恐怖と崇拝
「おいサニー、お前、冒険者辞めたんだってな。」
僕は生還した。
あの迷宮で起きたことは全てギルド長に話した。
もうS級冒険者でも手に負えないそうだから、王国の宰相に報告するそうだ。
元々素行の悪いA級冒険者『毒牙』の評判を生贄にしたんじゃないかって噂もある。
そこに僕も含まれているのはふざけるな、って感じだけど。
「あははは。確かにもう夢を見るのはやめました。僕も他の冒険者と同じく迷宮で宝物やアーティファクトを見つけて一発逆転とはいかないみたいです。更に才能もツキもないときた。命あっての物種って言うじゃないですか。」
力無く僕は笑ったけど、こうも続けた。
「けど冒険は続けます。と言っても薬草採集して売るとか、単発依頼で村落へのポーターとかです。整備された街道なら騎士もいますし、安全ですからね。」
「へへっ!ジジイみたいだな!」
「あなたに言われたくはないですよ。」
ベテラン冒険者は鼻で笑ったがこの人も怪我が原因で本格的な冒険からは引退していた。
だけど僕はまたいつかあの恐ろしい鉄のゴーレム達の支配する迷宮に潜りたいと思っていた。
他の冒険者に聞けば、あのゴーレム達は毎回掘る宝石や鉱石が変わっていて、目的の物以外は捨ててしまうのだそうだ。
(僕はあのゴーレムの言う『施設』の手前まで行ったんだ。まだチャンスはあるかもしれない。僕じゃない誰かに。)
こうしてサニーは街の冒険者として着実に信用を重ねていく。
その先にまた、あのロボットとの邂逅があるとも知らずに。
〜〜〜〜〜〜〜
一方その頃、オーガ・モーガ山の巨峰を挟んで街の反対側にある小さな集落に、『鋼鉄の守護神』が現れたと騒動になった。
「間違いねぇべさ!!おらいの娘っこがあの汚ねぇ緑のハゲチビどもに攫われた後、戻ってきたんだべ!!!!」
「魔物に身体を穢されてもうダメだってところに、斧と焔の杖を携えた鋼の神様が、魔物を断罪しなしった!!!ああああこりゃもう奇跡だべ!降臨だべよ!!!!???」
「オラの娘はもうあの神様の巫女になるっつって山さ戻ってしまったべ。。。」
この平和な集落は最近、突然現れた迷宮の横穴から出でるオークやゴブリンの群れに成す術もなく掠奪を受けていたが、突然現れたゴーレムによって救出されるという事実を神からの奇跡と受け入れる事にしたのだ。
集落の名前はクロガネ。
後に新興宗教・鋼鉄教団の発祥地として、オーガ・モーガ山を中心にし、各地に勢力を拡大するのである。
「鋼神さま、今日も我らに鋼鉄の加護をお与えください。」
俺はまさかこんなところで、人生(ロボット生?)を変える出会いがあるとは、全くもって知りようがなかったのである。




