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【928 目が覚めるまで】

「私達はウィッカー様が城に入られてから、カエストゥスの陣営に戻りました。後方から現れた帝国軍の増援に挟み撃ちにされましたが、ペトラ隊長が圧倒的な強さを見せつけ、我々は互角以上の戦いを繰り広げる事ができました。このままいけば、カエストゥスの勝利だ。そう確信できるところまで戦えたんです・・・・・」


俺が落ち着いた様子を見て、アニーは俺が城へ乗り込んでからの事を話しだした。


フローラを含め、七人は戦場へ戻ったようだ。数で勝る帝国に挟み撃ちにされたようだが、ペトラが単身で敵を斬り伏せる姿は、帝国の精鋭達でさえ怯ませる程の気迫だったらしい。


カエストゥスの士気は高まり、逆に帝国は一歩及び腰になった事で、数の差を埋める程の戦いができたようだ。


ヤヨイさんから剣を教わり、ドミニクさんから受け継いだ最強の盾、流水の盾を持ったペトラは、今や体力型として並び立つ者がいない程の高みに立っていた。

そしてあの無尽蔵の体力と、竜巻を思わせる荒ぶる戦い方は、大人数が相手である程に真価を発揮する。


ペトラが隊を率いたのであれば、まず後れを取る事はないだろう。

だがアニーの口は重かった。



「でも・・・皇帝が戦場に現れてからは一方的でした。カエストゥスの青魔法使いでは防ぎきれない魔力・・・ペトラ隊長がなんとか皇帝に食い下がっていましたが・・・皇帝の光源爆裂弾が全てでした」


眉を寄せて、悔しさを噛み締めるように話すアニー。

リースもトムもジョニーも、みんな視線を落とし拳を強く握り締め、体を震わせていた。


「光源爆裂弾を、撃ったのか・・・」


戦場は当然両軍が入り乱れている。カエストゥスの兵にだけ攻撃をあてる事なんて、そんな都合の良い事ができるはずがない。

それゆえに上級魔法、特に光源爆裂弾を使用をする事はなかった。使いたくてもできなかった。


「はい・・・自軍を巻き込む事をいとわず、撃ちました。帝国軍の被害も大きかったのですが、狙い事態はカエストゥスに合わせてますから、こちらの被害の方がはるかに大きかったのです。ペトラ隊長の決断は早かったです。二発目を皇帝が撃つ前に撤退の指示を出し、被害を最小に抑えたのです。あのまま留まれば、次弾で軍は立て直せないくらいの被害を受けていたと思います」


皇帝の光源爆裂弾の威力は十分知っている。

カエストゥスを焼いたあの破壊力を考えれば、一発で軽く数千、いや万の犠牲を出していてもおかしくない。


しかし、自軍を巻き込んでまで撃つとは・・形勢がカエスゥスに傾いているからと言って、そこまで容赦のない真似ができるとは思わなかった。

非道で冷酷な男だというのは十分に分かっていたが、帝国を繁栄させ、国を豊にした事は間違いない。

だから国民には情を持っていると思っていた。



「・・・そうか、勝利のためには兵の犠牲はあって当然、そう考えているのか・・・」


だが、自国の兵を巻き込んでまで光源爆裂弾を撃った。

そんな非情な男が大陸を統一するなど断じて許せない。やはり皇帝を生かしておくわけにはいかない。


ベン・フィングの裏切りで死にかけた俺だが、今度こそ確実に皇帝を仕留めなくてはならない。

もう皇帝は時を止められない。純粋に魔法使いとしての力量をくらべた時、今の俺ならば十分に

勝算はある。


最後に使ったあの光の力、あれは研究中の光魔法だろう。

だが感覚で分かる、光魔法はもう使えない。なぜあの時使えたのかは謎だが、未完成の光魔法があの時使えた事は、奇跡とよんでいいのかもしれない。


「・・・霊魔力は残った、か・・・」


光魔法は使えない。だが、自分の体内に霊気が残っている事は分かる。体内で魔力と霊力を合わせてみると、二つの力が融合し、霊魔力を作る事ができた。師匠が編み出した霊魔力は、しっかりと俺に受け継がれている。

それと同時に、青魔法、そして白魔法が使える事も理解できた。つまり今の俺は結界も張れるし、ヒールも使えるという事だ。

黒魔法、白魔法、青魔法、三系統全ての魔法を使う事ができる。


我ながら驚いた。三系統の魔法を使う事ができる人間などいない。いるはずがない。

だが自分がそうなのだから信じるしかない。師匠とジャニスが残してくれたこの力で、俺は戦うんだ。



「・・・それで、ペトラ達はカエストゥスに撤退したというわけか?」


自分の状態を確認しながら、俺はアニーへ確認の言葉をかけた。


「・・・正確には帝国を追って行ったのです。ウィッカー様、あなたは丸三日寝ていました。その間に帝国はカエストゥスへの進軍を始めたのです。一時撤退していた我が軍は、ペトラ隊長が先頭に立って自軍を立て直していましたが、帝国の動きを見ると、動ける兵をまとめて追って行ったのです。私達も志願しようか迷ったのですが、眠っているウィッカー様残して行くわけにはいきませんし、多少の戦力は残っておかないとと思い、この七人でウィッカー様が目を覚まされるのを待っておりました」


「三日!?俺は三日も寝ていたのか!?」


驚きのあまり立ち上がると、少し眩暈がして足元がふらついた。するとトムとジョニーが両脇から体を支えて、心配そうな顔を俺に向けた。


「ウィッカー様、急に立ち上がってはいけません」

「傷は治っても血は足りていないんです。まだ無理をしないでください」


「あ・・・ああ、すまない」


体を支えられながら、ゆっくりと腰を下ろすと、七人の中で最年少、ダークブラウンの短い髪、そして少し目付きが鋭い15歳のリッキーが、意を決したように口を開いた。



「・・・ウィッカー様、追いますか?」


その一言で、一気に場の空気が張りつめた。


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