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 網の上にたくさんの魚介類が並んでいた。

 どれも新鮮で見ているだけで美味しいことが分かる。

 後は私が焼き加減を間違えないこと。一つ間違えれば台無しになってしまう。

 ここは海を一望しながら、新鮮な魚介類を堪能できると評判のお店だ。

 私が焼いたり骨や殻を取ったりして、食べるだけの状態で向かいの席に座っている海樹のお皿に置く。

 海樹はそれを美味い美味いと食べている。本当に可愛い奴だ。

 もちろん、私も食べている。

 この国では珍しく生のお魚も取り扱っていて、とても満足している。

 仕事とはいえ、第四都市に来たからには美味しい物を食べないと・・・。

 最初に注文した料理を食べ終えて、一息ついた。

 またメニュー表を開いて次は何を食べるか話し合っている。

 その時だ。お店に二人の少女が入ってくるのが見えた。

 私はその二人の顔を知っている。第四都市の公認魔導師だ。

 その二人はお店の人と話して、お店の人が私達の席を指差した。そして、私達の席までやって来る。

 緑青色(ろくしょういろ)の髪をした二人の女の子。背格好から顔まで違いが分からないほど似ている双子の公認魔導師だ。

 アウルに来る前にここの公認魔導師を調べていて、若かったのとビックリするくらい似ていたので印象に残っていた。

「「こんにちはー」」

 声まで同じに聞こえる。どっちがどっちだか覚えられる自信がない。

「初めまして、エルビエラの者です」「紅朱辺(くしゅべ)さんと水浦(みずうら)さんですか?」

 二人は同じ仕草、同じタイミングで首を傾げた。

 海樹が返事をするわけがない。

 いつも私が対応する。

「はい。私が紅朱辺夏海です。こっちが水浦海樹です。今回はよろしくお願いします」

「・・・よろしく」

 海樹はいつも通り相手の顔を見ずに、小さな声で言った。

「私はサナラ」「私はラナサ」「「よろしくお願いします」」

 二人は背中合わせで自己紹介をした。決めポーズなのだろう。

「食べ終わりましたか?」「まだ食べますか?」

 その質問に「何で?」と海樹。

 初対面の公認魔導師によくそんな態度ができるな・・・。

「まだ食べようと思ってますよ」

「そうですか」「そうなんですか?」

 二人は・・・双子さんはポーズを止めて、お互いを見てうなずく。

「良かったら、一緒に食べませんか?」「お金はこちらで払いますから」

 手をヒラヒラさせて、魅力的なお誘いをされた。

 私はお金がないわけではないが、やっぱり高いとは思っている。

 でも、双子さんはたしか年下だったような・・・。

 最年少16歳でデビューして、2年も活躍している天才だ。

 つまり、今は18歳。私達の一つ下。

 私達よりずっと稼いでいるだろうけど、おごってもらうわけにはいかない。

「いえ、それは・・・」

 私はお金のことは拒否しようと口を開いたが、海樹が遮った。

「一緒に食べましょう」

 あの海樹が明るい声でニコッと笑っている。・・・怖い。

「ではでは」「失礼します」

 双子さんは分かれて、私と海樹のそれぞれの隣に座る。

 海樹は一瞬、嫌そうな顔をしたが、タダで食べられるので我慢するつもりらしい。

「ジャンジャン頼みましょう」「お金の心配はしないでください」

 ・・・タダ飯かぁ。しかも、二人は公認魔導師。何だか怖くなってきた。


 食事を終えて、お会計になる。

 レジの前でスタッフの女性の方に双子さんは言いました。

「今回の料金は」「ルーカスにツケておいて」

 え?それ、大丈夫なの?と思った。かなりの金額のはずなんたけど・・・。

「分かったよ。またおいで」

 当たり前のように受け入れていた。

「うん」「また来る」「美味しかった」「ご馳走様」

 そう言って、先に店から出た。

 私達も出ようとする。

