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靴跡の花

作者: 北峰
掲載日:2026/03/25

 私はいつもあなたの後を追いかけていた。


 吐息が白く染まる頃になると、外に出たがらない私を置いて、あなたは先へ行ってしまう。振り返らないその背中を見上げて、私は急に不安に駆られた。


 扉の向こうは一面の銀世界。

 さくり、さくりと純白の地を踏みしめる音を聞きつけて、私はその後を追う。


 あなたがつけた靴跡。

 幾度も同じように冬を越して、一目で見分けることができるようになってしまった。

 あなたの靴跡の上に、私はそっと足を乗せる。私の足跡をすっぽり包んでしまう、大きな跡の上に。


 耳のちぎれそうな寒風の吹きつける冬。

 足の裏から凍りつきそうな、冷たい雪。


 私はどちらも大嫌いだった。

 でも、あなたの靴跡を踏みしめる、その時だけが幸せだった。


 そして、いつしか靴跡は二組になった。

 あなたの隣を歩む、一回り小さな靴跡。

 それでも私は、あなたの後を追いかけることをやめなかった。


 やがて、靴跡はもう一組増えた。

 二つの跡の間を歩む、とても小さなもう一つの足跡。


 靴跡が増えるたび、笑い声が増えてゆく。それを見守るのが私の日課になっていた。

 それでも私は、あなたの後をついてゆく。


 ふと、私の前を歩いていたあなたが振り返り、靴跡を指差した。


「ほら、見てごらん。こいつは昔っから雪に足を突っ込まないように、俺の踏んだ後を歩いてくるんだ」

「まあ、本当。上手に足跡の上を踏んでるのね」


 両親の会話の間に、幼い娘が歓声を上げる。


「猫の足跡ってお花みたい!」


 その言葉に、夫婦は顔を見合わせて笑った。


 ――それも、いいかもしれない。


 おいで、と差しのべられた手に、私はそっと頬を寄せる。温かな手のひらの温度が心地良い。


 これが私の幸せ。

 靴跡に咲く花のように、私は彼らの幸福に添える花になろう。

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― 新着の感想 ―
にゃんこの足跡いいですよね。 ただ….コンクリートへの猫の足跡とかは、 現場の職人さんたちかわいそうってなりますが
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