最初の海外
朝、船の揺れで目が覚めた。
目を開けると、天井が少し揺れている。
しばらく何が起きているのかわからなかった。
それから思い出す。
フェリー。
韓国に向かう船。
隣を見ると、ミナが椅子に丸まって寝ていた。
口が少し開いている。
向かいの席ではサラがスマホを見ている。
「おはよう」
私が言うと、サラは軽く手を上げた。
「もうすぐ着くよ」
「え?」
急に目が覚める。
私は立ち上がって窓を見る。
海。
そして遠くに、陸。
見たことのない街並み。
サラが言う。
「釜山」
その一言で、胸が少しだけ変な感じになる。
日本じゃない場所。
ミナも起きた。
「着いた?」
「もうすぐ」
ユイは甲板にいるらしい。
私たちは外に出る。
朝の風が強い。
海の向こうに、大きな港が見えていた。
高いビル。
クレーン。
看板。
知らない文字。
ミナが小さく言う。
「……外国だ」
サラが笑う。
「そりゃそう」
でも、私も同じ気持ちだった。
船がゆっくり港に近づく。
人が並び始める。
パスポートを準備する。
私は少しだけ手が汗ばんでいた。
入国審査。
順番が来る。
制服の係員。
韓国語と英語。
サラが前に出る。
「Tourism」
係員は無表情でスタンプを押す。
パスポートが返ってくる。
それだけ。
それだけなのに。
国境を越えた。
建物を出る。
そこはもう完全に外国だった。
道路の看板。
店の文字。
聞こえる言葉。
全部知らない。
ミナが笑う。
「やばい、海外だ」
サラが言う。
「今さら」
ユイは港の外を見ている。
まるで何か探しているみたいに。
「まずどうする?」
私が聞く。
ユイは少し考える。
「お腹すいた」
ミナが即答する。
「それ!」
私たちは駅の近くの市場に行く。
屋台が並んでいる。
煙。
匂い。
人の声。
韓国語が飛び交っている。
ミナが立ち止まる。
「何これ」
サラが言う。
「トッポッキ」
赤いソースの餅みたいな食べ物。
ユイが買う。
紙皿に入ったトッポッキ。
四人でつつく。
ミナが一口食べて叫ぶ。
「熱っ!」
サラが笑う。
私は食べる。
辛い。
でも美味しい。
屋台の椅子に座って、四人で食べる。
知らない国の朝。
ユイが言う。
「最初の国」
ミナが聞く。
「次は?」
ユイは答える。
「中国」
私はふと思う。
昨日まで普通の高校生だったのに。
今は外国の屋台で朝ごはんを食べている。
そしてこの旅は
————まだ始まったばかり。
そのとき、サラがスマホを見て言った。
「ねえ」
「なに?」
サラは少し眉をひそめていた。
「中国行きの電車」
「うん」
「思ったより難しいかも」
ミナが聞く。
「なんで?」
サラはスマホを見せる。
そこには英語の記事。
私は読めない。
でも一つだけわかった。
国境。
その文字を見たとき。
この旅は
ただの旅行じゃないんだと
初めて少しだけ思った。
次回予告
21時、お楽しみに




