1. 見上げるほどに大きな貴方は。
うん、わかるよ。あなたの気持ちはわかってる。
私もそうしたい。是非そうしたい。
竜がいない部分の説明は、すべて省きたい。
けれどそれはさすがにアレなので、私についてと現状に至るまでをこれくらいでまとめてみた。
1、名前。 山井 愛歌。京都の大学に通う。4月から大学2年になる。弟と二人暮らし中。
2、主に関わる人物。「極端な父」「天然の母」「癒しの弟妹」「最強幼馴染」「世渡り上手(親友)」
3、性格。 「無駄に世話焼き、気づけば渦中」(幼馴染様言)
4、トリップの経緯。 授業は午前のみの休憩日、機嫌良く帰りのバスの列に並んでいたら地面が抜けた。
5、落ちた先。 一面、七色ウォーターオパールと真珠の世界。と、思ったら巨大な竜の体に取り囲まれていた。
ん、十二分だ。今日日異世界トリップなんて珍しくもないし(二次元的な意味で)、愛しの竜もご登場だ。
なのでここから、回想をはじめたいと思います。
* * *
あ、そうそう。突然ですが皆さま、京都タワーをご存知でしょうか。
いきなり地面がすっこ抜けたことに驚いたのもつかの間、すぐさま何らかの平面に着地したことにまた驚いた私は、何故かその場でばたばたと足踏みした挙句すっ転んで尻餅をついた。
恥。まさに恥。パニックに陥ったとはいえ、自分でも意味不明すぎだ。
分厚い脂肪で大事無かった尻を撫で、せめて誰か一人くらいは笑っていてくれますようにと祈りながら手をつき立ち上がろ…………え、なにこの床。
触れた手のひらから伝わる感触も、透明な真珠のような色も、完全に未知。
一着二百万円のベルベットワンピースに触り、一粒百うん十万の真珠を見たことがあるけど。(言うまでもないが。双方、断じて我が家のものではない)
正直、比較にならなかった。
おいおい一体、どこの大馬鹿野郎がとち狂ってこの奇跡のかたまりのように美しい宝石を床にしようなんぞ思いつきやがったのか。
もはや犯罪に近い愚行への怒りにめでたく自らの痴態を忘れ、私は輝く床の終わりを探して視線を上げる。
上げて上げて上げて上げて、俯いていた顔が真上を向いた頃。
京都駅中央出口のちょっと先から見上げた京都タワーくらいの大きさの、竜と目が合ったんです。