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09 キッチン・モロニー

タイトルの話数を間違えて「08」と記載しておりました。

「09」に訂正しました。

脱字を一か所見つけましたので、修正しました。

物語りの内容に変更はありません。


8/27 読み返したら見づらいと思いましたので、改行だけやり直しました。

内容に変更はありません。

「あ?ギャルオ?何言ってんの?」


「あ、いやいや!何でもないです!すみません!」


ヒョウ柄タンクトップの男は、訳が分からないと言うように顔をしかめる。

当然だと思うが、ギャルだの、ギャル男だのというのはいないらしい。意味不明な言葉を向けられて、気を悪くするのは当然だ。俺は慌てて頭を下げた。



少しの間首を傾げていたが、まぁいいや、と言って肩をすくめると、男は俺の首の腕を回して、内緒話でもするように顔を近づけて来た。


「それよりさ、さっきレイチーから聞いたんだけど、お前、異世界から来たんだって?昨日店の前で倒れてたっても聞いたけど、どうなってんの?あ、オレは防具担当のジャレット・キャンベルだ」


ジャレットと名乗った男は、どうやらここの店員のようだ。

こっちの反応も気にする事なく、一方的に色々とまくし立ててる。かなり押しが強そうだ。


「え?レ、レイチー?あ、レイチェルの事ですか?」


「あ?レイチーったらレイチェルの事だろ?他に誰がいんだよ?そんな事よりお前の異世界話は本当マジなのかよ?」


首に回された腕にグっと力が入る。まるで嘘偽りなく答えろと圧迫されているみたいだ。

本当なのかと言われても、俺だってまだ受け止めきれていない部分がある。

自分の身に起きた事を、ありのまま伝えるしかない。そうして口を開こうとしたところで、俺の名前を呼びながら、カチュアが小走りで戻って来た。



「アラタくん、レイチェルに聞いたら、まだ時間かかるから一緒にお昼行って来てって。あ、ジャレットさんおはようございます。今日はお昼からなんですね?・・・えっと、何してるんですか?」


俺の首に腕を回しているジャレットを、カチュアが首を傾げて見る。

カチュアに気が付いたジャレットは、パッと俺の首から腕を離して、笑顔で挨拶を返す。


「ウィーッス、カッちゃんは今からメシかい?アラやんと行くの?」


「え!?」


驚きのあまり、思わず大きな声が出た。


え!?ア、アラやん?アラやんって俺の事か?なんだこの人!?いきなり何言ってるんだ!?

たった今まで俺に凄んでたくせに、今度は急にアラやんなんて言ってきて意味が分からない。


困惑する俺にジャレットは、不自然なくらい白い歯を見せて笑った。


「ま、行って来いよ。詳しい話はあとで聞いてやっからよ」




外に出るとギラギラと強い陽の光に目を細めてしまう。30度以上は確実にあるだろう。

少し歩くだけで額に汗が浮かんでくる。


このリサイクルショップ「レイジェス」は木に囲まれた場所にあるので、日差しが遮られ店内はそれほど暑く無かった。

けれど町中ではアーケードなんて気の利いた物はなく、直射日光をモロに浴びてしまう。


遠くから眺めた時も思ったが、やはり中世ヨーロッパの街並みのようだ。

石畳の小路や、赤茶色のレンガ屋根の家、いたるところに沢山の花が咲き誇り、どこを見ても絵になる。


「綺麗な町だね」


「でしょ!私この町が大好きなんだ。花も沢山あるし、食べ物もおいしいんだよ」


感じた事を率直に口にすると、となりを歩くカチュアは嬉しそうに声を弾ませた。

自然の少なくなった日本で育ったからか、この町は本当に綺麗だと感じる。カチュアがこの町を大好きだと言うのもよく分かる。


周囲に目を向けると屋台も沢山出ていて、串焼きの匂いについ目を奪われていまう。

食べ物も美味しそうだ。


「あの人、ジャレットさんってなんかすごいね?ちょっと怖そうだと思ったら、俺の事いきなりアラやんって呼ぶんだよ?」


「あ~、ジャレットさんは初対面だとびっくりするかも。私も初めてあった時にいきなりカッちゃんだもん。なんか男の子っぽいからやめてって言ったら、照れんなよって親指立てるんだもん。あの時は私も困ったよ。でもね、実は面倒見がよくてとっても良い人なんだよ。アラタ君もジャレットさんと沢山話したら、きっと仲良くなれると思うよ」


どうやらジャレットさんは癖のある人だけど、意外に慕われているようだ。

そして話に一区切りがついたところで、目的の店に着いた。




白い外壁に赤茶色のレンガ屋根、タイル貼りの看板には「キッチン・モロニー」と書かれている。


一見すると女の子が好きそうな上品な喫茶店に見えるが、大きめの窓から中を覗くと男も多く、

店内も20人くらいは余裕で入れそうな広さだった。


中に入ると、角に丁度二人掛けのテーブルが空いていた。カチュアが席取りに向かうところを見ると、どうやら、先に席を確保してからカウンターに注文に行くスタイルのようだ。



