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830 復帰

8月に入って十日が過ぎた日の午後、俺はメインレジに立って防具のメンテをしていた。


各部門で専用のレジはあるけど、出入り口の横には買い取りカウンターと会計レジを設置している。

店内を全部見回って、買う物が全て決まってから会計をする人が多いから、このレジを利用するお客が一番多い。そのためメインレジと呼んでいる。



「おいおいおい!アラやん!レイチーが帰ってきたぞ!」


興奮した様子のジャレットさんが、急ぎ足でメインレジに入って来た。


「え?レイチェルが目を覚ましたって、この前聞きましたけど?」


なんだかちょっと前にもこんな事があったなと思い、作業の手を止めて言葉を返す。

レイチェルが目を覚ましたって話しはこの前聞いたけど、なんでまた同じ話しをするんだ?



「・・・・・はぁ!?なに寝ぼけてんだよ!帰ってきたんだよ!レイチェルが帰ってきたの!今事務所にいんぞ!さっさと行ってこい!」


思い切り眉間にシワを寄せて俺を睨んでくる。

一瞬遅れて、俺はようやくジャレットさんの言葉を理解した。



「・・・・・え!?・・・・・えぇぇぇーーーーーっつ!?」



耳の穴かっぽじっておけ!と軽く頭をはたかれながらも、俺はレジ当番を代わってくれたジャレットさんにお礼を言って、事務所に急いだ。






事務所のドアを開けると、沢山の笑い声が耳に飛び込んで来た。

その原因は部屋の真ん中でみんなに囲まれた、赤い髪の女性、レイチェルだ。


本当に戻って来たんだ。カチュアもシルヴィアさんも、みんなが笑顔でレイチェルと話している。


リカルドもレイチェルに何か話しかけているが、右手に袋入りのクッキーを持っているのがどうしても目につく。テーブルに置けばいいのに、誰かにとられるとでも思っているのだろうか?

いや、ユーリが冷たく睨んでいるのを見ると、あのクッキーは元々ユーリの物の可能性が高い。

一つくれと言って、全部自分で食う気か?こいつは本当にブレない。



「・・・お!?アラタ!久しぶりだな。この前はお見舞いありがとう。おかげさまでこの通り回復したよ」


俺に気付いたレイチェルが、右手を挙げて声をかけてくれる。

いつも通りのさっぱりとした話し方に、レイチェルらしさを感じる。


「・・・レイチェル、良かった・・・元気になったんだな!」


エルウィンから話しを聞いた翌日、みんなでシフトを調整して、レイチェルのお見舞いに行って来た。

その時はしばらく寝ていたからか、少し痩せたようにも見えたし、レイチェルも少しダルいとは言っていた。けれど今は顔色も良く見えるし、みんなと笑って話しているところを見ると、ちゃんと回復できたようだ。



「・・・少し、髪伸びた?」


「おや?キミもそういうところに気が付くんだな?」


レイチェルは前髪を摘まんで、そろそろ切るか、と呟いた。


「そう言えば、俺もぼちぼちかな」


ふと、自分もだいぶ髪が伸びてきたなと思い、手櫛を入れて見た。


「アラタもだいぶ伸びてきたな?よし、また私が切って・・・あ、カチュア、アラタの髪だが、私が切ってもいいかい?前に言ったと思うけど、最初にアラタがこっちに来た時、私が髪を切ったんだよ。いやいや、あの時のアラタはもっさりしてたなぁ~」


「あははは!そう言えばそんな事言ってたね。アラタ君、目が隠れるくらい前髪長かったって!今じゃ全然想像できないよ」


レイチェルとカチュアが意気投合して笑っている。

思い返すと日本にいた頃は、髪を切りにいくのも面倒くさくて、伸ばしっぱなしにしていたんだった。


「レイチェル、じゃあお願いしていいかな?私よりレイチェルの方が上手だし」


「うん、じゃあアラタ、そういう事だから明日にでも切らせてもらうよ。前と同じく短くスッキリでいいね?」


俺の意見を聞かずに髪型まで決まっていくが、なんだかこの感じ、いつものレイジェスだなって感じがする。


「おや?アラタ、ニヤニヤしてどうした?気持ち悪いぞ」


「え!?い、いや、気持ち悪いってひどいな!こ、これはその・・・店がいつもの雰囲気になったから・・・ちょっとその・・・」


いつの間にか表情が緩んでいたようで、レイチェルは俺を訝し気に見る。


「・・・私が復帰した事を喜んでくれている・・・って事かい?」


「あ~・・・面と向かってだと照れる・・・けど、うん、そりゃそうだよ。レイチェルがいないと、なんかレイジェスって感じがしない」


さすがに目を見て言うのは恥ずかしいので、少し視線を逸らすと、レイチェルはそんな俺を見て優しく笑った。


「ふっ・・・まったくキミッてヤツは・・・嬉しい事言ってくれるじゃないか。アラタ、またよろしくな」


「ん、ああ、また今日からよろしくな、レイチェル」



レイチェルが右手を顔の高さに挙げる。

俺はその手に合わせるように、パシッと軽く打ち合わせた。


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