表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

七・現代に帰れませんでした。

 のどかな日々が続いている。


「……な~にが、現代に戻ってこれる、だ」

 俺は、毒づいた。あのマッドな博士は『運がよければ』とそう言っていたような気もするが、いつまで経っても現代に戻る気配は無い。俺の記憶が正しければ、恐竜の時代に来てから半年は経っていた。

 しかも、俺のように送られてきた子たちが何人かいるのも知っている。彼らが現れる場所は一緒で、かつ、そういう日は決まって空が変な様子になるのだ。

 多くの恐竜たちは空の異変には気がついても、慣れた様子で「今日は天気がおかしいね」と、慌てた様子はなかった。


 この時代に送り込まれて、取り付く島もなく荒れてどこかへ去っていく者もいたけれど、同じ種類の恐竜だった場合はなるべく俺の所属している群れに誘っている。

 最初は戸惑うことも多かったけれど、今ではとても仲良くなっていた。自分でも驚くぐらいの適応力だと思っている。まぁ、恐竜へ変身したせいなのか、恐竜の言葉が理解できた事が大きな要因だと思うが……


(何人送れば気が済むんだよ、あほ博士は?)

 そして、俺の知る限りで誰一人として、現代に戻る者は無かった。


「あぁ、頭痛くなってくるよ!」

 俺は羽の生えた腕で頭をかく。

「頭いたいの? だから、ぼんやりしていたのね? 大変、ゆっくり休まなきゃ」

 俺の声が聞こえていたのか、カグヤが心配そうにそう言った。

「いや、ごめん。大丈夫だよ」

 そういう意味の頭の痛さじゃないしね。


「そうだ、確かあれがあったはずだわ。ちょっと取ってくるわね」

 カグヤは何かを思い出したように、走り出す。


「これを少しなめると、頭痛は治まるわ」

 少しして戻ってきたカグヤは、こぶし大ほどの土の塊を持ってきた。

「これは、何?」

 どう見ても、泥の固まった土にしか見えない。

「少し削ってなめてみて、頭痛なんてすぐ治るわ!」


 俺は、土の塊を爪で少し削りおそるおそるなめてみる。

「しょっぱい。これ塩?」

「塩?」

「こういうしょっぱいものは、塩って呼んでいるんだ」

 現生の動物も、ミネラル補給のために、塩の混じった土を舐めるという行動をするものがいる。恐竜もそうであってもおかしくないのだ。

「なんか、治まってきたよ……ありがとう、カグヤ」

 ここは直ったことにしておかないと。

「よかった。これはここにおいておくから、また頭が痛くなったらなめてね」

「本当にありがとう、カグヤ!」

 本当にカグヤはいい娘だなぁ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