表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Fangs  作者: しず
7/109

逃走と決戦

 どこまで走ったのだろう。

あの路地から、陸上トラックくらいの長さは余裕で走ったと思う。


 方角は学校とは真反対の、南に向かって走っていた。

方角の知り方は昔テレビで見たことがある。

ナショナル何とか様様だなホント。


 俺は昔バレーをやっていて、走り込みも少なからず行っていた。

なので体力にはかなり自信のある方だったのだが……


「遅い!もっと早く走ってよ!」


 いや俺が遅いんじゃなくてあなたが早いんですよ。

と文句のひとつでも言ってやりたかったが、俺にそんな体力が残っているわけが無い。

 あぁ、と言葉にならない声で返事をするのが精一杯だった。


 今すぐにでも止まって深呼吸したいところだが、どうやらそう言う訳にも行かないようだ。

後ろから誰かが追いかけてくる。

足音からして複数人。


 車は追ってこない、元々歩いて追ってきたのか、恐らく俺達が出た路地とは逆方向に止めていて、俺達が急に逃げ出すもんだから慌てて追って来てしまったんだろう。

しかし、そいつらもかなり速い。

少しでもスピードを落とすと追いつかれてしまいそうだ。


 そいつらが俺を追う理由はだいたい想像がつく。

路地裏で拾ったキーホルダーのせいだ。

これを盗ったのが悪かったのだろう。


 では少女はなぜ俺を逃がすのだ?

この子が何者であれ、俺の逃走を手助けしてくれているのは間違いないが、理由か分からないと感謝もできない。


 彼女は人混みに紛れ込んだり、入り組んだ路地を通ったりしてあいつらを引き離している。

この子がいなければ俺は今頃捕まっていることだろう。


「このままじゃいつか捕まる!迎え撃つわ!」


 そう言うと彼女は路地に入った。

見れば彼女もかなりバテているようだった。


 迎え撃つって…俺とお前でか?

冗談だろ、人数不利で勝てるわけが無い。

せめて武器か何かがないと。


 路地を進むと行き止まりについた。

どうするんだ、もう逃げられないぞ、と横目で彼女を見ると、一心不乱に手提げ鞄の中身をひっくり返していた。

くそ、ホントに迎え撃つつもりかよこいつ……。


「あった」


 そう言って、彼女はメリケンサックを手にはめる。

……おいおいマジかよ、そんなもんでどうすんだ。


「いたぞ!」

「捕まえろ!」


 あいつらはもうすぐそこまで迫っている。

これは俺も腹を括る必要がありそうだな。

俺はバッグを強く握りしめて構える。


「……アンタ、それで戦うつもり?」


 ……なんだよ、メリケンサックよりはマシだろ。

バッグを利用した護身術は基礎の基礎だ。

リーチの差を舐めるなよ。


「私のコレは特別だからいいの、……てかアンタも持ってるでしょ、コレ」


 ……なんのことだ?

メリケンサックなんて持ったこともないぞ、俺。


「そうじゃなくて……あーもういい!アンタはそこで見てなさい!」


 そう言うと、彼女は奴らに向かって走る。

奴らはこちらから来るとは思って無かったのか、構えるのが少し遅れた。

……てあれ、まさか拳銃か!?

まずいな、流れ弾に当たる訳にもいけない。

俺は、室外機の影に隠れて様子を伺う……もとい戦意喪失した。


 距離を詰めてからはもう、彼女の独壇場だった。

常に敵と敵を結んだ線上に立つことで、相手はフレンドリーファイアを恐れて迂闊に発射できない。

彼女はそれを利用して1人ずつ、確実に仕留めていった。


 メリケンサックというのは距離さえ詰めればとても協力な武器だ。

腕で受ければ骨は折れるし、顔に当たれば顎は砕ける。

総入れ歯は免れないだろう。

ジャブは最速にして防御不可の強力な武器となるし、手元を意識しているとこにいきなり飛んでくる足技は一撃必殺だ。


 と、考えている内にいつの間にか最後の1人になっている。

やっちまってください、姉御。


 しかし、最後の一人はそう簡単には行かないようだ。

上手くジャブを受け流し、蹴りを躱す。

これは分からなくなってきたぞ。


 加勢するか?

しかし、俺に何ができる?

加勢しようとしても足でまといになってしまうだろう。


 加勢は出来なくとも、一瞬注意を反らせることが出来れば……。

 そうだ、このキーホルダーだ。


 最初に俺が触った時のように、もう一度あの光を出すことができれば注意を引けるのではないだろうか。

あの時、全身が浮くような感覚が一瞬あったのを記憶している。

あの感覚を思い起こせ!


 俺は、室外機の影から飛び出すと、キーホルダーを掲げて強く願った。


『光れ!』


 すると、キーホルダーはあの時のように周囲一帯を昼間同然のように明るく照らした。

幸い彼女は俺に背を向けて戦っているので、あいつよりは光の影響を受けにくいだろう。


 光が収まり俺の目が闇夜に慣れた頃には、既に決着が着いていた。


……彼女の勝ちだ。

推敲作業の辛さを侮ってました。

2日あれば全話終わるかなーなんて楽観視してたら、貴重な休日の予定が狂いますね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