概要と音韻と文法と
~~~概要~~~
イーステン及び其の南部諸島連合の本土、イーステン島にて話される言語。略称は東。筆音遺跡で用いられた文字を始祖とするイーステン系文字で綴られる事が殆どだが、作中ではラテン文字転写されている。
元々イーステン島に存在した言語は、筆音遺跡を祖地(原郷)とするデルトア語族が主であり、一部、現シナ連合のオキュトオウ遺跡群を祖地とする連語族の一部などもあった。彼れらは次第に同化し、島内で魔法を利用した文明を築き上げた。彼れらは出流兎亜成立直前にウルクォス大陸へ来、其の風貌から「魔女」と呼ばれた事が知られている。出流兎亜成立直後に「魔女」は島へ帰還し、君主による島内の全域支配という体制が構築された。
異なる言語を話す集団の間で、Tôgn Eastenoは語族を超えた意思疎通の為のピジン言語としてゆっくり形成され、少なくともL'2000年代には行商の間で共通語となっていた。併し、Krâtex隕石孔を形成した隕石(L'2045-ιγʹ第三破片)によって多くの集落が壊滅した後、島内が混乱から脱する過程でクレオール言語に発展した。隕石の被害を受けてから島内で転生者の数が激増した事や、復興の際に転生者の支援を受けた事などからクレオール言語化したTôgn Eastenoには転生者の前世の言語に由来する語彙が多く含まれている。
語順はSOVである。
~~~音韻~~~
==母音==
単母音は以下の通り。基本的に国際音声記号に準ずる。aは広母音であり、iは非円唇前舌狭母音、yは円唇前舌狭母音、uは後舌狭母音、eは前舌中央母音、oは後舌中央母音、ouは後舌半狭母音、aiは前舌半狭母音、auは中舌中央母音、eaは前舌半広母音である。
簡易表記と実際の音とを共に示す。
a /a/[a][ɶ][ä][ɑ][ɒ]
i /i/[i]
y /y/[y]
u /u/[ɯ][u]
e /e̞/[e̞]
o /o̞/[ɤ̞][o̞]
ou /o/[ɤ][o]
ai /e/[e][ø]
au /ə/[ə]
ea /ɛ/[ɛ][œ]
サーカムフレックス付きの母音は長母音と呼ばれるが実際には二重母音である。
â /aɑ/
î /iu/
ŷ /yu/(注:殆どの方言でîと区別されない)
ê /eo/
ô /əu/
û /ui/
此れらの二重母音を除く母音連続を嫌う。此の際、r(常に歯茎ふるえ音/r/)が挿入される場合がある。尚、以下のものは二重母音ではない。
io /jo/
ue /we/
uo /wo/
ui /wi/または/wj/
==子音==
q、v、wは使われない。又、lは殆ど使われない(liber/ríber/「川」のみ)。
b /b/
c /θ/
d /d/
f /ɸ/
g /g/
h /h/
j /j/
k /k/
m /m/
n /n/
p /p/
r /r/
s /s/
t /t/
x /x/
z /z/
==アクセント==
高低アクセントである。長らく高低のみであったが縮約が起こり始めた事で上昇アクセントや下降アクセントが一部方言で出現し始めている。
~~~文法~~~
縮約
弱形を持つ単語の間、短い円唇母音と短い非円唇母音と(専らiとyと)の間で起こり、短い円唇母音のみが残る。縮約である事を明示するアポストロフィーは表記される場合とされない場合とがある。
例)受動文の動作手を表すbiと不定冠詞yが結合してb'yとなる。
理由を表すfuriと不定冠詞yが結合してfur'y(またはfury)となる。
ŷがîと区別される方言では-iとŷとでも起こり、'ŷとなる。
脱落
母音連続を回避する為に起こる事がある。属格-oを除き、前の母音が脱落する事が多い。'で脱落を示す。時に縮約と見分けがつかない。
名詞
幾つかの格を持つ。曲用は一通りのみで、接辞を用いる。
主格は辞書形と同じ。動作主、目的語共に用いる。
属格は-o。修飾語や、前置詞を伴う場合に用いる。
動詞