外から見ると上品で落ち着いたイメージだったが、店内は意外に騒騒しい。


若者が多いようで、カップルもいれば男だけのグループもいる。

料理を見ても、ハンバーガーのような物や揚げ物が多く、キッチンというよりファーストフード店という印象だ。



「なんか、賑やかな店だね」


「うん。いつもこんな感じだよ。外から見ると静かで上品な感じなんだけどね。あ、私のおすすめでいいかな?嫌いな物ある?」


「あ、なんでもいいよ。正直なにがあるか分からないし、あ!そういや俺こっちの金もってない!」


「あはは、大丈夫だよー、レイチェルが新人君へのご馳走だって言って、お昼代出してくれたから。

私もご馳走になっていいって言ってたし、遠慮しないで」


お金を持ってなくて焦る俺を見て、カチュアはクスリと笑うと、カウンターに注文に向かった。




一人で席に座って待っていると、昨日からの自分に起きた出来事で頭がいっぱいになった。


1日経って少し落ち着いた事もあり、ある程度冷静には受け止められている。

けれどやはり不安は大きい。


レイチェルに助けられた事は本当に幸運だったと思う。寝床の世話に仕事までくれて感謝しかない。


店の皆とはまだあまり話せてないけど、俺でもなんとかやっていけそうな雰囲気には感じた。


自分の性格の悪いところは自覚はできている。弥生さんにも散々言われたし、この世界では嫌になっても逃げ場はない。今度こそ本当に変わらないといけない。



「なんだか難しい顔してるね?」

「おわぁっ!」


手のひらに顎を乗せて考え込んでいると、注文を終えたカチュアが俺の顔を覗き込んできた。

驚きのあまり変な声が出ると、カチュアがクスクス笑いながら正面に腰を下ろした。



「おわぁって、フフフ、アラタ君て面白いね」


「はー、びっくりした・・・いや、急に顔を覗き込まれたら、誰だってびっくりするよ」


「ごめんね。脅かすつもりじゃなかったんだけど」


「いや、怒ってるわけじゃないんだけど、その・・・何でもない」


ニコニコしながら俺を見ているカチュアに、なんだか照れ臭くなってしまい、話を続けられなくなってしまった。明るくて話しやすいし、きっと誰からも好かれる子なのだろう。


「はいよ!ミートグラタンお待たせ!」


カチュアが日本の事を聞きたがったので、日本の街並みや四季について話していると、

野太い声で体格の良い男が、テーブルに料理をドンと置いてきた。



スキンヘッドで眉毛が太い、50代くらいだろうか、シワが深く、それなりの年に見える。

白のコック服を着ているという事は、この人が料理をしたという事だろう。

しかし、こう言っては悪いが強面過ぎてまったく似合っていない。



コック服の男性はギロリと俺に一瞥をくれると、カチュアに顔を向けた。


「カチュア~、こいつは新顔だな?新しい店員か?」


「モロニーさん、こんにちは。今日から入ったアラタ君です。よろしくお願いします」


カチュアは笑顔で俺の紹介を始めた。そして異世界から来て行く所がないというくだりで、モロニーさんは目に涙を浮かべながら俺に向き直った。



「そうか!そうかそうか!そりゃあ大変だったな!でもよ、カチュアんとこの店なら大丈夫だ。しっかりしてっから!レイチェルに拾われたのは幸いだったな!あ、ほらほら冷めないうちに食ってくれ、うちの自慢のミートグラタンだ。じゃあな、ゆっくりしてってくれ」


ズシリと重さを感じる手を俺の肩に置くと、モロニーさんはカウンターへ戻って行った。


「・・・あの人、もしかしてここの店主さん?」


「うん、そうだよ、ディック・モロニーさん。体が大きいし見た目がちょっと怖いから、初対面だと怖がられる事多いんだよね。でもね、実は優しくて涙もろい人なんだよ」


「そっか・・・うん、確かに最初睨まれたけど、カチュアが俺を紹介したらいきなり優しくなったよね」


「うちの店の人達もよくここ来るからね。実はレイジェスはここの常連なの。美味しいしお値段もお手頃だからね。アラタ君ももうレイジェスのスタッフなんだし、キッチン・モロニーをご贔屓にしてください」


カチュアは本当にこのお店が好きなようだ。

グラタンを一口食べると、美味しいと言って顔をほころばせる。


なんだかその姿が可愛くてついじっと見てしまった。




最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
話 に 必ず送り仮名がついて「話し」になっているのが気になります。 「話」が名詞なら送り仮名はつけず、動詞なら送り仮名をつけるというのが、(個人的には)正しいと思っているのです。
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