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651 ガラハド 対 ダリル

「ほぉ、死にぞこないのくせになかなかの力だ」


ガラハドの右拳を左手で掴み受け止めると、ダリル・パープルズは薄い笑みを浮かべて感心したように言葉を口にする。


「ほざけぇーッ!」


右手を掴まれたまま、左拳をダリルの顔目掛けて繰り出すが、今度はダリルの右手で受け止められてしまう。


ダリル・パープルズとガラハドの体格には、大きさなさは無かった。


お互いに190cmはあるだろう長身に加え、ダリルはスーツの上からでも分かる厚い胸板、そしてリンゴ程度なら片手で握り潰せそうな大きな手をしていた。


対するガラハドも大きく盛り上がった胸や肩の筋肉、そしてダリルに負けず劣らずの太く逞しい腕をしている。


拳を止めた者と止められた者、両者は力比べの状態に入った。


ダリルはガラハドの両手を押さえたまま、落ち着き払った口調で話し出した。


「なぁガラハド、最初に会った時、あの状況でサカキ・アラタを抱えながら、リコから逃げ切った事は見事だった。そして今、武器を失っても果敢に向かってくる度胸、そしてなんとか勝ちの目を作ろうと策を練る頭も評価できる。お前とリンジーの事はカーンから聞いて知っていた。侮れないと高く評価していたぞ。どうだ?帝国につかないか?ここで殺すには惜しい」


「なんだと?この俺に国を裏切れと言うのか!?」


「カーンもウラジミールも帝国に取り入ろうとして、このクルーズを計画したのだよ?こちらも優秀な人材はいくらでも欲しいからね。なんなら、侵入者の全員こちらに寝返ってほしいくらいだ。カーンの魔道剣士を倒す程の人材だ、さぞ優秀だろうからね」


額に青筋を浮かべ、かみ砕きそうな程に歯をカチ合わせながら睨み付けるガラハドだが、ダリル・パープルズの表情はまるで変わらず、眉一つ動かしていなかった。



両者の力は一見すると互角に見える。

拳を前に押し出そうとするガラハドと、その拳を受け止めているダリル。

拮抗した力の押し合いに、二人はその場で膠着状態を強いられている。


だが、果たして本当に互角なのだろうか?


ガラハドの全身には、見るからに力が入っていて、筋肉はガチガチに固まっていた。

眉間にはシワを寄せ、歯を食いしばっているその表情からは、力を振り絞っている事が一目で見て取れた。


対するダリルはどうだろうか?

汗の一つも掻かず、それどころから口元には笑みさせ浮かべている。

戦闘には不向きな上等なスーツに身を包みながら、ガラハドの全力を涼しい顔で受け止めている。



「俺が、仲間と国を裏切るような男に見えると言うのかぁぁぁーーーッ!」


怒りにまかせた大声を上げて、ダリルを押し潰そうと前に出るガラハドに、底冷えがするほどの冷たい声で返事がされた。


「思わないね。聞いてみただけだ」



体を持ち上げられた事などない。

190㎝の長身に、100キロを超える巨体、その自分が体を持ち上げられる事などありはしないし、想像すらした事もなかった。


「な、なんだとっ!?」


「降伏も服従もないのならば、あとは死ぬしかないよな?ガラハド」


ガラハドの両の拳を掴んだまま、ダリルは両手を上げてその体を持ち上げ始めた。


「馬鹿な!こ、こんな・・・!?」


驚愕の声を上げるガラハドに、ダリルは不敵な笑みを見せた。


「フンッ!」


ガラハドの両足が床を離れ、上半身がダリルの頭を追い越す程に持ち上げられると、ダリルは腰を捻り、力任せにガラハドを放り投げた。


「くっ!」


「お?見かけによらず身軽なヤツだな」


空中で体を捻り、片手片膝を着いて着地したガラハドに、ダリルは少しだけ驚いたような声を出す。


「ウオォォォッ!」


「ほぉ、まだ闘争心は萎えていないようだな?そうだ。来るがいい。どの道死ぬのなら、少しでもあがいて見せろ」


拳を握り締め、再びダリルに向かい突っ込んでいくガラハド。

それを受け、ダリルは歓迎するように少しだけ両手を広げて見せた。


「ウオラァーッ!」


「芸の無い事だ」


ガラハドが真っすぐに繰り出した右の拳を、ダリルは軽々と、内側から外へと左手で払いのける。

あっさりと攻撃を払われたが、ガラハドは動揺を見せずに、太く逞しく鍛え抜かれた右の蹴りをダリルの左脇腹を狙って繰り出す。


「オラァァァーッ!」


「フン」


ガラハドの蹴りを一歩後ろに引いて躱すと、引いた分ガラハドは距離を詰めて、拳を、蹴りを矢継ぎ早に繰り出していく。だが当たらない。

ガラハドの攻撃はただの一撃もかすりもせずに空を切る。




その様子を距離を取って見ているサリーの目には、ガラハドとダリルの圧倒的な力の差が如実に映った。


大人と子供の差とは、正にこういう事を言うのだろう。

力も技も何もかもが違い過ぎる。


ガラハドは自分が盾となるから、隙をついてイマジン・シザーで攻撃をしろと話してきた。

しかしとてもできない。サリーは何度もダリル・パープルズに仕掛けようとしていたが、動こうとするとダリルから睨まれるのだ。全て分かっていると言うかのように。


ダリル・パープルズは視線だけで、サリーの動きを封じていたのだ。


そして・・・


「おいおい、あっちばっか見てていいのか?」


嘲るような言葉とともに、鋭く尖った氷が撃ち込まれる。

サリーは脇へ転がるように脇へ飛び、黒魔法の刺氷弾を回避する。


「くっ・・・」


黒いワンピースの裾が貫かれ、転がりながら起き上がる。

ギルバート・メンドーサは、ニヤニヤと笑いながら魔力を帯びた右手を、サリーに向けている。

殺そうと思えばいつでも殺せる。だが、己より弱い者をいたぶり優越感を味わうというゲスな趣味が顔をのぞかせていた。


「おいおい、睨んでないでかかってきたらどうだ?そのハサミがお前の魔道具なんだろ?それでどうやって戦うんだ?教えてくれよ」


「いいだろう・・・イマジン・シザーの切れ味、その身を持って味わってみろ!」


サリーはイマジン・シザーをギルバートの喉元に狙い付けると、躊躇いなく刃を切り合わせた。


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