001 顔合わせ
俺は黒金徹。
この春から指揮官として第567防衛基地に配属になる。
指揮官は原則2名から4名の覚醒者と共に基地を守り、襲い来る魔物を迎撃することになる。
ちなみに指揮官養成所では上から5番目の成績で卒業できたので、部下となる覚醒者は優秀な人材を期待できるだろう。
さて、集合時間も近づいたのでそろそろ移動しよう。待たせるといけないからな。
「……まじかよ」
俺の前にはもうすぐ会うことになる3人の部下の情報が記載された書類がある。
一人目は書類を見ていくと主席と記載されている。
しかも演習では1位かつ筆記も1位。
……そんな超凄い奴が俺のところに来るだろうか。
普通は来ない。ということは、普通じゃないってことなる。
書類の続きを読むと[実習で味方を誤射しかけた]とある。
幸いにも当たらなかったし、敵も倒せたのでなんとか罰則は無かったともある。
なんなら普通は罰則もある。
それがないってことは、そういう扱いされるような相手ってことだろう。
次、二人目は聞いたことがある武門の出のようだ。
輪島流という武器を使った武術を教えているとか。
特記事項は[狂化技能持ち]とある。狂化はクセが強い身体強化系の技能で、度合いによっては敵味方の判別がつかないまま暴れ回るとか。
次、三人目。
年齢が14歳と明らかに入隊下限の15歳を下回っている。
なのに、正式に入隊している。
特記事項は[決して粗相の無いように!]だ。
いや、うん。厄ネタじゃん。
「では、彼女達も揃ったようだし、宜しく頼むぞ!黒金指揮官!」
声を掛けてきたのは俺の上司となる第18防衛拠点所属の半場上級指揮官だ。
悪い人では無いけど、俺がこうなっているのを知ってて何も言わない人でもある。
「半場上級指揮官。質問があります」
顔合わせが済むまえに確認しておく必要がある。
「言ってみたまえ」
「相性が悪いという理由で任地変更が許可される最低限の日数はどのくらいでしょうか」
「3か月は必要だな。なに、もしかしたら良い具合に連携がとれるかもしれんぞ。頑張りたまえ」
終わった……
俺の内心とは裏腹に予定の時間となり隣の部屋で顔合わせとなる。
そこであったことはあまり語りたく無いが、基地への移動時間はあまり居心地の良いものでは無かったことは伝えておきたい。
さて、簡単に基地と付随する指揮官や覚醒者にも説明しておく。
これは読み飛ばしても問題ない。
まず、防衛基地。
これは魔物から人の生活拠点を守る為の文字通りの施設ではあるが、新人と数名が生活および任務にあたる為のものになる。
つまり、数が多い分安く作ってあるし生活水準もあんまり高くない。
指揮官は覚醒者に対して、強化魔法といった覚醒者に対して支援を行える素質を持った者で構成される軍人であり、養成所で最低限の知識と経験を積ませて前線に送られる。
各養成所では20名前後が毎年送られるのに対して、基地は何故かそれほど増えない。
覚醒者は文字通り魔法や魔力を使用した技能を扱える者の総称であり、指揮官と同じく毎年何十、何百と前線に送られる。
強さは本当にピンキリであり、魔法一つ取っても人によって個性が出る。
魔物。
魔力を蓄えて魔法を使えるほど知恵が回る動物のことであり、人類の活動範囲が狭まった要因でもある。魔法を操る動物を縮めて魔物。後述の化物とは異なり、元となる動物が判明している。
化物。
突然変異の魔物の一種であり、だいたいが元の動物から奇妙に乖離している。
生物として極めておかしいものや、何故生きているか分からないものもいる。
例外なく凶暴であり、人類にも魔物にも等しく襲いかかる。生きた災害でもある。