12 - 悪食ん
「サボテンさん、サボテンさん。どうしてあなたはそんなトゲトゲしているの?」
「それはね……お前を食うためだああああああ!!」
サボテンの棘って歯だったんだ。襲い掛かってきたサボテンを返り討ちにすると、
私はそのままステーキにして食べた。酸味があったけどこれはこれでイケた。
後で調べたら棘は葉だったらしい。そういうことじゃないんだけど。
「カニさん、カニさん。どうしてあなたはそんなに鋭いハサミをもっているの?」
「それはね……お前を食うためだああああああ!!」
そうこなくっちゃ! 私は襲い掛かってきたカニを返り討ちにすると、
塩ゆでにして、熱いうちに食べた。甘みがあって、プリプリとして美味しかった。
ハサミ部分にもしっかり身が詰まっているんだな。カニミソは後に取っておこう。
「オオカミさん、オオカミさん。どうしてあなたはそんなにお口が大きいの?」
「それは…そういう種族だから仕方ないっていうか…キミ、あまり他人の外見をとやかく言ってはいけないよ」
「ああ、ごめんなさい」
「いや、いいんだ。強いて言うなら、しっかり獲物を捕らえて、肉を噛みちぎるためかな。そういう進化をしてきたからさ」
「やっぱり肉を食べたいとは思っているの?」
「まぁ、肉食だからね。キミたち人間だって肉は食べるだろう? でも、だからといってキミを食べようとは思わないよ」
ちぇっ。狼肉ってどんな味か知りたかったのに。襲い掛かってきてよ。
手足とか筋肉質で硬そうだけど、赤身多めでサッパリしておいしそうだなぁ。
今からでも食べちゃおうかな。ダメかな。なんでか妙に賢いやつみたいだ。残念。
「キミはこれからどこに行くんだい?」
賢い狼がそう言った。
「おばあさんの家だよ。お使いを頼まれていたの」
「へぇ、偉いんだね。何を持って行ってあげるんだい?」
『食べ物』
私がそう言うと、狼がスッと真顔になった。どこかおびえているように見える。
私、何かおかしなこと言ったかな。
「そ、そうか。気を付けて行きなさい。ここらには人も襲うクマが出るって話だから」
「分かった。ありがとうオオカミさん」
私は急に弱々しくなった狼と別れて、森の中をしばらく歩いていると、
途中で突然大きな銃声が聞こえた。
その方へ向かってみると、猟師さんがクマから逃げていた。
「クソッ、まさか二頭いるとは」
私は猟師さんを襲っていたクマを返り討ちにすると、
その一頭を譲ってもらうことにした。
もう一頭を確認しに行くと、既に仕留められていた。
「い、いやぁ、助かったよ。嬢ちゃん…強いんだな」
「あなたこそ、素晴らしい腕前じゃないですか」
お互い固く握手を交わした後、私は猟師さんに手を振って別れ、
クマを背負っておばあさんの家へ向かった。
背中がだいぶケモノ臭いけど仕方がない。うーん、おばあさん喜んでくれるかな。
私がクマを引きずりながらおばあさんの家に着くと、
おばあさんは家を食べていた。
「遅かったじゃないか。待ちくたびれたよ」
「ごめんごめん、ちょっと色々あってさ」
おばあさんは私が背負っていたクマを見ると、
目をギラつかせ、じゅるりと舌なめずりをした。
「良い物捕まえたね。今夜はごちそうになりそうだ」
「ふふーん。でしょ? 結構頑張ったんだから」
私は先に、大きなクーラーボックスからサボテンとカニを取り出して、
サッと調理をすると、前菜としておばあさんに振る舞った。
おばあさんはそれをぺろりと平らげていた。
「クマは調理に時間かかっちゃうけど、大丈夫?」
「あぁいいよ。その間何か食べてゆっくり待ってるからね」
おばあさんはそう言って、余っていた椅子を食べ始めた。
私はクマに血抜きなどの処理をしっかりとした後で、
巨大な鍋で、臭みを消しながらじっくりと長い時間をかけて煮込み、
出来上がった物を、おばあさんと向かい合って一緒に食べさせてもらった。
「はー、お腹いっぱい。お肉ほろほろで美味しかったぁ」
「良い物をありがとうね。うまかったよ」
「良かった。また取ってくるね」
お腹がいっぱいになって満足したところで、
私は以前から気になっていたことを、おばあさんに尋ねてみた。
「おばあさん、おばあさん。どうしておばあさんは色んな物を食べているの?」
「おや、今更そんなことを聞くのかい? 人は何したって食わなきゃ生きていけないんだ。それを楽しまないでどうするんだい」
「それもそうだね」
私が納得して頷いていると、おばあさんはお皿をバリバリと食べ始めた。
これでもちょっと物足りなかったのかもしれない。
おばあさんには敵わないな。私もなんでも食べられるようにならなきゃ。




