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787 援護

誤字を見つけたので訂正しました。内容に変更はありません。

「止まって!アラタ、あれ見て!」


暴徒を制圧しながら進んで行くと、隣を走るケイトが俺の肩を掴んで止めた。

ケイトの指が差す方向に目を向けて、止められた理由をすぐに理解した。


建物が陰になり見えづらいが、時折炎が空に向かって噴出しているのだ。

暴徒かもしれないが、仲間の誰かが戦っている可能性が高い。


「ケイト、エルウィン、行くぞ!」


「うん!」


「はい!」


両脇に立つ二人に声をかけると、すでにそのつもりだったようだ。

ケイトとエルウィンは二つ返事で頷いた。





「フッ!」


短く、しかし鋭く呼吸を吐き出し、弓を弾く。

この瞬間の集中力は、周り全ての音が聞こえなくなり、まるで世界に自分一人だけと感じられる程、極限に圧縮されたものだった。


標的までの距離は目算でおよそ10メートル。

放たれた鉄の矢は、瞬き程の一瞬でその眉間を貫く事が可能である。


しかし・・・


「ふん、無駄な事を」


リカルドの放った鉄の矢は、ジャームール・ディーロが身に纏う炎の竜によって、一瞬にして焼き払われてしまった。

高速で迫る矢を、空中で一瞬にして焼き払う火力に、リカリドは憎々しい顔で舌を打つ。


「チッ、この野郎、面倒くせぇな!」


正確無比な狙いであっても、当たらなければ意味がない。

そしてジャームールの灼炎竜の前では、鉄の矢は無力だった。

リカルドは矢筒の中のとっておきに手をかけた。


魔道具 大地の矢。

シャフト(軸)は樹でできているが、土の精霊の加護を受けたこの矢ならば、灼炎竜の炎とて耐えられるだろう。


四勇士ライース・フィゲロアと戦った時、決め手の一つにもなったリカルドの切り札だった。


「・・・これしかねぇか」


早々に手の内を晒す事に懸念がないわけではなかったが、鉄の矢が通じず、体術も使えないのであれば、残った手はこれしかないというのが現実だった。



「骨さえ残らんように焼き尽くしてやろう」


ジャームールはリカルドに左手を向けると、その体を纏う炎の竜が、リカルドを標的に狙いを付けて大口を開ける。


「リカルド、私にまかせて。あなたは灼炎竜の隙を狙うのよ」


リカルドが大地の矢に手をかけた時、シルヴィアはリカルドを庇うように前に出た。


「シルヴィア!なにして・・・!」


自分の前に、つまり灼炎竜の前に立ったシルヴィアに、危険だと告げるように声を尖らせて叫ぶと、シルヴィアは顔を僅かに振り向けて微笑んで見せた。


・・・大丈夫。心配いらない。そう告げるように。



シルヴィアはジャームールの灼炎竜と、リカルドの射線上に立つと、右手をジャームールに向けて構えた。全身から発する魔力は冷気を帯びており、シルヴィアの周囲は凍てついた空気で極寒と化していた。


「ほぉ・・・女、なかなか大した魔力だ。その冷気で俺の灼炎竜に挑んでみるか?」


ジャームールの左手の炎の竜は、魔力を注ぐほどに大きさを増していった。

それは正面に立ち、冷気の魔力を自分に向けている女を、丸呑みできる程である。


「ええ、私氷魔法が得意なの。あなたの灼炎竜なんてカチカチに固めてあげるわ」


シルヴィアの魔力が氷の竜を形作る。

氷の竜はシルヴィアの前の標的を、今にも食わんと顎を大きく開けた。


それは灼炎竜と対を成し、永久凍土のはらわたに獲物を封じる氷の竜。



「消し炭となれ!灼炎竜!」


「氷漬けになるがいいわ!竜氷縛!」



炎と氷の竜がぶつかり合う。

それによって起きた爆発は、凄まじいまでの白い煙、辺り一面が見えなくなる程の水蒸気を噴出した。



「ほぉ・・・やるな、俺の灼炎竜をよく止めた」


自分の灼炎竜が止められた事が予想外だったのだろう。ジャームールは眉をピクリと上げ、やや硬い口調で言葉を発した。


「言ったでしょ・・・私、氷魔法が、得意、なのよ」


対するシルヴィアも、言葉には負けん気があり、余裕さえ伺える話し口調だった。

だが、ぶつかり合う衝撃に耐えるように大地を踏みしめ、唇を噛み締める様子は、相当な魔力を振り絞って持ちこたえている事が明白だった。


「ふん、その様子では長くは持たないだろが、俺もここであまり時間はかけていられん。押し切らせてもら・・・ぐぅっ!」


ジャームールの発する魔力が一段強さを増すと、それに呼応し炎の竜もより強く大きくなった。

そしてシルヴィアの氷の竜を飲みこまんと大口をあけたその時、突然胸に強い衝撃受け、ジャームールはその体を後方に吹き飛ばされた。



「え・・・?」


突然の事に一瞬状況が理解できなかったシルヴィアだったが、振り返ってすぐに分かった。


「ふぅー・・・危なかったね、シルヴィア」


「ケイト!」


そこには頼もしい援軍の姿があった。

右手で黒の鍔付きキャップを摘み、左手の人差し指を向けたケイトが、ニカっと笑って立っていた。



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