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647 宿敵との対峙

「ガラハド、サリー・・・アラタ!」


通路を駆け抜けたレイチェルの目に飛び込んで来たのは、ボロボロのサリーとガラハドだった。

そしてガラハドが抱きかかえている黒髪の男が誰か分かると、レイチェルは大きく声を上げ、強く床を蹴って加速した。


「うぉっ!・・・・・あ、相変わらず、すげぇ速さだな」


目にした時は、なんとか姿が分かる程度の距離だった。

そして姿を認めた直後に一瞬で懐まで距離を詰められ、ガラハドはただ驚きをそのまま言葉にするだけだった。


「アラタ!・・・大丈夫、なのか?」


「レイチェルさん、安心して。ヒールもかけたし薬も飲ませたから、アラタさんは大丈夫よ。時期に目を覚ますわ」


眉根を寄せて、心配そうにアラタの顔を見るレイチェルに、サリーがそっと声をかけた。


「そうか・・・サリー、あなたがいて良かった。ありがとう。おかげで私の友達が泣かなくてすむ」


「カチュアさんね?ええ、私も助けられてほっとしてるわ・・・」


「二人とも、お話しはここまでね・・・」


レイチェルとサリーの間に言葉を割り込ませたのはリンジー。

普段の明るい声色からは想像もできない程、低く真剣味を帯びた声が二人の言葉を止めた。


「・・・お待ちかねよ」


髪より少し薄い灰色の瞳を向ける先には、宿敵ラミール・カーン。そしてギルバート・メンドーサがこちらを見据えていた。




「おしゃべりは終わったかな?」


腕を組み、冷たい眼差しを向けるカーンに対抗するように、リンジーは前に出た。

二人の間には数メートルの開きがあるが、両者にとっては一歩で詰める事ができる距離であり、すでにお互いが射程内に入っている。


「カーン・・・」


リンジーは静かに目を伏せて一度大きく呼吸をする。

半歩右足を下げて両手の平をカーンに向けると、左手は胸の高さに、右手は腰の高さで正対に構えた。身に纏う黒い生地の一枚布が、高まっていくリンジーの気に呼応するように、はためかせられる。

首から下げている、沢山の青い石が付いた革紐のネックレスも輝きを増していく。


首元から左右に分けて結ばれている腰まである長い髪、髪の先には宝石のような小ぶりで丸い玉がリボンで付けられている。その玉も輝きを放ち始め、ゆらゆらと揺れ動きだした。



「・・・フッ、やる気満々だな、まぁ、それもそうか・・・ここまで来てもはや話す事は無い・・・いいだろう。決着をつけてやる」


リンジーの気迫をその身に受けて、カーンもまた腰に下げた剣を抜いた。


「噂に聞いた事はあるだろうが・・・見るのは初めてだろ?」


見たままの印象をそのまま言えば、大きくて肉厚な剣だった。

特別に長いわけではないが太さが違った。男の太腿程、いやそれ以上には幅があるその得物の重さはかなりの物だろう。

それを片手で扱うカーンの腕力も、並々ならぬものであると理解できる。


しかしリンジーはそれ以外にももう一つ、カーンの剣に対して感じるものがあった。



あの剣、刃が・・・潰してあるのか?あれでは斬る事はできない。

斬る事が目的ではないのか?では鈍器のように叩き潰す戦い方をするのか?



「これが俺の、反響はんきょうの剣だ」


感触を確かめるように、見るからに重々しい剣を片手で振り回して見せると、カーンはニヤリと笑ってその名を告げた。



リンジー・ルプレクト

ラミール・カーン


二人の因縁の戦いが始まろうとしていた。


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