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767 加勢

「オォォォォォー--ッツ!」


アルバレスの攻撃は息を付かせる間もなく繰り出された。

だが、そのことごとくを黒マントの女は防ぎ、捌ききって見せる。


顔に真っすぐ突き出される拳を得物の腹で受けながし、膝を狙った右の蹴りを後ろに飛んで躱す。

離れたところを飛びかかられ、両手で押さえ付けられそうになるが、カウンターで顔面目掛けて薙刀の刃を突き出す。アルバレスが首を捻り躱すと、その一瞬の隙にさらに後方に飛んで距離を取る。


「フッ、さすがの身のこなしだ。だが、いつまでも躱しきれると思うなよ!」


アルバレスはいくら攻撃を避けられても、決して気持ちを乱す事は無かった。

苛立ちは攻撃の精細さを欠き、分を悪くするだけだと知っているからである。

大柄な体躯をしているため、腕力にまかせた攻撃が得意なのだろうと見られがちだが、見た目に反してアルバレスはクレバーな男だった。




「フン・・・」


鼻で笑って見せる。黒マントの女もまた冷静だった。


息つく暇さえ与えぬアルバレスの猛攻。その狙いは十分に理解していた。

当たらぬのならば、当たるまで攻め続ける。それがアルバレスの策である。


全力で拳を振るい、全力で蹴りつけるアルバレスに対して、神経を研ぎ澄ませ回避に徹する。


図らずともアルバレスの目論見通り、体力勝負に持ち込まれていた。


無尽蔵の体力を見せるアルバレスの攻撃は止む事がなく、黒マントの女も体力の消耗を抑えるため、最小の動きで躱し続けている。


このままいけば持久戦になるだろう。そう思われた時だった。



「なっ!?これは!?」


突然黒マントの女の周囲に霧が立ち込み出した。それは伸ばした手の先さえも見えない程に濃く、女の視界は完全に防がれる形になった。


予想だにしない事態に、アルバレスへ向けていた意識が僅かに途切れる。

レベル差のある相手ならばそれでも挽回できた。だが、一瞬たりとも気を抜いてはいけない実力が拮抗した相手、帝国軍師団長のザビル・アルバレスを前にした時、それは致命的だった。


「ウラァァァァァー--ッツ!」


雄たけびと共に霧を突き破り、鋼鉄の拳が黒マントの女の顔面を目掛けて迫りくる!


「くっ!」


躱せない!

覚悟を決めたその時、場の緊迫感に似合わない軽い調子の声が割って入った。


「ぃよっとー--っつ!」


突如横から現れた緑色の髪の小柄な男は、今まさに女の顔を撃ち抜かんとした拳を蹴り飛ばした。


「なにィッ!?」


拳の軌道を変えられたアルバレスは、態勢を崩して前のめりになり、霧の中からその姿を現す。


「オラよ!」


緑色の髪の男はすかさず右足で地面を蹴って飛び上がると、体を左に一回転させ、鞭のようにしなりを付けて、右の回し蹴りをアルバレスの顔面にたたき込んだ!


緑色の髪の男、リカルドの不意打ちはここまでは完璧だった。


だが、右の回し蹴りをたたき込んだ瞬間、リカルドはその足が感じた想像だにしない感触に、驚きを隠す事ができなかった。


「・・・え?」


鼻の骨を砕くつもりで放った全力の一蹴りだった。

小柄なリカルドは体術を使用する際、相手との体格さを埋めるために、体全体を使った技を駆使して体重差を埋めている。


遠目にもアルバレスが、自分よりはるかに大きい事は分かった。

身長では30cm以上、体重にいたっては倍以上あるだろう。


だからこそ、最初の一手に全力を注ぎこむと決めていた。

そして理想的なまでに完璧に決まった回し蹴りは、リカルドのイメージでは鼻を潰されたアルバレスが、背中から地面に倒れるというものだった。


だが・・・・・


「・・・何者かは知らんが、よくも邪魔をしてくれたな?覚悟はできているだろうな」


「う、そ・・・だろ?」


リカルドの足に伝わった感触は、破壊する事なんて考えもできない巨大な一枚岩を蹴りつけたような、厚く硬く重いものだった。


そしてアルバレスの顔から足が離れたその時、ギラリとした殺気を込めた視線がリカルドを射抜いた。

全力の蹴りを叩きつけてもダメージを与えられず、まともに殺気を浴びせられ、動揺して足を止めてしまったところに、アルバレスが拳を撃ち放った。




「・・・また、邪魔者か」


「・・・ふぅ・・・間に合ったな」


アルバレスの拳はリカルドの前に立った黒髪黒目の男、アラタが両手の平を重ね合わせて、受け止めていた。


「俺の拳を止めるとはな・・・貴様、何者だ?」


リカルドよりは体格が勝っていると言っても、身長2メートル近くあるアルバレスに比べれば、175cm程度のアラタとは依然として大きな過ぎる差があった。

しかしこれだけ体格にハンデがあるにも関わらず、アラタはアルバレスの一撃を正面から受け止めて見せた。それがアルバレスの興味を刺激した。


「坂木新、この店の従業員だ」


アルバレスの拳を両手で受け止めたまま言葉を返すが、その返事はアルバレスにとって、軽んじられた発言と捕えられた。


「・・・ふざけた事を・・・クインズベリーの治安部隊か何かだと思えば、この店の従業員だと?馬鹿にしてくれるな!」


一喝してアルバレスは、アラタの腹を狙い左の前蹴りを放つが、アラタは体を回して難なく回避しそのままアルバレスの懐に入り込んだ。


「遅いな」

「なっ!?」


バリオスとの訓練で、嫌という程蹴りを受け続けたアラタにとって、蹴りはもはや弱点ではなくなっていた。


蹴りを躱してから懐に入り込むまでの、流れるようなアラタの一連の動きにアルバレスが目を開いたその時、アラタの右拳がアルバレスの顎を打ち抜いた。



「店長の蹴りはお前の十倍は鋭いぞ」



高々と顎を跳ね上げられたアルバレスの口から、真っ赤な血が飛び散った。


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