表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/31

29

 第四都市が遥か遠くに見える山。そこにある背が高くて太い木の枝に座っている女性がいた。

 鼻歌を歌って、上機嫌な様子だ。

 彼女の名前はトア・ザガパトメア。

 アウルの南にある国、ザガパトメアの公認魔導師をしている。そして、七つの頭を持つ人形を作った張本人でもある。

 人工的に作りだした魔獣が十分な成果を上げたので、嬉しくてたまらないのだ。

 そこに一人の女性が現れた。

「やっと見つけた。国中を探し回ったんだぞ」

 彼女はネムクス・ザガパトメア。

 ザガパトメア家の末裔だ。今も公認魔導師として国を守っている。

「もう見つかっちゃったのね」

 トアはクスクス笑う。

「ここまで暴れてれば気付くって・・・このことがバレたら国際問題だったんだよ?」

「その時は戦争ね。それはそれで楽しみ」

 そう言いながら、立ち上がる。そして、ネムクスに抱きついた。

「それよりもさ、聞こえる?私の心臓の音。ドキドキしてるの」

「・・・聞こえる」

「あたなにこの気持ちをぶつけたいの」

 目の前で見つめ合う。

「・・・いいよ」

 ネムクスは静かに答えた。

 その答えにニコッと笑うトア。

 二人の周囲が歪み、一瞬にして消えてしまった。


・・・・・


 訳の分からない魔獣を倒してから三日が経過した。

 私達の仕事は終わり、これから第二都市へ戻るところだ。お給料は後日に支払われるらしい。

 私達は町からだいぶ離れたバス停でバスを待っていた。町は氷漬けになってしまい、高速バスはここまでしか来ないらしい。

 海樹は私にもたれかかりながら眠っていた。

 広い広いアウル草原は地平の果てまで続いている。そこからの風が気持ちいい。

 私は友達にオススメされた本を読んでいた。最近、アニメ化された小説らしい。区切りのいい所まで読んでから端末で時間を見る。

 もう少しでバスが来る時間だ。

「海樹、もう少しでバスが来るよ」

 肩を揺すると嫌そうに目を覚ました。

「・・・もう?はやっ」

 立ち上がって背伸びをしている。深呼吸をしてから目の前に広がる草原を眺める。

「色々とあったね」

 私が話しかけると「嫌な仕事だったよ」と言いながら、また座った。

「おーい」「まだいる?」

 双子さんの声だ。空から聞こえた。

 屋根の外に出て、空を見上げる。二人はちょうど降りてくるところだった。

「お疲れ様です。どうしたんですか?」

「最後にお別れを」「言いたくてね」

 二人は優しく微笑んでいた。

 町はあんなことになっていて、双子さんは毎日のように町の復旧をさせられていた。話によれば、アウル中から呪い師が集められるらしい。

 この事件が解決するまで、もう少しかかるだろう。

「今回はありがとう」「お陰で何人もの命が救われた」

「いえ、お役に立てたのなら良かったです。正直、どこまで付いていけるか不安でしたから・・・」

「それより、呪い師としての仕事しなくていいの?」

 今、それを言わなくていいじゃん。

「抜け出してきた」「たぶん、怒られる」「でも、伝えたかったから」「後悔はない」

「頑張ってください」

「うん」「頑張る」

 バスが到着した。

「これでお別れだね」「また会えたら仲良くしてね」

 二人は手を振っている。

 魔法が支配するの世の中、明日どうなるか分からない。もしかしたら、もう会うことはないかもしれない。

「はい。また会いましょう」

 海樹に肘で催促する。

「バイバイ」

 恥ずかしそうに手を振っていた。



 双子さんと別れてバスに揺られている。

 第四都市はもう見えなくなっていた。

 これからが大変だろう。呪い師が集まって氷を溶かし、復旧と謎の魔獣の解析がされる。

 私達には、いつもの日常が戻ってくるだろう。そうなると願っている。

 でも、この時の私達は第二都市で大事件が起こるとは思っていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