうわさ話 ―― 中学のときのことが忘れられないから、今でも、そういう声には敏感になってしまう。―― で、藤野くんの名前が聞こえることがけっこうある。
よく見かけるのは、去年、藤野くんと同じクラスだったらしい人。「今日はちょっと話せたよー!」とか、楽しそうにお友達と話してる。まどかさんも最近、体育で一緒のときとか、よく藤野くんの話題が出る。ソフト部だから、練習のときによく見かけるらしくて、どんな様子だったかとか、いろいろ。まどかさんも部長さんだから、藤野くんの苦労がよくわかるみたいだし。
でも、今のところ、一番有力なのは里緒だね。いつも近くにいて、話すチャンスがたくさんあるから。