陽菜子’s Diary 11月21日(月)
<陽菜子’s Diary>
11月21日(月)
今日、なっちゃんがいきなり、藤野くんが私を「ぴいちゃん」て呼んでないねって言い出して、ものすごくあせった。だって、里緒が一緒にいるのに! なっちゃんだって、里緒が藤野くんを好きなこと知ってるのに。どうして?
本当は呼ばれてる。
だけど、藤野くんがそう呼ぶのは、ほかに誰もいないときだけ。みんなでいるときは名字で呼ぶ。たぶん、恥ずかしいんだと思う。
それに気付いたのは、夏休みが終わってから。
呼んでもいいって言ったのは自分だけど、よく考えたら舞ちゃんがいるんだったと思って、みんなの前では名字で呼ばれる方が安心だった。今だって、里緒がいるし、たぶん、ほかにも藤野くんのことが好きな人がいると思う。そういう人たちに、藤野くんと私が仲良しだと勘違いされるのが恐い。
恐い・・・。
結局、自分の身を守ってるだけだ。
でも、学校では大切なことだ。
それと、本当はもう1つ理由がある。
岡田くんに「ぴいちゃん」て言われるのとはちょっと違って、藤野くんの言い方は、なんていうか・・・やさしい?
呼ばれると、ほんわかする。
岡田くんに・・・岡田くんだけじゃなくてほかの人もだけど、「ぴいちゃん」って呼ばれるときには、ちょっとふざけて呼んでるだけっていうイメージがある。「はあい。」って答えたくなるような、楽しい感じ。
でも、藤野くんは違う。安心感があって、ほっとする。たまに、ちょっとドキッとする。そんなにしょっちゅう、2人で話しているわけじゃないけど。
そんなふうだから、みんなの前で呼ばれるのは、なんとなく困る。
だったら、やめてもらえばいいのかもしれない。
だけど、それはちょっと淋しいな。せっかく仲良くなれたのに。
それに、言えないよね。岡田くんはずっと呼んでるし。
ああ、何だか混乱してきた!
なっちゃんが急にあんなこと言うからだよ!
・・・・・・・・
藤野くんからメールが来た!
『俺がぴいちゃんって呼ぶのは迷惑?』って一言だけ!
そういうふうに受け取ったんだ!
あのとき、本当のことを言わないでほしいって思ったのが通じてほっとしたんだけど。
どうしよう?!
何て説明したらいいんだろう?