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3.受動relief

前書きって何を書けばいいか、分からない。

とりあえず、あなたの今日のラッキーアイテムは……切れてないたくあん

それでは良いひとときを。

  3.受動relief


 暗闇だ。それならば、私はまだ生きている。

 次に働いた器官は鼻。

 嗅覚が捉えた刺激は土ではなく木の香りで、脳へ送られている。それと少しのお香の匂いもした。

 目は覚めたものの、身体は動かず、力はほとんど入らない、目だけをギョロギョロと動かしても回りの様子はほとんど分からない。頑張って首を起こし、辺りを見回してみるものの、一部の隙もなく闇だった。

 そうか死ねたのか、安堵する直前に襖を開ける音が届いた。

 天井に一本の糸が垂らされたかのように、一筋光が薄くても確かに差し込んだ。それは次の瞬間に、拡がって人のような影が浮かび上がらせる。

 誰かいる? 足音が近づく。

 その正体と思われる顔が、視界に現れ、一重の間見惚れ、よく見て驚いた。

 頭には角が二本。

『おっ生き返った』少し小馬鹿にしたような軽い調子の声、ニヤついた口元、影で顔の半分しか見えていなかったけれど、安心感を与えてくれる綺麗な瞳があった。


 角の生えた男は私の身体を起こして、水を飲ませてくれた。

「これで、自分一人で飲めるね」そういうと、口元に水筒のキャップ一杯に入った常温の水を少し含ませてくれた。

 されるがまま、生かされていたようだ。こうやって完全に誰かに頼っている状態がとても懐かしく、心地よい。

 でもちょっと待って。さっきの言葉の意味は……じゃあどうやって飲ませてくれていたのかと想像して、恥ずかしくなる。

 もしかして、口移し? そんなわけないと自分に言い聞かせても、先程までなんとなく見ていた男の顔を、見ていられなくなった。

「少しずつ良くなっているみたいだね、これなら大丈夫そうだ。じゃあ次は、身体を拭くから、少し冷たいよ」

 布団の中にある私の身体は、浴衣で包まれていて、汗で濡れていた。意識すると途端に気持ち悪くなり、シャワーを浴びたい衝動にかられる。恥ずかしいけれど、拭いてもらいたい気持ちが、勝ってしまう。

 よく考えてみれば、山の中をさ迷っていた数日の間は風呂に入っていないので、もっと汚いはず……? つまり、もうすでに何日経っているか分からないけれど、何度か身体を拭いてもらっていたことになる。恥ずかしいなんて思いは、吹き飛んだ。意識のない私の身体を綺麗にしたり、服もきっと替えてくれていただろう、そんな彼の姿が頭に浮かんだから。

(ありがとう)


 数日が経った。

 声が出るようになり、最初に感謝を伝えた。

 次に、寝返りができるようになり、身体を起こしたり、自分で、水筒から水を飲めるようになり、歩けるようになっていった。

 驚いたのは、彼の頭にある二本の角の他に、尻尾も映えていたことだった。

 完全に回復していた私は、感謝とそろそろ出ていくと伝えると、少し話をしようかと、誘われた。

 龍を祀った神社でその堂の中で身体を休めていたらしい、外に出てみると、夜のはずなのに明るかった。それは、空に月と星が煌めき、単調ではあるものの、しっかりと色を与えてくれている。いつの間にか秋に差し掛かっているようで、木によっては色が着き始めているのも確認できる。

 赤い花弁に赤い花糸の花が境内の端の方にポツポツと咲いている。

 「リコリス、彼岸花の方がよく聞くかな」

 なんとなく見ていたからだろうか、花の名前をそ教えてくれた。昔付き合っていた彼氏もこうやって自分の好きな車が通ったり私が何気なく車を見ていると、名前を教えてくれる事がよくあった。

 私は別に知りたかったわけではないので、ふーんって聞き流していたけれど、なんで男の子は教えたがるのだろうか。男子七不思議のひとつ。

 目の前には高校の教室ほどの境内が広がっており、リコリスの反対側にはぽっかりと空いた空間に大きな泰山木が一本立っていて、その木の下には横長の椅子が置いてある。しばらく使われた様子がなかったその椅子を軽く拭いて、ここにでも座ろう、と言って促されるまま座ってみた。 


