【901 二発目】
「なっ・・・この、爆発は!?」
「師匠・・・」
城へ向かい走っていたブレンダンとジャニスは、突如城の上階を、内側から吹き飛ばした爆発に足を止めた。
凄まじい破壊力だった。上階の半分以上は、今の爆発で崩壊されただろう。石の破片が中空に撒かれ、白く大きな煙が濛々と空に昇って行く。
「この魔力、ウィッカーではないな。皇帝か?」
とんでもない破壊力じゃ。おそらく中級魔法じゃろうが、上級魔法に匹敵する破壊力じゃぞ。
爆発を見上げながら、思わず歯を噛みしめる。
まずい・・・この魔力、明らかにウィッカーより上じゃ。
読みがあまかった。ウィッカーはあの王位継承の儀から、より修練に励み、力をつけていった。
今のウィッカーなら皇帝にも届く。そう思っておった。
「・・・師匠、急ごう。ウィッカーが危ないかもしれない」
ジャニスもこの爆発には息を飲んだ。だが単身で皇帝に挑んだ弟分の身を案じ、ブレンダンを促した。
「・・・ジャニス」
ブレンダンはジャニスに頼もしさを感じていた。
ジャニスは勝ち気で周りを引っ張っていく強さを持っている。だが、それと同時にとても繊細だった。
どこか儚くて脆い。それがジャニス・コルバートだった。
しかし、最後の最後ではやはり強い。
夫を亡くしたばかりなのに、辛い気持ちに蓋をして立ち向かおうとしている。
「うむ、そうじゃな」
ブレンダンはジャニスの目を見て、強く言葉を返して頷いた。
明るい栗色の髪に、髪と同じ栗色の瞳。
小さい時からずっと見てきた色は、今も昔と変わらない。
二人は視線を交わすと再び走り出した。
ウィッカー、待っておれ!ワシらが行くまで持ちこたえてくれ!
「ハァッ・・・ハァッ・・・!」
呼吸が乱れ、鼓動が早くなる。たった今、自分のすぐ脇を抉り飛ばしていった爆発の跡を目で追いかけた。とてつもない爆発だった。
天井を支える柱も、石造りの床も壁も、全てが跡形もなく吹き飛ばされていた。
危なかった。まともに受けていたら、今頃俺は・・・・・
あまりの破壊力に、俺は自分の両手が残っているのか確認した。
すでに拳に纏っていた風を、最大限まで大きく強くして、自分を護る盾として構えていた。
皇帝の爆裂空破弾を上空に飛んで躱そうとしたが、一目で不可能だと分かった。
それほど巨大だった。隙間なく部屋を埋める程の破壊のエネルギー、回避ができないのであれば、防御しかなかった。
風の盾を作り、体を回して皇帝の爆裂空破弾を受け流した。
あれほど巨大な破壊のエネルギーだ、弾く事も軌道をズラす事もできるはずがない。
必然とできる対応策は限られる。そして唯一可能だった手段が、風と回転で受け流す事だった。
凄まじい衝撃に、手が痺れて小刻みに震えている。感覚もおかしい。
だが両手が残っている事に、安堵の息をもらした。
「フハハハハハハ!どうした?さっきまでの威勢の良さはどうした!?」
「くっ・・・皇帝」
「そんな隅っでかくれんぼか!?今更怖気づいたか!?クックック、これが実力差というヤツだ!」
ひとしきり笑い通すと、皇帝は再び俺に右手の平を向けて来た。
「痙攣か?その腕で、もう一度余の爆裂空破弾を凌げるかな!?」
破壊の魔力が込められた右手が、バチバチと火花を弾けさせる。
「ぐっ・・・ 」
攻撃に備えて両腕を上げようとするが、まだ痺れの残る両手では、満足に拳も握れなかった。
駄目だ・・・この状態では、次も回転で防ぐ事はできない。
だがどうする?それなら次の一発をどうやって回避する!?
「さぁ、ウィッカーよ!この一発、防げるものなら防いでみろ!」
その手から撃ち放たれたものは、最初に見たものと同じ、強烈な光を放ち大気を震わせる破壊のエネルギー弾。
爆発の中級魔法 爆裂空破弾
「ぐッ・・・!」
やるしかない!ここでこれをやらなければ死ぬ!
両手に風の魔力を集めて盾を作る。
感覚の無い痺れた両手を無理やりに動かして、爆裂空破弾に向けて振るう!
「ウォォォォォォォォーーーーー!」
そして一発目と同等・・・いやそれ以上の爆発が、目の前の全てを吹き飛ばした。




