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893/1564

【893 カエストゥス 対 帝国 ㉗ ウィッカーの約束】

誤字を見つけたので訂正しました。内容に変更はありません。

「・・・ウィッカー様、我々もお供します」


七人の黒魔法使いの一人、赤い髪をしたアニーが代表するように口を開いた。

これから皇帝の待つ、城内に向かおうとするところだった。


「いや、アニー達は俺に魔力を送って、もう歩く事がやっとだろ?そんな状態ではダメだ。ここを離れて休んでいてくれ」


戦いたい気持ちは理解できる。

だが枯渇寸前の魔力では、皇帝の魔力を浴びただけで命を失ってしまうかもしれない。

王位継承の儀で見た皇帝、そして垣間見えた絶大な魔力はそれだけ危険なのだ。



「ウィッカー様、せめてこれを着て行ってください。僕ので申し訳ないんですが」


茶髪のトムが自分の着ていた黒いローブを脱いで、俺に手渡してきた。


「トム・・・ああ、ありがとう」


この黒いローブは、カエストゥスの風の加護を受けたローブだ。

着ていると僅かだが魔力を上げる効果がある。


まだ戦いは続いている。消耗しているトムにもこれが必要なはずだ。

だから断ろうかと思ったが、俺に向けるみんなの目を見て受け取る事にした。


フローラにヒールをかけてもらい、黒魔法使いのみんなから魔力を分けてもらった。

けれど体は重く、足腰に力が入らない。体の芯に残っているダメージは、本来ゆっくり休養をとって抜いていくべきなんだ。

ヒールで傷は癒せても、失った血が戻らないように、抜け切らない疲れやダメージはある。


俺はこれから皇帝に挑む・・・

それを考えれば、この風の加護を受けたローブは受け取るべきだ。



俺はトムからローブを受け取って袖を通した。体系が近いから窮屈でもなく、ダボっとする事もなく着る事ができた。わずかだが体内に魔力が満ちる感覚に、拳を握り締めた。やはりこのローブは必要だ。

着替えを終えると、俺は後ろに立つフローラに向き直った。



「・・・フローラ、みんなを頼むぞ」


この中で満足に動けるのはフローラだけだ。そしてフローラは部隊長に選ばれるだけあって、見た目からは想像できないくらい強い。エロールからもらったという水色のマフラーは、エロールと同じ魔道具反作用の糸だ。魔力を他系統に変換して、青魔法の結界も使えるという。

それならば、みんなを護れるだろう。



「はい・・・ウィッカー様、お気をつけて」


首に巻いたマフラーを握りながら、フローラは頷いた。

少しは落ち着いたように見えるけど、両の眼には涙の跡が目立つ。

俺に見せる悲し気な微笑みには、様々な想いが感じられる。


背を向けて先へ進もうとして、思い直してもう一度フローラに向き直った。


俺はフローラに何もしてやれない。

何を言ってもフローラの悲しみを癒す事はできない。


だけど、エロールが繋いだ命を大切にしてほしいと・・・

怒りや憎しみの言葉を飲み込んで、命の尊さを口にしたフローラ・・・キミのために、これだけは約束しよう。



「フローラ、俺がこの戦争を終わらせる」



真っすぐにフローラの瞳を見つめてそう告げる。

これ以上悲しみを生んじゃ駄目だ。ここで皇帝を止めて戦争を終わらせる。



フローラの瞳が揺れると、また涙が浮かんできた。

そして小さく何度か頷くと、声を震わせて一言だけ口にした。



「お、お願い、します・・・・・」


「ああ・・・まかせろ」


フローラ、お前は決して口にしないだろうな。

エロールとの思い出を、エロールへの気持ちを黒い感情で汚したくないから。


だから俺に任せろ。


こんな戦争を起こして、お前からエロールを奪った帝国を、俺が叩き潰してやる!


体は重く、足にも力が入らない。魔力も全快には遠い。

だが今の俺は、かつてない程に気が高ぶっている。


「俺に任せろ」


それだけ言い残して俺は走った。


今度こそ振り返らずに、皇帝の座する城へと走った。


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