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642 正念場

長年にわたる因縁。ライバルとは言われているが、世間的な評価はアラルコン商会が上だった。

シャノンは相手にしていないという態度をとっており、それも殊更ことさらに火をつけた。


わざわざ争わないように、刺激しないようにという事がシャノンの考えだったが、ウラジミールは大海の船団は眼中にないのかと悪く取った。


いつしかウラジミールの心は、嫉妬や怒り、歪んだ感情で埋め尽くされていった。


氷の竜を内側から粉砕し脱出したウラジミールは、そのまま落下しながら、眼下のシャノンに向けて、振り被った短剣を叩きつけるように振り下ろす。



完璧に決まった竜氷縛を破られた事は計算外だった。

焦りと動揺からシャノンに一瞬の硬直が起きる。


致命的なタイミング。


躱せなくはなかった。ウラジミールにダメージが無かったわけではないからだ。


竜氷縛の冷気はウラジミールから体温を奪った。

高密度の氷の中に呑まれ固められたウラジミールは、強制的に筋肉が収縮させられ、流れる血液さえ凍らされる程の氷結地獄を受けたのだ。


力を振り絞って脱出したが、それほどに凍り付かされた肉体が、本来の動きをできるはずもない。

ウラジミールの動きは明らかに鈍っていた。


しかし、体力型のウラジミールの一撃を、魔法使いで意表を突かれた状態のシャノンに躱せるか?と言えば、その答えは否である。


しまった!

己の失態を理解する。そしてもはや躱す事の敵わない一撃が目に映る。


一瞬の後に訪れるであろう、自分の頭を叩き割る凶刃に目を固く瞑る。



この一撃はシャノンには躱せない。

ゆえにシャノンを救ったのは・・・・・


「ッアガァッ!」


ウラジミールの体が、青く輝く光に貫かれた。

そのニメートルの巨体は、全身から黒い煙を発しながら大きく後ろに弾かれる。




・・・これがバルデス家の奥義・・・雷だ!


右手人差し指から立ち昇る白い煙。その青い目を細めてフッと小さく笑うと、バルデスはその体を投げ出すように背後の壁に預けた。


「シャノン、空気だ!ヤツは空気を纏っている!」


叫んだ直後、右胸に耐えがたい程の激痛が走り、バルデスは胸を押さえながら前のめりに倒れた。


これで・・・私にできる事は全てだ・・・・・シャノン、後はお前に任せたぞ!


全ての力を使い果たしたバルデス。

そして自分に後を託したその眼差しを、シャノンは確かに受け取っていた。



助かったよバルデス!

あんたが作ってくれたこのチャンス!生かしてみせる!


シャノンの全身に魔力が漲る。

それは髪の毛が逆立つ程に強く、そして赤々と燃え滾る竜へと姿を変えた。


火の上級魔法 灼炎竜




なんだと!?

船内で火魔法を使うのか!


倒れながらもかろうじて顔だけは上げて、勝負の行く末を見るバルデスの目に、驚きの色が浮かぶ。

その身に炎の竜を纏わせる魔法、灼炎竜。使い手の魔力による事は当然だが、竜の大きさは最低でも三メートル以上は確実である。

船内でその大きさの竜を出せば、どうなるかなど想像するまでもない。



「ウラジミーーーーールッ!」


右手の平を向けると、シャノンは躊躇ためらうことなく燃え盛る竜を撃ち放った。




「う・・・ぐ・・オォォォォォォォォォーーーーーーッ!」


バルデスの雷を受けて倒れた、ウラジミールのダメージは大きかった。

体中の血管が切れたかと思う程に、激しく鋭い痛みが全身を駆け抜け、目の前が真っ白になって倒れた。


そのまま意識を手放してしまいそうになったが、ウラジミールもここが正念場だと分かっていた。


喉が張り裂けんばかりに声を上げる。

それが気付けとなり、無理やりに意識を呼び起こした。


「この程度で俺が負けるはずがっあぁぁぁぁぁぁーーーッ!?」


締め上げるように巻き付いてきた炎の竜。

体を焼かれる痛みにウラジミールは絶叫した。


「空気で体を護ってるんだって?だったら蒸し焼きにしてやるよ!」


ここが勝負の際!この局面で決める!

灼炎竜に勝機を見出したシャノンも、ここで全てを出し切る覚悟で魔力を注いだ。


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