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988 意思の疎通

明かりを消したレイジェスの店内。

出入口近くに並んだ寝袋の中には男達が入っていた。


「つーかよぉ~、どうすんの?」


リカルドは頭の後ろで手を組み、右隣で横になっているアラタに声をかけた。


「え?いや、いきなりどうするって言われても・・・なにを?」


「んだよ兄ちゃん、気ぃ抜けてんじゃねぇのか?しっかり考えとけよな」


急に訳の分からない事を問いかけられても返事に困る。

そう顔に出すがリカルドには通じない。


「リカルド、いきなりどうするって言われても、アラタも困るよ。それにさ、なにをどうするのか?そのあたりをちゃんと言葉にしないと」


呆れた声でアラタを非難するリカルドに対して、リカルドの左隣で寝ていたジーンが、なだめるようにフォローする。ジーンも眠れずに起きていたのだ。


「え~、そこはよ、俺と兄ちゃんの仲なんだから分かってくれるべきじゃね?なぁ兄ちゃん?俺と兄ちゃんなら説明不要じゃね?どうよ、の一声でいけるよな?」


心外だと言わんばかりに不満の声を上げ、リカルドはアラタに顔を向けると、強く同意を求めた。

どうよ?の一言でお互いの伝えたい事を理解するまず不可能。しかしその不可能を平然と要求され、アラタは溜息をついた。


「はぁ~・・・いやいや、無理言うなって。そんなんで分かるわけないじゃん?逆にお前ならできんの?どうよで何考えてるか分かんの?」


「んだよ兄ちゃん、しょっぺーなぁ~、俺はよ、自分ができねぇ事は人には言わねぇかんな?こういうのはよ、声のニュアンスでくみ取んだよ。ほれ、試しに言ってみ?どうよって言ってみ?当ててやっからよ」


自信満々、できて当然、当たり前。それくらい堂々とした態度だった。フロアの発光石は消えているため、暗くてリカルドの表情は見えないが、きっとふてぶてしい顔をしているだろうとアラタは思った。


「・・・分かった。そこまで言うなら試してやるよ。でも、いいんだな?本当に分かるんだな?そこまで偉そうに言って、外れたら赤っ恥だぞ?」


「くどいなぁ~、兄ちゃん、いいか?分かるって言ってんじゃんよ?なに?俺の事なめてんの?いいから言ってみ?言ってみって!」


あまりのしつこさに、アラタはとりあえず要求された通りに言ってみた。


「・・・どうよ?」



「・・・あー・・・はいはいはいはい、分かった分かった。ちょろいちょろい。でもよぉ、悪ぃけどそれは却下だ。明日の朝は目玉焼きよりカツ丼が食いてぇ。諦めろ」


「お前ッ!?けっきょく飯の話しかよ!あと俺そんな事考えてねぇから!間違ってっから!全然分かってねぇじゃん!」


「うっせーなぁー、耳元で怒鳴んなよ?何時だと思ってんだよ?だったらもっと分かりやすく言えよ?ちゃんと言わねぇと伝わんねぇぞ?んだよ、どうよって?」


「はぁぁぁぁぁぁ!?お前がどうよで分かるって言ったんだろ!?ふざけた事言ってんじゃねぇぞ!」


「うっせぇぞコラァァァァァァーーーーーーッツ!ぶっ飛ばされたくなかったらさっさと寝ろッツ!」


アラタとリカルドの言い合いがエスカレートし始めたところで、ジャレットの怒声が飛んだ。


「は、はい!すいません!」

「やべっ!」


まさかジャレットが怒鳴るとは思いもしなかったアラタとリカルドは、慌てて口を閉じて寝袋の中にもぐりこんだ。


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