「お二人もまたおいでね」と、店員さん。

「はい。美味しかったです。ごちそうさまでした」

「ご、ごちそうさま」

 海樹もペコペコと軽く頭を下げていた。

 ・・・ルーカス。どっかで聞いたことのあるような・・・。

 知らない所でツケられるなんてちょっと可哀想だ。




 第四都市のエルビエラは町外れにある。

 理由はこの都市の大魔導師、ジグリ-ンの魔法のせいだ。

 特別な魔力を持っていて、少し魔法を使うだけで辺りが魔法石化してしまうらしい。

 さっきの場所からでも見えた魔法石化した大樹。

 その下には大昔に使われていた城があって、そこが第四都市のエルビエラの拠点として使われている。

 近づくにつれて、大樹が徐々に大きくなっていく。見上げられるほどの大きさだ。

「大きいですね」

「とってもデカくて」「とっても広いよ」と、双子さん。

 二人とは食事を通して、それなりに仲良くなれた気がする。

 辺りの景色が進むにつれて、徐々に魔法石に侵食されてきた。

 とても綺麗で水晶のような魔法石だ。人体には影響ないらしいが、木とか地面が魔法石化しているのをみるとちょっと怖い。

 魔法石は長時間、魔力を保存できる石でとても高価な素材だ。知り合いである八声舞木の魔法に似ている。

「・・・あれ、いくらくらいになるんだろう。ちょっとくらいもらえないかな?」

 海樹はそんなことを言っている。

「ダメでしょ。我慢してよ」

 ここでは許可なく魔法石を収集するのは禁止で、欠片でも落ちていたら報告の義務があるようだ。

 いくらでも悪用できるし、知識がない人が触るとかなり危険らしい。過去に扱いを間違えて大爆発させ、小さな集落を吹き飛ばした事件があるようだ。

 結晶化の範囲が広がっていき、さらに進むと全てが結晶化している。やっぱりヤバいんじゃないかと思う。

 お城が見えてきた。大きなお城だけど、さらに大きな樹に呑み込まれている。城壁と一部分が見えるだけだ。

 城壁を越え、城の正面玄関の前に私達は降りる。

 大きな木の下なのに暗くない。それに心地よい温かさだ。時々、風も吹き抜けている。

 改めて、大樹を見上げた。

「大きいね」と海樹。

「うん」

 まるで別世界のようだ。魔法によってこんな風に変わってしまった場所の写真はいくつも見たことあるが、実際に見るのは初めてで圧倒されてしまう。

「二人とも」「ついてきてね」

 双子さんの言葉でハッとする。

「はい」

 双子さんが同じように見える杖を出して、大きな扉に振るった。

 ゆっくりと扉が開き始める。

 中はとても広くて、天井が高い。こんな所はアニメとかでしか見たことはない。

 大きな階段を上り、その先にある扉をくぐると、謁見の間?みたいな大きな部屋があった。

 無駄に広くて、一番奥の少し高くなっている場所に王座があるだけの部屋だ。

「お待たせ」「連れてきたよ」

 双子さんはそこへ駆けていく。

 私達はゆっくりと歩いて進んだ。

 大きな椅子に腰掛ける老人が一人と、エルビエラの制服を着た男性二人。そして、スーツ姿の眼鏡をかけた女性の四人がいた。

「こんにちは。依頼を受けてきました。紅朱辺夏海です」

「水浦海樹です」

 海樹はちゃんとした場では堂々と話せたりする。魔法隊の時は責任ある立場になることもあるから、決める時は決めてくれるのだ。

 老人は「ふぉふぉふぉ」と笑いながら長くて白い顎髭を触っていた。

 この老人がジグリーンさんだろう。五十年以上エルビエラとして戦っている大魔導師だ。

「今回は依頼を受けていただき、ありがとうございます」

 眼鏡の女性が口を開いた。彼女がこの場を進行してくれるのだろう。

「私はセファー・デデジル。よろしくお願いします」

 お辞儀をして、私達も返した。

「こちらはジグリーン様。長年、この地を守り抜いている大魔導師です」

「ふぉふぉふぉ」

 ・・・この人ってそれしか言わないのかな?