幾つかの時制などがある。コピュラを除き全て同じ変化をする。
不定形は-eで、辞書形でもある。
現在形は-enauだが、一般に不定形を用いる。後に衰退した。
能動分詞は-exari。進行の意味を加える。
受動分詞は-eni。受動態に用いる。本動詞はcagde。本動詞にはtaxateも用いられたが現在は古風である。
中動分詞は-enûbi。分詞を用いる際の語順はS-分詞-O-Vとなる。
過去形は-eras。
命令には-ioを接尾する。(derkiese「言う」→derkiese-io「言え」)
否定にはpasikemoreという動詞を用い、否定される動詞は能動分詞となる。此の際の語順はS-能動分詞-O-pasikemoreとなる。
コピュラâmi
未来時制を持つ唯一の動詞である。元々イーステン島で話されていたデルトア語族の特徴を保っている。
・現在時制
一人称はôû。二人称はâisu。三人称はâmi。並列の「も」-moと使用する場合など複数を明示する際はôsi。
・過去時制
一人称はuas。二人称はuarto。三人称はâte。並列の「も」-moと使用する場合など複数を明示する際はuôxi。
・未来時制
一人称はesomâ。二人称はesea。三人称はestâ。並列の「も」-moと使用する場合など複数を明示する際はestôsi。
・不定形
uosa。
・能動分詞
一人称はsemê。二人称はsopû。三人称はpara。並列の「も」-moと使用する場合など複数を明示する際はsemût。
・受動分詞
一人称はeras。二人称はerato。三人称はârate。並列の「も」-moと使用する場合など複数を明示する際はerôxi。
・中動分詞
一人称はcemasâ。二人称はcemeâ。三人称はcokix。並列の「も」-moと使用する場合など複数を明示する際はcimakô。
(一覧)
繫辞 現在 過去 未来
一人称 ôû uas esomâ
二人称 âsu uarto esea
三人称 âmi âte estâ
複数 ôsi uôxi estôsi
冠詞
不定冠詞はyで無変化。定冠詞はhou又はsoxで不変化。不定冠詞は用法が広く、英語のanの他、someなどの意味も含む(詰り、単数であるとは限らない)。
尚、冠詞つきの語の修飾の際には二つの形が容認される。houで示すと、hou(名詞) hou(形容詞)と、hou(形容詞) (名詞)である。soxでも同様である。
前置詞
前置詞は属格を要求する。又、語修飾か文修飾かで表記が変わり、語修飾であれば結合し、文修飾であれば結合しない。母音始まりの語を修飾する際、トレマがつくことがある(場合によりトレマは子音字にもつく)。又、複数語が附く場合はハイフンを用いる他、常にハイフンを要求する前置詞もある。
例)ere「中で」=英語in
語修飾Manu ereËasteno「イーステンの中の人間」
文修飾Manu âmi ere Easteno「イーステンの中には人間が居る」
語修飾Manu ereDertoao「出十亜の中の人間」
文修飾Manu âmi ere Dertoao「出十亜の中には人間が居る」
Becd-onaderkieseras-tiso, 「君(私、それ)の言に基づけば、地球人は侵掠者だ」(基づけば「becd-on」、君の言「derkieseras tiso」)
searaは英語のthat、whichに似て文章も後続させることができる特別な前置詞である(接続詞は専らsearaの別称として使われる)。
例)
ヂベニゲ(人名)は外に行く。Dcinpegnike out jode.
ヂベニゲは「私は外に行く」と言った。Dcinpegnike seara tis out jode derkieseras.
searaは前の名詞を説明することもある為、然うでないものであることを示すためにtisやcigを置く俗な用法がある。