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648 策略

「・・・ガラハド、サリー、すまない。本当ならボロボロの二人には休んでいてくれと言うところなんだが、そうも言ってられないようだ」


レイチェルは目の前のギルバート・メンドーサから目を離さずに、後ろにいるガラハドとサリーに言葉をかけた。


「気にするな、皆さんそろってお越しのようだからな。こっちも歓迎してやらねぇと失礼だろ」


ガラハドはアラタを下ろして壁際に寄せると、立ち上がって右拳を左手に打ち付けた。パンッと渇いた音が響き、首を鳴らしながら回すと、ニヤリと笑って闘争心溢れる目を見せた。


「そうですね。せっかくのバルデス様との旅行が台無しになって、私もちょっと頭にきてますし、一暴れさせてもらいますよ」


右手でハサミをチョキチョキ鳴らしながら、サリーはニコリと微笑んだ。




自分と対峙する三人の視線が、自分だけでなくその後ろにも向いている。

そこでギルバートも気が付いた。


「・・・これはこれは、お三方お揃いですか・・・」


振り返ったその視線の先にいる三人。薄暗い通路をゆっくりと歩き近づいてくる。

徐々に姿がハッキリと見えてくると、その中心にいるスーツ姿の男が、ギルバートに向かって笑顔で言葉を返した。


「メンドーサ殿、ご無事だったようで何よりです。ですが、お取込み中のようですね」


ギルバートから少し距離をとって、リンジーと睨み合うカーンに目を向ける。


「フハハハ、パープルズ大臣、何をおっしゃりますか?こんな連中物の数ではありませんよ。道の先に転がった石コロ同然、すぐにどかして先へ行きましょう」


ギルバートはダリル・パープルズの様子を伺うように目を細めた。

その脳裏には、先ほどのガラハドの態度が引っかかっていた。


もし、本当にガラハド達がこの転覆を起こしたのならば、目的を達成した今それを隠す必要はない。


ならば先程の自分への反論はなんだ?


船を沈めたのはお前達だろうと指摘されて、本当に分からないという顔をしていた。

大した役者だと思ったが、感情を抜きにして考えてみればガラハドはそんな器用な男ではない。


出航して一時間足らずでの転覆、氷山にぶつかったわけではない。しかし船を沈める程の大きな衝撃があった。


ガラハド達でないとすれば誰だ?


一般の乗客達に、なんらかの悪意を持ってやった者がいないとは言い切れない。

言い切れないが考えづらい。魔法にしろ武器にしろ、船をひっくり返す程の破壊力を持ったなにかをできる者が、そういるとは思えない。


そうなると必然的に絞られて来る・・・・・


「・・・メンドーサ殿、どうかしましたか?」


じっと目を向けていると、ダリル・パープルズが怪訝な顔をしたので、ギルバートはすぐに笑みを浮かべて目礼をした。


「あぁ、いや失礼。なんでもありません。そちらの護衛の方、ラルス・ネイリー殿は体調が優れないように見えますが、大丈夫ですかな?」


話しを逸らすようにダリルの隣に立つ青魔法使いに言葉を向ける。

隠しているが、呼吸が荒く、汗が止まらないように見える。


「えぇ・・・、大丈夫、ですよ。ご心配、ありがとう、ございます」


無理に作った笑顔だという事がよく分かる。

なにがあったかは分からないが、相当なダメージを抱えているようだ。

帝国からも身の回りの世話をさせるため、それなりの人数を乗せたはずだが、ただの一人も白魔法使いが生き残っていない事は不運としか言いようがない。


「・・・そうですか。そちら、リコ・ヴァリン殿は、お怪我は?」


ダリル・パープルズの傍らに立つもう一人、紫色の長い髪の小柄な女性、それがリコ・ヴァリン。


「・・・ないわ」


言葉少なに返すと、リコ・ヴァリンは自分達の前に立つ三人に顔を向けた。


赤毛の女の両脇に立つ二人は、かなりの疲労が見える。だが、精神の高揚、闘争心がそれを補っている。こういう状態の相手は実力以上のものを発揮する。それを知っているからこそ、ボロボロのガラハドとサリーを見ても、リコ・ヴァリンに油断は無かった。


そして中央に立つ赤毛の女、レイチェル・エリオットを目にした時、リコ・ヴァリンは脳を撃たれたかと思う程の、かつてない衝撃に身を震わせた。



「・・・あの赤い髪の人・・・私を呼んでるわ」


「ん?急になにを?」


突然意味の分からない事を口にするリコ・ヴァリンに、ギルバートは眉を寄せて怪訝な顔で問い返す。

だが、リコ・ヴァリンはそれに答える事はせず、ダリル・パープルズに顔を向けた。


「・・・リコ、行きたいのかい?」


ダリル・パープルズは向けられた眼差しから心中を察した。

リコ・ヴァリンが頷くと、フッと笑って送り出すように手を差し向けた。


「よし、いいだろう。あの赤毛が相当な強者だという事は私も感じている。リコ、キミに任せよう」


「ありがとうございます」


一礼をすると、リコ・ヴァリンは前に進み出た。


「・・・パープルズ殿、よろしいのですか?」


「えぇ、あの赤毛の女は強いですよ。リコに任せましょう。それより、うちのネイリーはこの通り、少々体調不良でしてね、ガラハドと侍女服の女は私達で相手をしなければなりませんが、よろしいですか?」


「えぇ、それはもちろん。まぁ、あんな死にぞこないに負ける事などありえませんがね。さっさと倒して先へ行きましょう」


ギルバートがダリルから視線を外して、ガラハドとサリーに向き直る。

一歩後ろに立つダリル・パープルズは、ギルバートの後ろ姿を見つめていた。


今まで親し気に話していた事など考えられない程、冷たい眼差しで・・・・・。




ギルバート・メンドーサよ、ここで生き残っても、貴様はもう終わっているんだよ。

船は沈む。招待客であるこの俺を乗せた船が沈むんだ。帝国の大臣であるこの俺を乗せた船がだ。


出航してたった一時間で沈没。船の不具合としか考えられないよな?

俘虜ふりょの事故ではない。帝国は貴様らの怠慢による、起こるべくして起こった事故として追及する。


それがどういう事か分かるか?


帝国の招待はロンズデール国王も承認して、国として関知しているのだ。

つまり国として責任を取らねばならん。


くっくっく・・・それが一体どれほどの事か。


ギルバート・メンドーサ。貴様はそこまで考えが至っていないのか?

ロンズデールはもう終わっているんだよ!



ダリル・パープルズの瞳が歪んだ光を放った。


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