「次にサナラとラナサ。まだ未成年ですが、ベテランです。今回はお二人のこともお願いしてあります。分からないことがあったら、彼女達に聞いてくださいね」

「「イエーイ」」

 二人は背中合わせでポーズを決めていた。

「最後にルーカス・オラニエルとシャーロ・ラールデフルの二人です」

 赤錆色(あかさびいろ)の髪がルーカスさん。若草色(わかくさいろ)の糸目の男性がシャーロさんと言うらしい。

 ルーカスさん。この人がツケられた人か。オラニエス家で認識していて名前は覚えられていなかった。

 オラニエス家はアウルで最も有名な魔導師の家系だ。国を何度も危機から救ったことで知られている英雄の一族。その一人だ。勝手にツケられているけど、立派な人なのだろう。

 そんな英雄の一族に双子さんはよくあんなことができるな・・・。

 ルーカスさんは見るからに機嫌が悪そうだ。

 シャーロさんは表情が読み取れず、何を考えているか分からない。

「では、早速ですが・・・」

 セファーさんが話そうとするのをルーカスさんさんが遮った。

「おい、誰を呼んだかと思ったら子供じゃないか」

 その言葉にムッとした表情になったデデジルさんが反応する。

「その言い方は失礼ですよ。紗倉見での実績やアウルでの活躍を見て判断しているのです」

 評価してくれるのは嬉しいけど、紗倉見でのことまで知っている感じなのかな?色々と身辺調査とかもされてるのだろう。何か嫌だな。

 舌打ちをするルーカスさん。

「いつからここは子供を戦いに巻き込むようになったんだ?」

「私達も」「子供だよ」と双子さん。

 それを聞いて顔が引きつった。

「はいはい。自己紹介は終わったみたいですから、パトロールへ行きましょう。ルーカスがいると話が進まなくなります」

 手を叩きながら、シャーロさんが言いました。

「どういう意味だ?」

「ほらほら、行きますよ」

 シャーロさんを睨んでいたが「分かった」と言い、扉へ歩き出す。

 ルーカスさんは私達の横まで来ると「すまねぇな。今の発言は気にしないでくれ」と言った。

「気にする。引きずってやる」と、海樹。私に隠れて言わないで、出てきて言ってよ。

「いえいえ、気にしてません」

 すぐに私が訂正する。

「ルーカスは悔しいんですよ。子供に大事件を背負わせることになったのがね」

「・・・ちょっと情けなくなっただけだ」

「情けない」「大人」「「ウケるー」」

 双子さんがクスクス笑う。

「うるせーな。シャーロ、行くぞ」

 そう言って走って出ていってしまった。

「全く困った人ですね」

 そう言ってから、私達の方を見て「では、お気を付けて」とだけ言ってルーカスさんを追いかけていった。

「まったくあの人達は・・・」

 セファーさんが頭を抱えている。この人達をまとめる立場なのだろう。大変そうだ。

「では、二人とも私に付いてきてください。契約の確認や今ある情報を共有します」

「分かりました」

 私達と双子さんはセファーさんの後についていく。

 ジグリーンさんはまた「ふぉふぉふぉ」と笑っていた。

 何か心配になるんだけど・・・大丈夫なのかな?




 話し合いはかれこれ一時間くらい続いた。

 お仕事の契約の確認や今ある情報の共有、今後の動きについて話した。ほとんど私とセファーさんとの話し合いだったけど・・・。双子さんと海樹は途中で寝てしまったのだ。セファーさんはこいつらマジかみたいな目で見ていた。

 今は双子さんの後を追いかけて、ほうきを走らせている。

 何やら連れて行きたい場所があるみたい。本当だったら、第四都市での宿泊施設に向かう予定だった。

 海樹は私のほうきに乗って後ろで足をバタつかせながら、町並みを眺めている。

「もうすぐ」「着くよ」

 そこは広い病院だった。この広さだと第四都市最大の病院だろう。広大な土地にいくつかの建物が点在していて、それぞれの分野で分かれているんだと思う。

 その中の入院する建物の玄関口に降りた。

 ここで何をするんだろう。

 私と海樹は顔を見合わせて、お互いに首を傾げてから双子さんの後ろをついていった。

 案内されたのは関係者しか入れなさそうな特別な部屋だった。それではガラス越しに病室を見られるみたいで、誰かがベッドに寝かされている。

 体はほとんど包帯で包まれていて、多くの管や機械に繋がれている。

 双子さんは悲しそうな顔をしていた。

「彼女の名前はリンダ」「私達以外で生き残った子だよ」

 リンダ。たしか、先日に被害に遭った子の名前だ。・・・彼女があの動画に映っていた。

 さっきの話し合いで双子さんが正体不明の何かと戦って、公認魔導師を取り戻した話は聞いていた。

 寝ていた海樹はそうなの?と驚いている。

「うん」「そうだよ」「操られた仲間を」「取り戻した」

 私も海樹もガラスの奥にいる彼女を見る。

 今でも生きているのが不思議な状態だと双子さんは教えてくれた。

「彼女はまだ新人の公認魔導師」「私達ともとっても仲良し」

 双子さんはなぜここに私達を連れてきたのか分かった。私達に現実を教えるためだ。

「戦ったのは私達を入れて数百人」「生きて帰ってこれたのは三人だけ」「その内の一人も」「生き死にの狭間を彷徨っている」

 双子さんはこちらを向いた。

 真っ直ぐと私達の目を見つめている。私達の心の中を確かめているようだった。

「君達が関わるのは」「こういう事件だ」「覚悟は出来てる?」「命はかけられる?」



「「逃げるなら今のうちだよ」」



 本編じゃない方のこちらは更新が遅くなってしまってします。本編がもう少しで終わるのでそちらに比重を置いていたからです。向こうが一区切りつけば、こちらも進めていきます。この第二章もだいたい何をするかは決まっていて最後も決まっているのですが、間の展開をどうしようか悩んでいる所です。

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