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ゴウン・・・ゴウン・・・と重い音が空間に響く。
かなり古い施設のエレベーターなのだから仕方がない。
私達が研究所として使っている施設は新暦100年くらいに建てられたらしい。
ここは本来、とあるモノを観察する場所だ。
今もそれの観察は続けられている。ほとんど自動化されて定期点検以外では立ち入り禁止。今回は特別ってことで勝手に来ている。
メアリーにはこの場所のことは秘密にしてある。もしこのことを知ったら何をするか分からない。
「ここに来るのも久し振りッスね」
アリッサも一緒に来てもらった。勝手に入ったことがバレたら一緒に怒られてもらうために。
「そうね。まぁ、そんなに頻繁に来る所じゃないし・・・」
下りれば下りるほど、空気が淀んで冷たくなる。本当にこの空気が嫌い。
・・・この先にあるのは科学でも魔法でも説明の出来ない存在だ。
一枚の写真を見る。
無限図書館にあった旧暦の茶封筒に入っていた一枚。
昔、無限図書館で旧暦のことを調べていた時に見つけて、シェリーさんの過去の話を聞いて思い出したのだ。
空間に白いシミのような何かが付いた写真。初めて見た時はカメラの不具合かと思って気にも留めなかった。
エレベーターが止まる。
正直、行きたくはないけど、どうしてもこの目で確認したかった。
魔法で通路の明かりを点ける。
いくつか明かりが付かない物があった。
あまりに不気味な場所だから整備もサボりがちになっているのかな?仕方ないけど・・・。
日程を決めて一気にやってしまおう。
通路を抜けると広い空間があって、それがある。
写真と同じ白。特に規則性のない白が浮遊している・・・と言うよりもその座標が白くなっていると言った方がいいのかもしれない。
これは今も少しずつ広がっていて、数も増えている。
禁域。世界機関がこれを隠蔽するために作った制度らしい。その禁域がこの数年で一気に増えた。
「かなり似てるッスね」
アリッサは写真を覗き込んでいた。
「・・・ええ」
この世界を少しずつ浸食していく。まるでこの世界を無かったことにしようとしているみたいに・・・。
シェリーさんの話によれば、空間が割れてこれが世界を覆っていったみたい。
メアリーが探しているクレマチス家の使命。それが何となく分かった気がした。
お母様が逃げようとしたのも私ではなくてメアリーを当主にしたのも・・・。もし、私が同じ立場なら同じことをしていたかもしれない。
『世界の白紙化』
本当にそんなことが起こるのだろうか?人類では手に負えない領域の話になってくる。
・・・もしもの話なのに体が震えた。大きく吐いた息も震えている。
そんな私を見てか何なのかアリッサが後ろから抱き寄せてくれた。
・・・温かい。恥ずかしいけど安心する。
「悪いことを考え過ぎッスよ」
「・・・そうね。ごめん。ありがとう」
大きく深呼吸してからもう一度、写真とそれを見比べる。
こんな異変が起こるとは到底思えない。けど、何もしない訳にはいかない。
「戻りましょう。まずはみんなにこの件を伝えないと・・・」
「はい。そう言うと思ってもう連絡はしてあるッスよ」
「流石ね。ありがとう」
アリッサは優しく笑ってくれた。
大丈夫。何が起こっても私達なら・・・。
昔は寒い冬が好きでした。夜が好きでした。
今は冬の停滞感が嫌で夜には終わりのことばかり考えてしまいます。年を取ったってことでしょうか?
でも、寒い夜に散歩するのは好きです。身震いするとちゃんとに生きてるって感じがします。




