07 思い
8/27 読み返したら見づらいと思いましたので、改行だけやり直しました。
内容に変更はありません。
今出勤しているのはレイチェルを含め、青魔法使いのジーン、武器担当のリカルド、白魔法使いのカチュア、黒魔法使いのミゼルの5人のようだ。
他にも従業員はいるが、まだ出勤していないそうだ。
開店時間は決まっているし、オープンに合わせて時間帯責任者は必ずいるようにしているらしいけど、そうでない従業員は、出勤時間がまちまちになったりする事がよくあるらしい。
五分前行動を当たり前に生きて来た日本人の俺からすれば、それで大丈夫なのか?と心配になるけど、そこは日本と異世界の文化の違いもあるのだろう。
地球でも国によってはバスや電車の遅れが当たり前にあったりするし、外国に来たという感覚を持ったほうがいいのかもしれない。
そしてこの世界にも時計はあるようで、時間の感覚事態は日本と同じようだ。
けれど前述の通り時間に関しては寛容で、日本人と違って5分、10分の遅刻では咎められない。
日本人は働き過ぎと言われているが、心の余裕も無くなっている人が多いのかもしれない。
一通り店内を案内してもらった後、俺とレイチェルは事務所内のテーブルで向かい合っていた。
会議室に置いてあるような、幅が広くて横に長いテーブルだ。
見回してみると事務所内は簡素だった。
一応ロッカーはあるけど、ホームセンターで売っているカラーボックスのような物で扉は無い。
小学生の時の、ランドセルを入れるロッカーを思い出した。
弁当や着替え程度ならともかく、貴重品は置いて大丈夫か?と心配になる。信用だろうか?
「レイチェルの担当は何なんだ?」
店内を見た印象や、仕事内容について話しを聞いた後、俺からの質問になった。
「ん、私かい?私は武器の担当だよ。主に剣とかナイフの接近戦用を見てる。弓はリカルドが専門なんだ。私も分からないわけではないけど、弓はリカルドに敵わないからね」
「そうなのか?同じ部門でも更に分けて担当したりするんだ?」
「そうだね。基本的に同じ部門に2人担当いるんだ。もちろんみんな担当部門の商品は全部分かるけど、やっぱり種類が多いからね。得意不得意は出てくるよ。だから詳しい方に任せるようになるかな」
「なるほど、まぁそれもそうだよな。考えてみると、俺のいたウイニングでもそうだったかな。ところで今日はまだ全部門の担当がいないんだよね?担当がいない時に商品の買い取りが来たらどうなるの?」
「あぁ、そういう時は一旦預かって、後日来てもらうよ。すぐに分かるのもあるけど、時間かかるのも多いからね。2~3日待ってもらうのは普通かな」
なるほど。日本のリサイクルショップでは、その日のうちに査定を済ませる事がほとんどだ。
お客には30分程度待ってもらう事もあるがけど、1日かかるから明日また来てくれなんて話はそうは無い。
俺は1度だけ経験があるけど、それはトラックの荷台に山ほど積まれた、本やら雑貨やら洋服のまとめ売りという止むを得ない話しだ。
とても1日では終わらないから、明日まで待って欲しいと話して1日だけ時間をもらった事がある。
あとは時間の問題以外で考えられるのは、よほどの高級品か、専門的な知識が必要な特殊な商品が来た場合だろう。
レイチェルが話していた通り、ここでは専門の担当が査定を行うのだから、その都合に合わせる事が普通になっているようだ。
考えてみれば、専門の担当が納得のいく説明をして金額を提示すれば、オークションだけ見て、適当に付けられてるんじゃないのか?とか、店員によって値段が違うとか、そういった悪い評判は無さそうに思えるし、お客も安心して売る事ができる良い仕組みだ。
そう感じた事をレイチェルに話すと、レイチェルはニコリと笑って俺の背中を軽く叩いた。
店の方針に共感した事が嬉しかったようだ。
午前中のうちに今いるメンバーの紹介は受けたし、店内も一通り回ったから、少しは店の雰囲気が分かってきた。
客層は悪くない、いやむしろかなり良いと思う。日本のリサイクルショップでは、店内にUFOキャッチャーやゲームコーナーがあるところが多く、柄の悪い若者が騒いでいたりする事がある。そのせいで小さな子供や家族連れが寄り付かなくなる店もあったりする。けれどここにはそもそもゲームが無い。
必要があって来る場所になっているから、だいたいの客がしっかりと商品を見て思案している。
店の入り口で暇潰しにたむろしている連中もいないし、落ち着いた雰囲気の良い店だ。
また、武器や魔道具ばかりかと思いきや、小さな男の子が好きなそうな木刀や、女の子が好きそうなお姫様の人形などもあった。
メインで扱っているのは、武器、防具、魔道具なのだろうが、リサイクルショップという以上、こういう家族層を狙った物も扱っているのだろう。新品もあるけど使用感のある中古もあった。
ふと、5~6才くらいに見える男の子が木刀を持って、両親におねだりをしている姿が目に入った。
父親が腰に剣を携えているところを見ると、その姿に憧れを持っているのだろう。
父親は優しく微笑んで男の子の頭を撫でると、男の子と手を繋いで木刀を持ってレジに歩いて行った。
その隣では、母親もそんな父子を微笑みながら見つめていた。
その光景があまりに美しくて、俺ふいに自分が小さかった頃を思い出した
幼稚園、小学生・・・あの頃は・・・俺がまだこんなふうに自分の殻に閉じこもる前は、俺の両親もこんな風に可愛がってくれていたな・・・・・
いつからだろう、父の顔色を窺うようになったのは・・・
いつからだろう、母が俺に気を使いだしたのは・・・
弟、健太は俺と普通に接していたと思うけど、両親と俺の間に入って、無理をしていたのではないだろうか・・・・・
懐かしさと寂しさ・・・
複雑な気持ちに胸が痛くなった
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。




