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70 告白

どこまでも続く闇の穴に落ちていく・・・


苦しさは薄れていくが、まるで自分の体が消えて無くなっていくような恐怖感があった・・・


この感覚は一度感じた事がある・・・


そう・・・これは死だ・・・


体と心が切り離され、自分の意識が深い闇の中に引きずり込まれていく・・・


嫌だ・・・俺はまだ・・・死ねない・・・


抗おうとしても闇にとらわれた体は思うように動かせない・・・このまま・・闇に・・・



誰かが呼ぶ声が聞こえる・・・



それは一番聞きたかった人の声だった・・・


闇に光が差し込み、力強く手を引いてくれる・・・


光が溢れた・・・



「アラタ君!」


「・・・カチュ・・ア・・・」


最初に目に入ったのは、泣き顔のカチュアだった。


「ここは?・・・」


体を起こそうとすると、カチュアが抱き着いてきて、再び倒れてしまった。


突然周りから大歓声が上がる。回りを見ると、なぜか治安部隊の隊員達に囲まれている。通路の端まで大勢だ。そして、皆笑顔で俺を見ている。中には目に涙を浮かべている人もいた。


少し離れてエルウィンを見つけた。その隣にはフェンテスが壁に背を預けて目を閉じていた。

エルウィンも俺を見て涙を流しているが、その表情は喜んでいるように見えた。



「アラタ君・・・良かった・・・良かったよぉ・・・う・・・うぅ・・・ぐす・・・」


「俺・・・生きてるんだ・・・カチュア・・・ごめん・・・本当にごめん・・・」


左手をカチュアの背中に回し、右手で頭を撫でた。


「また、泣かせちゃったな・・・ごめん・・・」


カチュアは首を横に振った。嗚咽も止んで、少し落ち着いてきたようだ。


「カチュア・・・助けてくれてありがとう・・・」


「・・・お母さんが・・・お母さんが、アラタ君を助けてくれたの・・・」


「お母さん?」


体を起こそうとすると、カチュアも腕を離して体を起こした。


「うん・・・あのね、そのネックレス・・・私が小さい時、お母さんがくれたの・・・お守りだよって。それから少しして、お母さん亡くなって・・・でも、さっきお母さんに会ったの、ここにいたんだよ・・・アラタ君はもう大丈夫って言ってくれて・・・私のヒールでは駄目だったの・・・」


俺はネックレスを手に取った。透明感のある石が付いていたはずだったが、粉々に割れて、僅かな破片が付いているだけだった。


「・・・アラタ君が助かってよかった・・・」


カチュアはネックレスを持つ俺の手をそっと握って、少しだけ首を振った。

俺が割れた石を見ている事に気づき、気にしないように気遣ってくれたのだろう。


「・・・そんなに大事なネックレス・・・俺のために・・・」


カチュアのお母さんの形見だったんだ。そんな大切な物を俺のために・・・



「命の石・・・めったに見れないものよ」



聞き覚えのある声に、顔を向けると、懐かしい顔ぶれが揃っていた。


「・・・みんな」


ジャレットさん、ミゼルさん、シルヴィアさん、ジーン、リカルド、ユーリ・・・


レイジェスの皆がいた。来てくれたんだ・・・


「おかえりなさい・・・アラタ君。大変だったわね・・・」


シルヴィアさんは俺の前に腰を下ろすと、俺の首に下がっているネックレスに目を向けた。


「これはね、命の石と言って、身に着けている人の命が消える時、代わりに砕けてくれる石なの・・・でも、本来はアラタ君が身に着けていても、何の効果も出なかったはずよ。だって、カチュアのお母さんが、カチュアのために作った石だから・・・想い人以外では、何の効果も無い石なの・・・」


シルヴィアさんはカチュアに顔を向けると、静かに話を続けた。


「カチュア・・・この石はね、白魔法使いが、その命を削って作る物なの・・・ギリギリまでね・・・だから、一生に一個しか作れないの。あなたのために、お母さんが命を削って作った本当のお守りだったの・・・その事、カチュアは知らなかったでしょ?」


自分の母が、自分のために命を削ったという事実に、カチュアはショックを隠し切れなかった。

下を向き、何も言葉を発せずにいる。


「カチュア・・・ごめんなさい。あなたを傷つけるつもりはないの・・・でも、あなたは知らなければならないわ。だって・・・この石はあなたのお母さんの命そのものだから・・・それがどれほどのものか・・・」


シルヴィアさんの話に、周りの誰も口を開けなかった。


「アラタ君・・・本来カチュアになにかあった時にしか効果の出ない命の石が、アラタ君のために効果を発揮した・・・カチュアのお母さんが、あなたにカチュアを託したのよ・・・アラタ君、その想い・・・忘れないでね・・・・・」


