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703 食事の後

「アラタ」


「あ、ユーリ」


リカルドがなんで食べ物を買って来ない?と、ブツブツ文句を言ってアラタから離れると、入れ代わりでユーリが声をかけて来た。ラベンダー色のパーカーに、黒いチノパンを合わせている。

ユーリはパーカーが多い。アラタは一度理由を聞いた事があるが、ユーリ曰く、ポケットに両手を突っ込めるのが楽で良いらしい。


「おかえり。ちゃんと帰ってきて、安心した。お土産もありがとう」


「あぁ、心配してくれてありがとう」


ユーリはいつになく柔らかい雰囲気で、機嫌が良さそうだった。


「カチュアはいつも心配してた。でも、アラタが絶対に帰って来ると信じてた。色々乗り越えて、少し強くなったみたい」


「うん、俺もそう思うよ。でも俺達がロンズデールに行ってるあいだ、ユーリやみんなが家に泊まったりして一緒にいてくれたんでしょ?それが大きいと思うよ。ユーリ、ありがとうな」


ロンズデールで写しの鏡を使い連絡をとった時、アラタがいない間はユーリ達女性陣が、家に泊まってカチュアと一緒にいると聞いていた。みんなの支えが会ったからこそカチュアは寂しさを感じず笑顔でいられたんだ。

カチュアは本当にみんなに愛されているとアラタは思った。


「ん、じゃあ明日頑張って。アタシはそろそろ寝るから」


小さく手を振って、ユーリは事務所から出て行った。

気が付けば時計の針は22時を過ぎている。冬の営業は夜が短い分、朝が早い。





「アラタ君、私もそろそろ寝るね」


手提げバックを両手で持ったカチュアが、ユーリと入れ代わりで声をかけてきた。


「あ、カチュア。うん、明日も早いし、俺もだんだん寝ようかな」


「男の人達はまた前みたいに、メインレジの前で並んで寝袋で寝るの?」


以前ジャレットがカエストゥスの戦争の歴史を話した時の事だ。

長い話しだったため全員が店に泊る事になり、男達は通路に並んで寝袋で寝たのだった。


「あはは、うん、そうなると思うよ。ミゼルさん達さっき寝袋取って来るって言ってたし、メインレジ前の通路って、寝るのに丁度いい広さなんだよ」


「あははは、面白いね。私達はお泊り用にマットと掛け布団用意してあるんだよ。暗くなってお店に泊るのって、実はけっこうあるんだよね。寝袋も良いと思うけど、男の人達もちゃんと布団用意した方が寝やすいと思うよ。アラタ君、今日は別々だけど、また明日から一緒に暮らせるね。私、すごく嬉しい!」


ニコリと笑って真っすぐに気持ちを伝えて来るカチュアに、アラタは胸がドキッと高鳴った。


「じゃあ、ユーリ達が待ってるから私行くね。おやすみなさい」


「うん、じゃあまた明日ね。おやすみ」


事務所から開かれたドアの向こうでは、ユーリ、シルヴィア、ケイト、レイチェル、そしてサリーが楽しそう笑い合いながら立っていた。



カチュアが手を振りながら事務所を出て行くのを見送ると、ジャレットがアラタの肩を抱え込むように腕を乗せて来た。


「うわっ!」


突然肩を組まれ驚きの声を上げるが、ジャレットはまったく気にもかけずに、一人で話し出した。


「おっし、アラやん!明日も早いんだ。さっさと寝ようぜ」


「あ、はい、寝袋取ってきます」


「モグモグ、あ、兄ちゃん、モグモグ、俺のも取ってきてな」


「え!?お前、まだ食ってたのかよ!?」


作り過ぎて残ったおにぎりを黙々と食べていたリカルドが、挨拶するような気安さで手を上げると、アラタはギョッとして顔を向けた。





「アラタ、となりいいかい?」


発光石を消して、月明りの優しい光だけが差し込む店内。

メインレジの前に各々が寝袋を並べていると、ジーンが声をかけて来た。


「あ、ジーン、もちろん」


アラタが端によって場所を空けると、ジーンが手にした寝袋を置いて腰を下ろした。


「アラタ、無事に帰ってきて良かったよ。ロンズデールでは大変だったね」


ジーンの隣に座ると、アラタは少し笑って話しだした。


「あぁ、本当に大変だったよ。まさかこの世界に来て、拳で鮫と戦う事になるとは思わなかったぜ」


「あはは、ビリージョーさんも言ってたけど、本当に鮫と拳だけで戦ったんだね?僕は実物は見た事ないけど、生物の本で鮫の絵なら見た事はあるよ。大きいのなら4~5メートルはあるんでしょ?よくあんなの殴ったね?」


「あぁ、日本じゃ誰も信じてくれないだろうな。俺も自分でびっくりだよ。それでな・・・」



ジーンとアラタの話しに、周りで横になっていたジャレット達も自然と入ってくる。


「まったく、みんなムチャしてたんだな」


「本当だよ。けど、鮫料理ってそんなに美味いんだ?ビリージョーさん、今度ナック村行ったら作ってくださいよ」


ミゼルが話しを向けるとビリージョーは、いつでも遊びに来いよ、と軽い調子で答える。


「私はいらんぞ。私に牙を剥いた生き物など食べる気にはならん」


「おいおいバルデス、そんなの気にしないでいいんじゃないか?」


ビリージョーがなだめるように声をかけるが、バルデスはまったく聞き耳を持たずに、いらない、の一点張りだった。


「まぁまぁ、そのくらいで。誰だって、食べられない物の一つや二つありますよ」


「え?ジーン、なに言ってんだ?俺はねぇぞ」


「え?いや、リカルドは別だよね?」


「え?なんで?」


ジーンが間に入って話しを落ち着かせようとしたところで、リカルドが口を挟んで来たが、大食いで好き嫌いが無いリカルドにはまるで話しが通じなかった。


そうして世話話しをしているうちに夜も更けていき、一人、また一人と眠りにつき、やがて誰の声も聞こえなくなった。


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