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668 闇に包まれた空間で

「くそっ!駄目だ、何も見えない!ガラハドさん!ビリージョーさん!みんなどこだ!」


さっきまでは薄暗いながらも、陽の光は入っていた。

だが今はどうだ?

一筋の光の侵入さえ許されない完全なる暗闇。視界を完全に封じられ、今自分がどこを向いているのかさえ分からない。


「アラタ・・・ここだ・・・」


「ガラハドさん!」


すぐ後ろからかけられた声に振り返ると、誰かが前に立っている気配は感じられる。

それがガラハドだとは察したが、完全なる闇の中ではまるで姿が見えない。

ガラハドもアラタの気配は感じているようだが、やはり目で見えてはいないようだ。

手を伸ばせば届く距離にいる事は分かるが、お互いに視覚に頼れない状況だと理解する。



「ガラハドさん、大丈夫ですか?」


「あぁ、なんとかな・・・動けない程じゃねぇ。ところで、これが闇か?」


少し息が切れてはいるが、話し方などの様子から問題はなさそうだと感じ取り安堵する。


「それなら良かったです。すみません、あと一歩だったんですが、ダリルに逃げられたようです。ヤツは全身から煙幕みたいに闇を出しました。それがこれです」


「そうか・・・何にしても、俺達も早く動かねぇとまずいな。あの野郎の気配は感じない。もう逃げたようだ」


辺りを見回しているようだが、やはり気配は感じられないのだろう。溜息をついた事が分かる。


「はい、ところでビリージョーさんはどこか分かりますか?酷い怪我でしたから、早く治療しないと・・・」


ダリル・パープルズに足を掴まれたビリージョーは、その怪力で何度も何度も壁や床に叩きつけられた。意識を取り戻したアラタが、その姿を目にした時には、瀕死と言っていい程の状態だった。


「大丈夫ですよ。私が治療しました」


ふいに割って入って来た声の方に反応して顔を向ける。


「酷い怪我でしたが、危険を脱するところまでは治療できました。もう少し時間をかけて治療したいのですが、この状況ではそうもいかないでしょう」


「サリーさんですね?良かった。無事だったんですね」


姿は見えないが、落ち着いた話し口調と声で分かった。

ファビアナがいない今、この場でヒールが使える唯一の白魔法使い、サリー・ディルトン。


「はい。あんな男に後れを取っては、バルデス様の侍女として失格ですから。それにしても、本当に真っ暗ですね。全く何も見えません」


サリーも闇に包まれたこの状況の中、アラタの声を頼りに近づいて来たようだ。


「みんな・・・すまない。心配かけた・・・ようだな」


サリーが話し終えたタイミングで、聞こえた声にアラタもガラハドも大きく反応した。


「ビリージョーさん!」


「ビリージョー、お前大丈夫なのか?」


「あぁ・・・何とかな、まだあちこち痛むが、歩けない・・ほどじゃない・・・」


話しの途中途中で、痛みからか言葉を休めて話している事に気付き、ビリージョーのダメージが、まだまだ深い事を察する。

だが、それでもあの状態からここまで回復した事に驚きを隠せない。


サリーも戦っていた事を考えると、戦闘が終わった後から急いでヒールをかけても、ほんの数分しか時間はなかっただろう。この短い時間でここまで回復できるとは相当な魔力だ。

おそらく白魔法使いとして、サリーはカチュアやユーリの上をいく。


四勇士バルデスの専属侍女は、その名にはじない実力者だった。


「よぉ、ここで固まってねぇで、さっさと行こうぜ」


「ん、その声はディリアンか?」


アラタの脇から急に声がかかり顔を向けると、自分の顔より低い場所から視線を感じた。


「状況はよく分かんねぇけど、時間がねぇんだろ?さっさと行こうぜ」


「いや、まだだ、レイチェルとリンジーさんは?二人がいない。レイチェル!リンジーさん!どこですか!?」


アラタも今の状況は理解している。

すでに下の階には水が満ち、サメが溢れている事だろう。いつここに浸水してもおかしくない。

更にこの場を埋め尽くす闇のせいで、脱出しようにも方向さえ分からない。

一刻を争うとはまさに現在の状況だが、レイチェルとリンジーを置いていくわけには行かない。


だが、フロア中に聞こえるくらい大きな声を出しても、二人からの返事は無かった。

このフロアにいる事は間違いない。だがどれだけ呼びかけても返事がないという事は、返事ができない状態という事だ。嫌な予感が胸をよぎる。


「・・・みんな、少しだけ・・・俺の光の力で、ほんの十秒足らずだけど明るくできると思う。それでレイチェルとリンジーさんを見つけたら、頼んでいいですか?」


覚悟を決めたアラタの言葉に、最初に返事を返したのはガラハドだった。


「なるほど、お前の光の力ならこの闇を消せるかもな。分かった。二人の事はまかせろ。もし倒れていても俺なら女二人くらい担いで動ける。それに今、俺以外でそれができるヤツもいねぇだろ?」


「では、私は二人の状態次第では、すぐにヒールをかけます。一刻を争いますが、動かす事が危険なくらいでしたら回復を優先します」


ガラハドの言葉に続けて、サリーも自分の役割を言葉にした。


「では俺とディリアンは・・・その十秒で脱出経路の確認をしよう。今の状態では、そのくらいしか、役に立てそうにない・・・」


いくらか呼吸が落ち着いてきたが、ビリージョーの口調には、まだ辛そうな様子が感じられた。

ディリアンも特に反論はないのか、何も言葉にしない。


「よし・・・じゃあやるぞ!」


アラタは右手を高く上げると、その手が大きく強く輝きだした。


「うっ、いきなりだと眩しいな!だが、これなら・・・」


ガラハドが目の上に手をかざし、眩しさに目を細める。


アラタの光は狙い通り闇を打ち消し、広いフロアの隅々までを照らしだした。

そしてその二人はすぐに目に入った。しかし・・・



「レイチェル!リンジーさん!」


アラタが目にしたその姿は、うつ伏せに倒れているレイチェルと、耳から血を流し横たわっているリンジーだった。


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