シルヴィアさんの瞳からは、涙が一滴頬を伝い落ちた。

唇を結び、眉を寄せるその表情は、痛みと悲しみに耐えているようだった。



「私も・・・命の石で、生き永らえたから・・・子供を想う母の気持ちが、どれほどの・・・ものか・・・よく分かる・・・から・・・」



シルヴィアさんはそれだけ言葉にすると立ち上がり、ごめんなさい、と呟き離れ、背中を向けてしまった。

両手で顔を覆い、その身を震わせている。


ジャレットさんは何も言わず、シルヴィアさんの前に立った。まるで泣いているところを見せないようにするために。



「・・・カチュア」


「・・・うん」


カチュアはショックが大きく、下を向いたまま、小さく返事を返すだけだった。

当然だと思う。自分の母親が命を削り作った、文字通り、命の石、なのだ。


カチュアの母が、なぜこの石を作ったのかは分からない。だが、カチュアは自分のために母が命を失ったと思っているのだろう。責任、罪悪感、様々な感情で心を痛めている。


「あのさ、カチュア、俺を見てくれないかな・・・伝えたい事があるんだ」


カチュアはゆっくりと顔を上げた

辛い事実に打ちひしがれ、その瞳は色を失っているようだった。



「俺、カチュアが好きだよ」


カチュアは小さく息を呑んだ。表情に驚きが生まれ、俺をじっと見つめる。


「ごめん・・・今言うべき事じゃないかもしれない。本当はこの戦いが終わったら伝えようと思ってたんだ・・・でも、この石の話を聞いて、今、この瞬間の気持ちをちゃんと言葉にしなきゃって思った。

俺、カチュアが好きだよ。カチュアのお母さんが、俺にカチュアを託してくれたのなら、お母さんの分もカチュアを守りたい思う。カチュア・・・この先の人生、俺とずっと一緒に生きてほしい。命の石が無くても・・・俺がカチュアを一生守るから!」



カチュアの瞳にすこしづつ色が戻ると、涙が溢れ零れ落ちた。



「・・・嬉しい。でも、私泣き虫だから・・・アラタ君、いっぱい困らせちゃうよ・・・」


「いいよ。俺も泣く事あるからお互い様だよ」


「私でいいの?・・・アラタ君に、甘えてばかりで・・・面倒だよ・・・」


「カチュアがいいんだよ」


「私・・・」

「カチュア、今のままのカチュアが好きなんだよ」



「・・・はい・・・私も・・・アラタ君が大好きです。ずっと・・・一緒にいたいです・・・」

涙でぐしゃぐしゃだったけど、悲しい涙ではなかった。


カチュアを抱き寄せると、周りから拍手と歓声が起こった。



「兄ちゃん!?それ、プロポーズだよな!?すげーな!やっぱ兄ちゃんは面白れぇよ!」


「アラやん!ぱねぇなオイ!俺を超える気か!」


「アラタ、男らしいじゃねぇか!おめでとう!」


「アラタはすごいな、交際を飛ばしてプロポーズなんて初めてみたよ」


「よく言ったわアラタ君。カチュアを守ってあげてね」


「アラタ・・・いきなりプロポーズなんて、アタシの想像を超えている」


「ア、アラタさんはやっぱり最高だ!超カッケー!」


レイジェスのみんなとエルウィンが寄って来て、もみくちゃにされる。



周りで見ていた隊員達も大きな拍手をくれた。口笛まで鳴らす人もいた。皆一様に、おめでとう、と祝福の言葉をかけてくれる。



最初はシンプルな言葉で考えていたが、話しているうちにどんどんカチュアへの気持ちが大きくなっていって、自分で伝えられる最大の気持ちを言葉にしていた。


ジャレットさんに肩を組まれ、ミゼルさんにも反対側から肩を組まれ、リカルドになぜか頭を叩かれ、いつもクールなジーンまで笑って俺の背中を叩いている。エルウィンは感動して、俺の前で涙を流し、最高、カッケーと連呼している。



カチュアに目を向けると、シルヴィアさんとユーリがニコニコしながら、カチュアになにか言葉をかけている。


よかったね、おめでとう、絶対幸せになれるよ、という声が聞こえてきた。


カチュアはまだ涙を流しているが、表情はとても柔らかく、幸せそうな笑顔を見せている。



ちゃんと気持ちを伝えて良かった。

カチュアの笑顔を見ていると心からそう思う。



もう一度、首から下げられたカチュアのネックレスを持った。


・・・この命・・・大事にします。絶対に、カチュアを幸せにします・・・

カチュアの母へ、言葉では言い尽くせない感謝を込めた。



そして俺は立ち上がった。

順番が前後したが、大切な人を守るために・・・もう一度戻らなければならない。


命の石は、俺の中に眠る力も引き出してくれたようだ。

おそらくこれがマルゴンの拘っていた力なのだろう・・・


行こう・・・この戦いに決着をつける。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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