ニュートライズ・モジュール・シリンジ
「オイ・オマエ」
「ヒィィィィっ!!???いっ!命だけはぁ!!!」
ガタガタ震えている冒険者に俺は声を掛けた。
「コレニ・コリタラ・ボウケンシャ・ナンカ・ヤメロ。ツキアウ・ニンゲン・ハ・カンガエルンダナ」
俺は呆然としているサニーとかいうひ弱な青年を放置すると、再びセーフゾーンで研究を続ける為に戻った。
目下、必要になる物質を抽出する為の材料調達をする為に、魔物の数をコントロールする事にしている。
魔物自体はこの洞窟内にある濃密な特殊プラズマの影響で頑強に成育し、過繁殖する傾向にある為、生態系が乱れやすい。
例えば、この洞窟内を更に深層まで進むとミドリゴムシュルームという天然ゴムを染み出す非常に有難い大型キノコがあるが、オークやゴブリンはその可燃性に目をつけ燃料にしがちであった。
貴重な材料、こちらとしてもゴム等の天然素材をむざむざ炭化させられては困る。
魔物は暖かい火があると急速に繁殖を始める為に、直ぐに縄張りが狭まり生存競争が激化してしまう。
人間がそこに干渉すると更に厄介な事になる。
時折、俺の知らない抜け穴か何かが、何処かの集落近場に繋がっているのか、人間の女性を誘拐して強姦して魔物を産ませ、遊び半分で殺害し、食糧にしている様だった。
更にその人間を狙って他の魔物が横取りに来て更に個体数や植生が変動する。
頭にきた俺はコイツらを増やし過ぎない様に生物の洗脳を目的としたニュートライズ・モジュール・シリンジを開発して脳に直接信号を送り、暴力行動を制限、食事、排泄、睡眠、交尾をコントロール化した。
基本的には自由にさせてやるが食事は決まった時間に取らせたりしているし、新たに増えた個体は魔物自身にシリンジを取り付けさせている。
チートロンの損失を防ぐ為に未開拓深層に特攻させてデータ収集等にも使っている。
生命反応のなくなったシリンジは状況によって自爆か自壊するようになっている。
隠蔽工作も完璧だ。
誘拐に使われた抜け穴は現在調査中だが、そのうち新たに人間と接触し、交流もしくは敵対が予想される。
実際、俺やキャリーボットが何人かの被害者を救出してはいるが、その後については安全地帯に誘導したわけでもないし、彼らが無事生還したかどうかは分からない。
「ヤレヤレ・プラズマノ・カイハツ・ヲ・シナケレバ」
先ほどの襲撃で明らかになったのはプロトエグゾを構成するタンパク質の神経回路に特殊プラズマを伝達させて常に防御体制をとれるようにしなければならないことだ。
長年の進化によってハンドランドの生物はこのプラズマの取り扱いに長けていると推測できる。
より柔軟性の高い動きをするために、魔物から工業用ゼラチンを精製するために新たにボットも製造しなければならない。
俺のロボットライフは更に忙しくなりつつあった。




