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Fangs  作者: しず
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不思議なセカイ

 なんだ? 何かが違う。

そもそも夕方から早朝に変わっているのも十分不可解なのだが、もっと根本的な……常識が変化している気がする。


 道行く人達はスーツを着た者ばかりで、交通量から通勤ラッシュなのだと分かった。

一人だけ私服でブラブラしていると、周囲の視線が痛い。

……中学の職業体験を思い出すな。

あの時の「仕事を舐めるなよ」と言わんばかりの従業員の視線といったら……。


 思い出すのはやめておこう。


 アメリカの道路のように広く長く直線的なレンガの舗装をあてもなく歩いていると、自動販売機が目に付いた。

ガッツリ個人診療所の敷地内だが、喉の乾きには勝てない。

清涼水を一本買うと、自販機の側面に書かれた住所を調べた。


「……阿波。 あわ…………阿波?」


 阿波踊り……だから、えーと。 四国のどこかだ。

そう、徳島。


 徳島?

復唱したあと脳内で日本地図を召喚し、自身の地元・長崎の孤島と徳島との距離を測った。


 フェリーで5時間、九州を横断するのに高速道路で……。

阿波に着くのは出発してから休憩なしで一日かからないくらいか。


「は。 んなわけないだろ」


 昨今のハイテク産業を舐めるなよ。

スマホに一を質問すれば百が返って来る時代だ。

そんな現代で迷子などちゃんちゃらおかしくて笑ってしまう。


 …………あれ。

ポケットに入れていたはずのスマホがない。

どこを探してもない。

穴が空くほど足元を見つめて路地裏前まで戻ってきたがどこにも落ちていない。


「GPS…………意味ねぇー……」


 とりあえず落ち着くために、目に付いたファミレスへ入ってドリンクバーを頼んだ。

衝動的に自販機で飲み物を買ったことを後悔する。


 店員との短い会話の中でも、底の知れない疎外感を覚える。

とても同じ星で同じ陽を浴びているとは思いがたい壁があった。

それに気づけないのがもどかしくて、物思いにふけるうち、昼が過ぎた。


 やがて客の大波が2度終わって、コーヒーの水面に照明が映ると、加茂は静かに席を立った。


 「……何も……分からん」


 あの路地裏に入って、いつの間に友人が消えたと思ったら阿波とかいう馴染みのない土地に来てしまった。

そんなことが有り得るのか?


「路地裏から来たんなら……路地裏から帰ればいいだろう。 道、記憶しとくんだったな……」


 半日近くテーブル席を占領して店員に嫌な顔をされるのは当たり前だったが、今はそれも非日常的に捉えてしまって、知らない場所から来た自分を嫌悪しているのではないかと疑心暗鬼に陥ってしまう。


 結局のところ、加茂修一の『目に付いたファミレスで何があったか整理しよう作戦』はあえなく失敗に終わった訳だ。

当初は完全にノープランだったので、序盤の設定滅茶苦茶で笑いながら編集してました。

読みやすくなってるといいな。

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