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ぴいちゃん日記  作者: 虹色
修学旅行に行こう!
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陽菜子’s Diary 10月7日(金)

<陽菜子’s Diary>



10月7日(金)


後期の授業が始まって5日目。新しい席にも慣れてきた。


先週、席替えをしたときは前から2番目の席だったけど、月曜日の最初の授業で、一番前の席に代わることになってしまった。前の藤野くんの背中で黒板が見えなかったから。

横から何度ものぞいていたら、先生に、うっとうしいから交代しろって言われた。なんだか小学生みたいで恥ずかしかった。

でも、この席は、どうやら先生の目が頭の上を通り越して行くらしい。後ろの藤野くんが、よく名前を呼ばれている。


それだけじゃなくて、もう1つ、藤野くんと交代してほっとしたことがある。

里緒のこと。

打ち上げのとき、「協力して」って言われて、藤野くんと里緒が話すきっかけを作らなくちゃと思っていたけど、席を代わったから、里緒と藤野くんが隣同士になった。これで、私は何もしなくても大丈夫。


・・・って思ったけど、藤野くんは里緒じゃなくて、私にいろいろ訊いてきてしまって、あれれ?だった。今日子がそれに気付いて、「藤野くんって、ぴいちゃんにばっかり話しかけるよね。」なんて言うから、ますます困った。藤野くんが私に話しかけるのは、別に私のせいじゃないのに、そんなふうに責められても・・・。今日子は、ときどき恐いときがある。

里緒にだって慣れれば話しかけるようになるのに。


仕方がないので、藤野くんが私だけに話しかけるわけじゃないとわかってもらうために、話しかけられたときは今日子に振ることにした。さすがに里緒は私から遠いし。そうすれば、藤野くんも今日子に慣れるんじゃないかと思って。

そうしたら、それを今日子がさらに里緒に振るので、たいしたことじゃない話に結論が出るまでに、すごく面倒なことになってしまった。

で、藤野くんは、今日は直接、里緒に訊いていた。

私、がんばったよね?



・・・本当は、もう1つ、ほっとしたことがある。

藤野くんの背中。


月曜日の朝、藤野くんは学ランを脱いでワイシャツ姿だった。

その背中を見ていたら、応援合戦のリハーサルで、藤野くんに浴衣を着せたときのことを思い出した。

藤野くんが一番最初で、うまくできるかどうか必死だったから気にしないようにしていたけど、紐をかけるときに背中に手を回さなくちゃいけなくて、まるで・・・抱きつくようになってしまった。事前によく考えて、誰かに手伝ってもらえばよかったんだけど。2人目からは藤野くんやほかの人が手伝ってくれたんだけど、もしかしたら、みんな嫌だったのかもしれない。


だから、被害に遭ったのは藤野くんだけで、あの朝、藤野くんの背中を見ていたら、この背中に自分が腕を回したんだって思ってしまって・・・こんなこと、書くだけでも恥ずかしいよ! 困ったことに、いつもの想像力でその光景が目に浮かんで、前を見ることができなくなってしまった。本当に、なんてことをしてしまったんだろう?

なんて考えていたちょうどそのときにプリントが配られて、藤野くんが振り向いたから、ますますドキドキして、プリントを落としそうになって慌てた。

席を交代して、背中が目に入らなくなって、ものすごくほっとした。もしかしたら、これが一番ほっとしたことかも。



今日の帰りに、廊下で藤野くんと一緒になって、昇降口まで話しながら歩いた。

バイトがあるときはいつも、帰りのHRのあと、昇降口や自転車置き場が混むのを避けて、少しゆっくり出ることにしている。その間に図書室に寄ったりとか。

部活がある人はみんないつも急いでいて、藤野くんも岡田くんや梶山くんと一緒に行ったようだったのに、何か用事があったらしくて、階段のあたりで会った。

背中のことがチラチラと浮かんできてちょっと困ったけど、なんとか無事に話ができたと思う。別にたいした話題じゃなくて、来週の面談のこととか。


来週の面談、ちょっと心配だな。








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