陽菜子’s Diary 8月2日(火)
<陽菜子’s Diary>
8月2日(火)
今日、バイト先にうちの学校の野球部の人たちが来てびっくりした。いつもお店に来ている地元のK高に遠征だったらしくて、そこの野球部の人たちと一緒だった。野球部全員じゃなかったけど、うちのクラスの3人はいた。
6月にそこのお店の制服ができて、それまではエプロンだけだったのに、紺のワンピースに帽子までついている。白いエプロンをかけるとメイド服に似ていて、なんとなくコスプレしているような気がして恥ずかしい。エプロンがフリフリじゃなかったことが不幸中の幸いだ。
紺と白とリボンの赤はフランスの国旗のつもりだって、店長が言ってた。あのお店はフランスパンが自慢だから、私たちの制服もフランスの国旗の色にしたらしい。
もう1か月半くらいたったから、いつも来る人たちにはなんでもなくなったけど、知り合いには会いたくなかった。藤野くんや梶山くんがお店に入って来たときは、見られたくないし、奥に引っ込むわけにもいかないし、本当に消えてしまいたいほど恥ずかしかった!岡田くんはレジに来たときにほめてくれたけど、「見ないで!服のことは言わないで!」って感じ。
パンを袋に入れるときも、レジを打つときも、手が震えてしまうほど緊張した。バイトを始めたときよりも、もっとひどかったかも。
家に帰ったら、なっちゃんからメールが来て、今日のことをもう知ってた。きっと、梶山くんから話が回ったんだと思う。
なっちゃんは面白がっている。そりゃあ、なっちゃんは演劇部で、衣装を着るのはいつものことかもしれないけど。
私は目立ちたくないのに。
メール。
さっき、藤野くんからもメールがきた。
『みんなで押しかけて、驚かせてごめん。』、それと『あんなに遠くから通ってるなんてびっくりした。』って。
別に、あのお店に来たのは偶然のことで、野球部の人たちが悪いわけじゃない。
藤野くんは、いつも私のことを気遣ってくれる。親切な人だ。
でも、きっと親切なのは誰に対しても同じで、私に特別ってことではないと思う。藤野くんの特別は舞ちゃんだし。
一時期、席が近かったからお話しするようになって、ちょっとは冗談も言えるようになったけど、そのくらいはみんなにとっては普通のことなんだよね。だって、ほかの女の子たちはみんな、男の子と普通にしゃべってるもんね。
だけど、私はこういうメールをもらっても、何て返したらいいかわからなくて困ってしまう。・・・で、まだ返信できないでいる。知らんぷりするのは悪いから、もちろんお返事はするけど。
なんて書こう?