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第十三話 人身被害

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 野生動物が起こした事件、ときいて思い浮かべるのは。最近よく目にする、クマによる事件じゃないか、と思う。

 クマが、山から人里に下りてきて。町や村のなかで、人がクマに遭遇する。そういう事件だ。

 昔から、クマによる人身被害は甚大だった。

 理由は、クマが(なかでもヒグマが)。立ちあがると人間と同程度か。場合によっては、それ以上の身の丈になる大型の動物だからで。

 その気になれば容易に人を倒して、犠牲者を食料にできるくらいに強い動物だからだ。

 クマによる事件の被害者は。ほかの野生動物とは比較にならない、目をそむけたくなる、残酷な結末になるケースが多い。

(被害者は、顔面を前脚でえぐられたり。殺されて内臓を食われたりする)

 でも、最近のクマの事件は。どうも、そうした被害とは、特徴が異なっている。

 それでは。最近、よくニュースでやっている、クマに遭遇する事件は。どういうものだろうか。

 そして、この事件がなぜ起きるようになったのか。その理由を考えてみたい。

 前述した通りに、最近の事件は。クマが山から降りてきて。畜産家や農家の人だけでなく。町中でも、人がクマに出くわすようになった。というものだ。

 ニュースで事件がとりあげられて、キャスターが話しているのをきくと。なんだかクマだけが増えて、山に食料が無くなったので、人里に下りてくるようになった。そんなふうに錯覚する。

 でも実際には、シカ、イノシシ、ハクビシン、といった他の野生動物も増えている。

 なかでもシカの数の増加は著しくて。おかげで増えたシカによる農作物への被害が深刻な問題になっている。

 なのにシカの増加の問題が、クマほどは頻繁にニュースで取り上げられないのは。クマは危険で、シカはそうではないから、だと思う。

 シカよりも話題性がある、危険なクマの件ばかりが。ニュースでクローズアップされているわけだ。

 それでは。なぜ、クマが人里に下りてくるようになったのだろうか。

 その理由は。人が。以前のように山に入って来なくなって。野生動物をつかまえなくなったからだ、と思う。

(山に入る、というのは、ハイキングコースや登山道を移動することではなくて。毎日、日常的に山に踏み入って。燃料にするための枝を切って落としたり。たきぎを拾い集めたり。野生動物を狩ったりすることを指す)

 狩られることなく、増えた野生動物たちは。人をおそれていない。

 すべてがそうではないのだろうが。村や町に出てくる動物たちは、そうだ。

 おそれていないから、人のいる場所にまであらわれるし。人が暮らしている人里で自分たちの食料をさがすようになった。

 増えたクマたちも同様であって。猟師が自分たちを狩ることもないので。人を、おそろしくて。コワい存在だ、とは思わなくなった。

 だからクマたちは、人里にまでやってくるし。そのせいで、街なかでクマと人が遭遇するようになったのだ。

 なにが言いたいのか、というとだ。

 野生動物は、動物だから難しいことがわからない。理解できないから、町に出てくるのだ。と判断するのは、間違いであって。

 彼らの真意は。ヒトの生活圏で食べ物をさがしても、人間はなにもしてこない。だったら好き勝手しよう、と事態を把握した上での知的な行動である、ということなのだ。

 食料を手に入れるのが簡単ならば、彼らは何度でも町にやってくる。それをきちんと理解しておくべきなのだ。

 けっきょくは。法律の問題やら、愛護団体を始めとする、可哀想だと主張する人たちのせいで。クマがやってきてもなにもできずにいるのは。私たち、ヒトの方であって。

 弱点を逆手にとった賢い方法で、好き勝手をされている。文字通りに、食い物にされているのは、私たち、人間の方なのだから。

 そうした立場を喜ぶ人もいるし。推進しようとする人たちもいるので、なんともいえないが。

 まずは、そんなことになっている。私たち、人間側の立場を、理解しておくべきじゃないか。と思う。

 今回の、紅林さやかが野犬に襲われた事件だが。

 それが世間に公表されたとたんに。大衆は瞬間湯沸かし器のように、あっというまに熱くなった。

 テレビも、新聞も、SNSも。各メディアは、この事件を大きくとりあげると。

 各々の番組を通じて、読者や視聴者の不安をあおることを始める。

 なんでこんなことが起きたのか。理由がさっぱりわからない。大変だ。どうしたらいいんだ。そんなふうに、と騒ぎ続けたのだ。

 一夜にして、犬たちの評価は逆転する。

 それまでは、彼らを。保健所の職員の追跡をかわす、賢い人気者あつかいしていたのに。事件後は、そうではなくなった。

 大衆は犬たちを、人を襲う危険な野生動物として、目の敵にするようになったのだ。

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