「私は実はさ龍なんだよ」

 うん。

「あれ? 驚かないし、怖がらないね」

 うん。(今さらだよ、怖がるなんて)

「そんなもんか」

 うん。

「死にたかったの?」

 うん。

「そっか、悪いことしたね」

 うん。

「まだ死にたい?」

 うーん。うん。(戻ったときの事を考えると、ね)

「人はさ、龍に色々と願いを言いに来るんだ。昔からね。」

 うん?

「みんな、生きるため、願ったり、祈ったりしてた。でも、近頃は様子が違っていて、必要とされたい、とかさ、どうやって生きていったら良いか分からないから教えてほしい。みたいなものが、あったりしてさ」

 うん。

「さすがにどうやって、その願いを叶えてあげればいいのか全然分からないんだよね」

 うん。

「この間なんて、高校最後の大会に向けて最後まで努力できますように、ってそれはもう君次第じゃないか。みたいなね。これはもう見守るしかできないよ、怪我しないようにとか、病気にならないようにとかさ。そんなもので良いの? って思っちゃう。自分で何とかしようって良いけどさ、もう少し頼って欲しいよね」

(それは、頼られたときに期待に応えられる自信がないから)

「君は、頼ってくれるかな?」

 ううん。

「そっかー。さみしいな」

 彼の寂しさはいつから続いているんだろう、そして今も、さみしいのだろうか。そんな彼の心の中に思いを馳せても答えは分からない。沈黙が少し続いた。

「じゃあ、とりあえずさ、飛んでみようか」突然の提案に驚き、頭で理解が追い付かない。

 うん?

 私はバカみたいな顔をしていたかもしれない。

 私をひょいと抱え、軽すぎって微笑む。とジャンプして、樹の上に乗った。トトロみたいに、そこに体重はあるのかと言ってやりたくなるが、驚きで、なにも言えない。

「ドラゴラム!」

 どこかで、聞いたことのあるような呪文を唱えると私を宙に投げる。

 きゃあああああああ! 死にたかったはずで、まだ死にたいはずで、このまま落ちれば、確実にぺしゃんこになれる高さなのに怖い。死ぬのが怖いって言うか単純に高いのが怖い。

 気づいたら目をぎゅっと閉じていた。感じるのは風が強いってことだけ。落下している感覚は、なかなか来ない。

「目を開けて」

 おそるおそる、目を開くと、月が近くにある。

 龍の背中から見える丸い塊が命の灯を届けてくれている、全てに。

 それは、誰かの為にではないもちろん私の為でもない。ただそこにあるだけ。

 ガチャリ。

 チャンネルが変わる音がした。

 冷たい風に当たっている肌はピリピリと毛穴から熱気が溢れてきている。不思議なベールが全身を包んでいて、しっとりと汗をかいている。そのことを自覚していても拭うことなんてしなかった。全身で、今、を感じるようにと脳がフリーズを起こしている。私もただ、そこにあるだけになった。

「あなた、名前はなに?」

 聞こえないようだったので、もう一度、今度は大きな声を出す。

「名前、教えてー!」

「銀太ぁ」

「ぎんたぁ、私をたすけてぇー」

「いいよー」

「ありがとう」

「雲を抜ける。ちゃんと掴まってね」

 さらに、冷たい、暴風雨の中を走っているみたいだ。

 身体に雨が当たらなくなったので、目を開けてみた。

 そこには海と月と星たち。

 まるで、絵画のように海には月の反射光でできた道ができていた。


「すっごい、道になってる」

 うん。道がある。歩きたくなるような道が。


「ねぇ、何もなくてもさ、生きていて良いじゃん」

 うん。


 うっすらと見える向こう岸に背を向けて。

あとがきって正直何書けばいいか分からない。

とりあえず、あなたの今日の運勢は……明日の方が良い

それでは良い明日を。

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