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【864 温もりを感じながら】

「ジョルジュ、今日は泊っていけるんだろ?」


「ああ、今日と明日の二日間は世話になる。ジャニスの体調も良くなったし、母からもせっかくだからゆっくりしてこいと言われてな」


孤児院に来たのは久しぶりだった。

ジャニスはつわりが酷く、妊娠してからはなかなか孤児院に来る事ができなかった。

産後二か月が経った。体調も落ち着き、子育てにも慣れてきて、今日は数か月ぶりに孤児院に遊びに来た。


孤児院に来る前にヤヨイの店、レイジェスも見てきた。

相変わらず沢山の人で賑わっていた。

楽しそうに働くヤヨイの姿は、見ていて俺も温かい気持ちになる。


「ウィッカー、ありがとう」


「ん?・・・急になんだよ?いきなりお礼言われても困るぞ」


正面の椅子に座るウィッカーは、少し眉を寄せて困ったように笑っている。

それもそうだな。いきなり言われても何に対する感謝か分からない。


「俺と友達になってくれてありがとう」


伝えたい事は声に出さなければ届かない。

ジャニスには、よく真顔で言えるね、と言われるが、気持ちというものは、きちんと言葉にして伝えるべきだ。俺はそう思っている。


「・・・そういうとこ、相変わらずだな。ああ、俺もジョルジュと友達になれて良かったって思ってるよ。俺こそ友達になってくれてありがとうな」


ウィッカーは少し照れたのか、頭を掻いて目を逸らした。

けれど俺と友達になれて良かったと、そう言葉を返してくれた。


「あ~・・・俺ちょっとジョセフ君見て来るよ。まだ抱っこさせてもらってないんだよ」


「そうか、あっちでジャニスがブレンダンに見せていたぞ」


男同士で何を恥ずかしがっているのかと思うが、ジャニスが言うには、大抵の男はこういう話しは照れるものらしい。俺が変わっているという事か。



最愛の妻と子供、そして沢山の友達ができた。


「・・・こういう気持ちを幸せと言うんだろうな」


胸に感じる温かみを、俺は言葉にして呟いた。



俺は幸せだ









薄く目を開けると、長い金髪の男が何かを叫んでいる姿が目に入った。


ああ・・・ウィッカー・・・どうしたんだ?お前がそんな顔をするなんて・・・・・


「ジョルジュッ!おい!・・・ぐっ・・うぅぅぅぅぅッ!」



涙・・・・・?ウィッカー・・・どうしたんだ・・・?

ああ・・・そうか、俺は・・・・・



足が動かない、腕も動かない・・・・・話そうとしても声が出せない。


そうだ・・・確か俺は、あの男の手が迫って来て・・・・・

こうして意識が戻ったのは・・・・・時間をもらったという事か。



「ジョルジュ・・・す、すまない・・・俺が・・・俺がもっと速く・・・・・」


歯を食いしばって、大粒の涙をこぼす友を見て、俺はかろうじて感覚の残っている右手を伸ばした。

震えてうまく動かせないが、ウィッカーの目元を指先で拭ってやった。


「ジョ・・・ジョルジュ・・・う・・・あぁぁぁぁぁ・・・・・・・」


泣くな・・・・・俺は、満足している・・・・・こうして、僅かな時間でも、お前に会えた。



「ウィ・・・カー・・・・・お、れを・・・・う、うめて・・・くれ・・・ジャ、ニ・・スに・・・見せない・・・で、くれ・・・・・」


「ジョルジュ・・・・・い、いいのか?」


かすれた声だった。まともに話せたか分からないが、ウィッカーは俺の意図を理解してくれたようだ。



いいんだ。今の自分がどんな姿か想像はつく。

ジャニスには見せたくない。あいつは・・・あれで繊細だからな・・・・・



「か・・・風は、のこ、す・・・・・」



うまくできたか分からないが、最後に笑って見せた



「ジョル、ジュ・・・・・う・・・くっ・・・・・・あぁぁぁぁぁぁーーーーーーーッ!」



自分のために泣いてくれる友がいる


いいものだな・・・・・孤独に逝くのではない

最後に温もりを感じる事ができた





「ウィッカー、ありがとう」





史上最強の弓使い ジョルジュ・ワーリントンは、微笑みを残して目を閉じた




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