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【883 カエストゥス 対 帝国 ⑰ アンソニーの強さ】

「アンソニーの強さはなんだと思う?」


皇帝の問いかけに、大臣ジャフ・アラムは顎に手を当て少し考えを巡らせた後、確認するように言葉を口にした。


「・・・やはり、火の精霊を操る力ではないでしょうか?魔力と違い無尽蔵の力は、とてつもない脅威です」


ジャフの考えを聞くと、そう答える事が分かっていたかのように、皇帝はフッと笑った。


「まぁ、そうであろうな。同じ問いをすれば、ほとんどの者はそう答えるだろう。そしてそれは間違いではない。だがヤツと戦った事のある余に言わせれば、アンソニーの恐ろしさ、強さは、異常なまでの打たれ強さだ」


「打たれ強さ・・・ですか?」


意外な答えだったのだろう。ジャフは眉を寄せて、皇帝の言葉をそのまま問い返した。


「そうだ。アンソニーは余の魔法を何発くらっても決して倒れなかった。何をしても倒せない。自分の技は無力なのか?攻撃しているこちらが追い詰められるようなあの感覚・・・あれは戦った者にしか分からんだろうな」


かつて、実弟アンソニーと戦った時を思い出したのか、皇帝は手の平を見つめながら、口の端を歪めて笑った。


あの時は若さゆえに戦略にうとく、強すぎる精霊の力に任せた戦い方をしていたからこそ、つけ入る隙があった。だが敗北を味わい、戦いに対する考えが根底から変わった今のアンソニーは、あの頃とは比べ物にならない程強い。



「フッ、まぁいい・・・・・ジャフよ、そろそろ頃合いだろう?調子付いているカエストゥスを黙らせろ」


皇帝の指示を受け、ジャフの目が鋭く光った。


帝国がカエストゥスの侵入をここまで許した事には、絶対の力を誇るワイルダーを門番として、カエストゥスを叩く狙いがあった。


だがそれだけではない。カエストゥスを一網打尽にするもう一つの策があった。


「承知しました。ではこれより、カエストゥスを始末して御覧に入れましょう」







エロールの魔道具、反作用の糸の爆撃の直撃を受けたアンソニーは、黒煙を体から引かせながら空中に高く打ち上げられた。


「よしっ、入った!」


水色のマフラーに感じた手応えに、エロールは拳を握り締めた。

反作用の糸はエロールの魔力を変換して、青魔法の結界、爆発の黒魔法に変えて使う事ができる。

その威力は使い手の魔力次第。魔力が小さければ、初級魔法かそれ以下の力しか引き出せないが、高ければ中級、それ以上の力にも変えられる。


今エロールがぶつけた力は、確実に中級以上の力があった。まともにくらってただで済むはずがない。事実、アンソニーは受け身も取れず背中から地面に落ちた。



「はぁっ・・・はぁっ・・・どうだ、この野郎!これが俺の反作用の糸だ!」


熱線を防ぐために張った結界で、相当な魔力を消費していた。

そして今の一撃に使った魔力もかなりのものだった。


座り込みたい衝動にかられるが、エロールは立ったままアンソニーを見下ろした。

勝者は自分だと見せつけるように・・・しかし・・・



「・・・なッ!・・・まさか・・・」



エロールは目を疑った。

立てるはずがない。少なくとも爆裂空破弾と同等、それ以上の威力はあったのだ。即死してもおかしくない。命があっただけでも驚くべき事であり、まともにくらって立てるはずがないのだ。


だが、アンソニーは立った。



「・・・意外だったか?」



爆発の魔力を込めたマフラーは、アンソニーに腹部に命中させたはずだった。

しかし、アンソニーのローブは破れてもいないし、焦げの一つも付いていない。爆撃を受けたとは思えない程綺麗なものだった。なぜか?


これは火の精霊による防御だった。


ウィッカーは予想していたが、火の精霊を使うアンソニーには火魔法は通用しない。

そしてそれは、系統が近い爆発魔法も同じであった。


アンソニーの顔に目を向けると、ウィッカーとの戦いで負ったであろう赤い痣はあった。

口の端にも血が滲んでいる。だがそれだけだった。爆撃によって受けたと思われる傷は一つも見えなかった。


しかし、多少なりともダメージが無いわけではない。

体が空中に吹き飛ばされた以上、爆発による衝撃が体の内部に通っていた。

そして地面に落ちた時に背中も打ち付けている。

立ち上がったとはいえ、足元がおぼつかなく見えるのは、そのせいだろう。


だが、言ってしまえばそれだけだった。


残り少ない魔力をぶつけたエロールの起死回生の一撃で、たったそれだけのダメージしかあたえられなかったのだ。


エロールの精神的な動揺は大きい・・・


「・・・ふん、頑丈なヤツだ」


動揺は大きいが、口から出す声には力があった。まだエロールが諦めていない。


僅かでもダメージを与えられたのだ。それはつまり、勝ち目が無いわけではないという事。

そして体力型でない以上、精霊使いの体力は、魔法使いの自分と変わらないように見えた。


少ないが勝算はある。


「ゼロでなけりゃ十分だ」


エロールは両手でマフラーを掴み構える。魔力を流したマフラーは硬質化し、エロールは一歩前に足を踏み出した。



「・・・貴様が相当な使い手である事はわかった。個人的にはもっと遊んでやりたいところだが、あいにくとカエストゥスを殲滅しなくてはならないのでな。これで終わりにさせてもらおう」


「言ってくれんじゃねぇか・・・できるもんならやってみろよ!」


強く地面を蹴り上げ、勢いよく前に飛び出したエロール!


硬質化させた水色のマフラーを振り上げたその時、アンソニーの赤い瞳がエロールを睨み付けた。



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