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【13話】ローゼス様と王都へ


 翌日。

 

 バーロイ王国郊外のフィラリオル邸から、馬車を走らせること三時間ほど。

 ミリスの誕生日プレゼントを購入するため、私とローゼス様は王都を訪れていた。

 

「とっても賑わっていますね!」


 石畳で舗装された路上の上には、多くの人が出歩いている。

 道端には露店がずらっと並んでいて、露店商が客を呼び込もうと声を張り上げていた。

 

 活気あふれる光景に、私のテンションは自然と上がっていく。

 

「楽しそうだな」

「はい!」


 フィラリオル邸から一歩も出ていない生活をしていた私にとって、王都の光景はとても新鮮に映る。

 見ているだけでも楽しい気分になっていた。


「では、ドレスを購入したあとでここを回ってみようか」

「よろしいのですか?」

「せっかく王都まで来たんだ。そのまま帰るというのも味気ない」

「ありがとうございます! お言葉に甘えさせていただきますね!」


 街並みを一目見たときから、回ってみたいと思っていた。

 ありがたい申し出に、私は自分の気持ちに正直になって答えた。

 

 ローゼス様、本当に変わったわね。

 

 知り合った当時のローゼス様は、それはもう私を嫌っていた。

 今みたく気遣ってくれるような真似なんて、絶対にしてくれなかっただろう。

 

 今のローゼス様だったらヒーローに相応しいかも――なんてね。

 

 おかしな冗談を思い浮かべてしまった私は、ひとり小さく笑う。

 

「うん? どうしたんだ?」

「いえ、なんでもありません。さぁ、ドレスを買いに行きましょう!」

「……あぁ」


 少し怪訝そうにしているローゼス様と一緒に、私は歩き出した。

 

 

 私とローゼス様は、ドレスショップへと入った。

 高級感溢れる店構えからは、貴族のような富裕層をターゲットにしていることが伺える。

 

 店内には、多種多様なドレスが飾られていた。

 品揃え豊富なこの店になら、ミリスに似合うような素敵なドレスも絶対に置いてあるはずだ。

 

「まさかこんなにもドレスの数が多いとは……。どれを選べばいいのだろうか」

「そういうときは、店員さんに聞くのが一番なんですよ」


 彼らは服選びのプロフェッショナル。

 要望を伝えれば、それに沿った最適なドレスを提案してくれるはずだ。

 

「その手があったか……! 流石はレイラだな」

「おおげさですよ」


 褒めてくれるのは嬉しいが、ローゼス様に褒められるという行為にまだ慣れていない。

 ごまかすように小さく笑ってから、私は店員を呼んだ。

 

「十歳くらいの女の子が、パーティーに着ていくドレスを探しているんです」

 

 ミリスの体型や雰囲気を伝え、合うようなドレスを選んでくれるようにお願いする。

 

「こちらのドレスはいかがでしょうか?」


 店員が選んだのは、ラベンダー色のドレスだった。


 ウエスト部は装飾のない、落ち着いた雰囲気をしている。

 スカートには、ふりふりとした可愛らしいフリルがついている。

 

 大人の部分と少女の部分が両立しているようなドレスだ。

 どちらの要素も持っているミリスには、ピッタリ合うだろう。

 

「素晴らしい。きっとミリスに似合うだろう」


 ローゼス様が満足そうに頷く。

 私と同じようなことを思っているみたいだ。

 

 店員さんに聞いて、やっぱり正解だったわね!

 

 流石はプロ。

 最高のセレクトをしてくれた手腕に、私は深く感心する。

 

「では、こちらのドレスを購入させてもらおう」

「お買い上げいただき、誠にありがとうございます。お会計はあちらの窓口にてお願いいたします」

「いや、まだだ。彼女が着るドレスも見繕ってくれ」


 ローゼス様の言葉に、私は驚愕する。

 

 彼女――という言葉が指しているのは、私のことだった。

 なんとローゼス様は、ミリスだけではなく私にもドレスを買ってくれようとしていた。

 

「どうしてそのようなことを……」

 

 ドレスを買ってもらうようなことをした覚えはない。

 ローゼス様の行動の理由が、私には分からなかった。

 

「礼だ。今日のことはもちろんだが、毎日ミリスの側にいてくれていることもそうだ。君には色々と感謝している。それを少しでも、返したいと思ったんだ」


 私への感謝を口にするローゼス様は、なんだか嬉しそうな微笑みを浮かべている。

 

 今日のこともミリスの世話係のことも、すべては私がやりたくてやっていること。

 だから、お礼は別にいらない。

 

 でもそんな顔をされたら、断ろうにも断れなくなってしまった。

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