1.能動ステップ
完全にある作品に影響されて書き始めました。
0話てきな?
1.能動ステップ
都内を走る黄色い電車の音が適当な間隔で私の耳のなかをぐるりと一周する。
私は薄暗い部屋のなかで、ただただテレビを眺める日々を過ごしていた。
本来であれば、この時間は午前の仕事を片付けて、昼休みに同僚と会社近くのコンビニで好きなパスタの新作でも買ってあーでもない、こうでもないと、笑いあっていたのかもしれない。思い出してなんとなく胸やけに似た気持ち悪さが込み上げてきたので、トイレに駆け込みトシャーっと口から悪いものを出して、部屋に戻ると、昼の情報番組で山登りの特番がやっている。
番組内では、大変そうな顔をしてレポートをしているアナウンサーが名所を案内していた。その時、蝶々がカメラの前を通り過ぎるのが見えた。こんなに標高が高そうなところにも蝶々はいるんだなと思ったが、まだ麓だったのかもしれないと、すぐに考えを放棄した。
私よりも若々しいアナウンサーは自分の体力にまだ疑いがないようで、険しい道のりを苦しそうだけれど、キラキラさせた目をやや上に向けて進んでいく。迷いのないしっかりとした足取りで。
まるでその先に何か希望でもあるかのように私には映った。
私は頭のなかで、実際には映像に映っていないカメラマンや同行しているスタッフを想像して画面に映っているものはもう見えていなかった。
気づけば、山頂までたどり着くところで、徐々に画面を青に染める。開けた場所に出ると、そこには異界があった。雲が下に見える。カメラが横に振られると太陽が私の知っている位置よりもだいぶ低い。その、眩しさにさらされ、やりたいことができた。
そうだこの山で死ぬのは良いかも。
鬱になって以降初めて前へ進みたくなった。
子供を産めない身体になってしまい、夢に見ていた未来への道のりが突然途切れた。立ち止まって向き合うのが怖くて、仕事に没頭した。
当時、付き合っていた彼は、そんな私に対して休んだ方がいいと言ってきて。
それが私にはどしうてちゃんと向き合わないのかと叱責されているんじゃないかって、どうしても考えてしまう。優しい言葉の裏にはなにもなかったとしても、読んでしまうのが人だ。そんな精神状態なので、次第に連絡を取らなくなり、一か月後には別れを私から望んだ。友人も同じように連絡を取れなくなって孤独になっていった。その方がなにも考えなくてすむ、なにも。
ある時、朝起きようとしたら、身体が動かなった。仕事にいかなきゃいけないのに、何で動いてくれないの?
気づいたら夜になっていた。トイレに行きたいと思ったら身体が動いてくれた。とりあえず、会社に無断欠勤の謝罪の連絡をして明日は行けると伝えると、猛烈な空腹に襲われる。ほぼ寝ていて、動いていないとはいえ、なにも食べていなかったのだから当然かと思ったが、これが食べても食べても食べてもたべても満足感が来ない。2合まるまる食べきって腹痛に襲われ、猛烈に吐いた。
何が起こったの? 意味が分からない「何してんだろう私…」
次の日、会社には行けなかった。
数日後、休職して、気づけば、季節が変わっていて、いつの間にか咲いていた桜は散って、うるさい雨音さえ静まり、虫の音が聞こえはじめてきていた。
お昼のテレビを見て、あの山で死ぬぞと決めてから数日経った頃、私は山登りの装備を貯金の残高を気にせず買いそろえた、どうせだから良いもの揃えてみたものの、具体的にいつ行くというのがなかなか決められなかった。具体的な事を考えたり、決めたりするのはとても難しい。
ある日、買い物の帰りに蝶々が目前を通りすぎた。あの時の蝶々だと思った。
私は明日にしようと決意した。
ルリド〇ゴンのバースデー的な二次創作的な何かだったりするけれど、もしあれだったらなしで良い。




