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【852 たどり着いた先で】

数キロ先で、突如巨大な魔力が感じられた。

これだけの距離があっても、激しく体を打ち付けて来る魔力の圧は、以前戦った帝国の師団長にさえ匹敵する程の魔力だった。


そしてその魔力を感じ取った直後、大爆発が起きた。

眼もくらむ程の強烈な光と、耳をつんざく轟音が駆け抜ける。足場を揺るがす凄まじい振動に足が取られそうになり、爆風に吹き飛ばされそうになる。


「ぐ、ぬぉぉぉぉぉーーーッ!」


身体を揺さぶられながらも、ブレンダンは魔力を発し、軍全体を覆う青く輝く結界を張る。

風を伏せぎ体勢を保つ事ができた。


「師匠・・・今のは・・・」


黒魔法使いのウィッカーには一目で分かった。だが、声に出さずにはいられなかった。


「・・・光源爆裂弾じゃろう・・・ジョルジュかエリンか・・・二人一緒にか・・・いずれにしろ、幹部クラスと戦闘になり、敵の黒魔法使いが撃ったんじゃ。これほどの威力・・・果たして・・・・・」


最後まで言わずとも分かった。

ジョルジュは今風が使えない。そしてこれほどの威力の光源爆裂弾を受けて、身を護る術があるとは思えない。ジョルジュかエリンか、もしくは二人ともか・・・いずれにしろ無事でいる可能性は低いだろう。





「・・・エリン・・・」


胸に感じた冷たい風に、私は爆発地帯から目を離せなかった。

濛々(もうもう)と黒く太く、そして大きな煙が空を埋める。爆風もまだ治まらない。石と土が勢いよく飛んできて、結界にぶつかっては弾かれいく。


嫌な予感がした。


エリンはジョルジュ様の補佐で行ったが、おそらくこの魔法使いと戦ったのはエリンだ。

なぜなら、巨槍の敵とジョルジュ様を戦わせるためには、エリンが残る必要があるからだ。

ブレンダン様の魔力が切れるまでに、巨槍の敵を倒すという時間制限がある以上、足止めをくらうわけにはいかない。


エリンの性格を考えれば、自分一人で戦い、ジョルジュ様は先に行かせようとするだろう。



エリン・・・あんた・・・・・



無事でいると信じたい。

だけどこの胸に感じる、どうしようもない喪失感が私に教えている。


エリンはおそらくこの魔法使いを倒した。自分の命を懸けて・・・・・



「・・・エリン、あんた・・・・・」


それ以上の言葉は口にしなかった。できなかった。


ヤヨイさんもルチルも・・・エリン、あんたまで・・・・・


私一人だけ残ってしまった。


・・・大剣を握る手に力が入る。


「私の大切な人は・・・みんな先にいっちゃった・・・・・」


きつく強く目を閉じた。

叫びたい気持ちに無理やり蓋をする。ここは戦場だ。そして私は剣士隊の隊長だ。

私の後ろには、何万人もの兵士がいるんだ。最後まで冷静でなければならない。


左腕に付けている綺麗な円状の盾をそっと撫でる。

全てを受け流す最強の盾、流水の盾だ。


・・・ドミニク隊長、私は成し遂げます。カエストゥスを勝利に導いてみせます。


心の中で決意と覚悟を伝え、私は目を開ける。そして一歩前に出て、先頭に立つ二人へ声をかけた。



「ウィッカー様、ブレンダン様、行きましょう。ジョルジュ様とエリンのためにも、立ち止まっている暇はありません」







帝国の首都ベアナクールには、民間人の姿はどこにも見えなかった。

建物の中にも気配は感じられない。


俺達カエストゥスの進軍に備え、あらかじめ避難させていたという事か?

だとすれば随分とお優しい事だ。師団長が壊滅している以上、一人でも多くの兵力がほしいだろうに、徴兵しないとはな。

噂通り、帝国は国民に対し相当寛大で慈悲深いようだ。


「だが、それだけに許す事ができん」


なぜその心を他国にも持ってやれん?侵略戦争など起こさなければ、誰も涙を流さずにすむ。

歪んだ正義感をかざす帝国に、俺は心底辟易した。


この国とは一生分かり合えん。



弓を背に、俺は視線の先に見える城を目指して駆けた。

ここまで数発の槍が飛んで来たが、もはや速さにもパワーにも慣れていた。

この巨槍は、大きく上に跳んで躱す事が最も理にかなっている。

後方を気にせず、俺一人ならばもはや脅威でもなんでもない。



そしてあの大爆発・・・おそらくあの黒魔法使いが撃ったのは、光源爆裂弾だ。

エリン・・・・・お前が作ってくれた時間、決して無駄にはしない。

一秒でも早く、この敵を倒して見せる!



そして走り抜けた先、帝国の城を囲む城壁の前に並び立つ兵士達の先頭には、黒い肌の大男が腕を組み、威風堂々と立っていた。


「・・・なるほど、一目で分かるな。貴様がワイルダーとやらか?でかいじゃないか」


爪先から頭のてっぺんに視線を送り、見たままの感想を口にする。



「いかにも。俺の槍を潜り抜け、ここまで一人で辿りついた貴様は、俺の前に立つ資格はあるようだ。

敬意を表して名乗ろう。俺はデズモンデイ・ワイルダー。帝国の黒き破壊王とも呼ばれている」


ワイルダーは汲んでいた腕を下ろすと、肩と首を鳴らし一歩前に出た。

たったそれだけの動作だが、それだけで俺の身体を強く押すような、強烈なプレッシャーがぶつけられる。



「・・・俺はジョルジュ・ワーリントン。今日、ここでお前を葬る者だ」



強い。この男は俺の人生で、過去に比べる者がいない程の男だ。

厳しい戦いになるだろう。だが、何としても勝たねばならん。


背中の弓を取って構えた。


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