やっぱり旅では金銭トラブルがつきもの
次回予告
3月10日8時、お楽しみに
釜山の駅は、人でいっぱいだった。
天井が高くて、声が響く。
韓国語のアナウンスが何度も流れている。
私たちは駅のベンチに座っていた。
サラがスマホを見ながら言う。
「中国に行くなら、まずソウル」
「うん」
ミナが頷く。
「それで?」
「そこから中国行きのフェリーか電車」
ユイは地図を広げていた。
赤い線。
日本からモンゴルまで続く線。
でもサラは言った。
「問題ある」
ミナが聞く。
「何?」
サラはスマホを見せる。
「値段」
私たちは画面を覗き込む。
ソウル行きの新幹線。
金額が表示されている。
ミナが言う。
「……高くない?」
サラは頷く。
「かなり」
私たちはお金を出し合った。
テーブルの上。
財布から出した紙幣と硬貨。
合計する。
沈黙。
ミナが言う。
「足りなくない?」
サラが言う。
「足りない」
私は聞く。
「どれくらい?」
サラは計算してから言った。
「三人分なら行ける」
ユイが顔を上げる。
「四人は?」
サラは肩をすくめる。
「無理」
ミナが笑う。
「ちょっと待って」
「なに?」
「まだ韓国だよ?」
確かに。
旅は始まったばかり。
中国もモンゴルも、まだ遠い。
それなのに。
もうお金が足りない。
私はユイを見る。
「どうする?」
ユイは少し考えていた。
それから言う。
「安い方法ある」
ミナが聞く。
「なに?」
ユイは駅の外を指さす。
「バス」
サラがすぐ言う。
「時間かかる」
「うん」
「すごく」
「うん」
ミナは笑う。
「それでいいじゃん」
サラがため息をつく。
「何時間だと思ってる?」
ユイはスマホを覗き込む。
「六時間」
ミナが吹き出す。
「長っ!」
私は笑ってしまった。
でも少しだけ、楽しい。
こういうトラブルも、旅っぽい。
そのときだった。
ミナが急にポケットを触る。
もう一度触る。
もう一度。
顔が変わった。
「……あれ?」
私たちは見る。
「どうしたの?」
ミナはゆっくり言った。
「財布」
嫌な予感がした。
「ない」
空気が止まる。
サラが聞く。
「冗談?」
ミナは首を振る。
「ほんとに」
バッグを開ける。
服を出す。
でもない。
私は聞く。
「いつまであった?」
ミナは考える。
「屋台……」
トッポッキ。
朝の市場。
四人で食べた場所。
ミナが言う。
「たぶん」
そして小さく言った。
「落とした」
駅の中の音が急に遠くなる。
サラが静かに言う。
「いくら入ってた?」
ミナは答えた。
「三万」
円じゃない。
三万円。
私たちは顔を見合わせる。
旅はまだ一日目。
そしてもう。
大ピンチだった。
ユイはゆっくり立ち上がった。
「戻る」
「え?」
「市場」
私は聞く。
「あると思う?」
ユイは少しだけ笑った。
「わかんない」
それから言う。
「でも探す」
私たちは駅を飛び出した。
知らない国の街。
言葉もわからない場所。
その中で。




