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608 真相

追う事はできた。

けれど私は追わなかった。


私の最重要任務は、ダリル様の護衛である。姿が見えなくなる程離れるわけには行かないからだ。


「・・・逃げられてしまったな。リコ、お前なら追えたはずだが?」


ダリル様が背中越しに声をかけてくる。

私はなぜ追わなかったか、護衛としての役割を話した。


「・・・そうか。まぁ、確かにリコの言う通りだな。いいだろう、それにあの黒髪の男も、早くヒールをしなければ、長くは持たないだろう。この状況で都合良く白魔法使いに会えればいいがな」



「う・・・ぐ、ダ、ダリル、さ、ま・・・」


私と大臣の会話に割り込んで来た声に、私達は目線を下に向けた。

すると、全身を水に浸らせたラルス・ネイリーが、右半身をかばうように、左腕一本で体を引きずりながら、這いずって来た。


「おぉ、ネイリーじゃないか?ずいぶんひどくやられたようだけど、大丈夫か?動けるかい?いやぁ、ネイリー、キミが来るのをずっと待っていたよ」


たった今までネイリーの事など一言も口にしなかったのに、大臣は大げさな程に歓迎の言葉を口にし、抱き着いて来いと言わんばかりに両手を広げた。



「も、申し訳、ありません・・・はぁ、はぁ・・・ゆ、油断、しま、した・・・」


呼吸は乱れ、ひどく顔色が悪い。

あの男のパンチはネイリーの右脇腹に深く突き刺さっていた。

内臓を痛め、肋骨は何本も折れている事だろう。


私もダリル様も体力型で、ネイリーは青魔法使い。世話役として同行させていた帝国の人間の中には、白魔法使いもいたが、この転覆で散らばってしまったため、この場で治療はできない。



「リコ、回復薬を持っていないか?」


「はい。持ってます」


私がいる限り、ダリル様に傷を付けさせるつもりは毛頭ないが、万一の突発的な事故に備え、回復薬は持ち歩いていた。


「では、ネイリーに飲ませてやってくれ。骨が折れているなら完治はしないだろうが、いくらかマシにはなるだろう」


促されて、私は床に這いつくばるネイリーに顔を向けた。


油断・・・そう口にしていたが、攻防を見た限りネイリーに油断はなかった。

強いて言えばネイリーは自分の研究に個室し過ぎていた。

あの黒髪の男、サカキアラタを薬漬けにしようとなど考えず、純粋な戦いとして望んでいれば結果は違っていたかもしれない。


「・・・ネイリー、飲みなさい」


腰に巻いたベルトから鉄製の細い筒を取り出す。

帝国の白魔法使いが作った回復薬だ。町で売られている物よりは質が良い。

だが、ダリル様の言う通り、回復薬で折れた骨までは戻せない。

痛みを和らげ、疲労を回復させる。それが回復薬にできる事だ。


「う、うぅ・・・すみま、せんねぇ・・・い、ただき、ますよ」


ネイリーは私から筒を受け取ると、ゆっくりと中身を飲み干した。


「飲んだらここを離れようか。さっきの爆発で浸水の速さが一気に増した。水没まであと4~5時間はあると見ていたが、これではそこまでの猶予はないだろう。早くリゴベルトの生死を確認しなければな」


さっき、あの男が鉄の棒を投げつけた場所は、爆発により大きな穴が空き、爆炎とともの大量の水が溢れだした。時間とともに流れ込む量も増えているように感じる。すでに私の足首は埋まっているから、あと30分もすればこの階は水で埋まってしまうだろう。


できるだけ早く移動をしたかったが、薬が効いてくるまでは留まるしかない。

私達はそれから数分休み、ネイリーの体が少し楽になったところで、移動を始めた。

ネイリーは一人では歩けないので、ダリル様が肩を貸した。いくらか楽になったとはいえ、肋骨は折れたままだ。早く白魔法使いを見つけ、ヒールをかけなければ、いずれ動けなくなるだろう。


「はぁ・・・はぁ・・・」


息を切らしながら、なんとか足を動かすネイリー。

そんなネイリーに、ダリル様はチラリと目線を向けるが、その表情からは何を考えているかまでは読めない。


だけど、一つだけ言える事は、ダリル様が今最優先にしている事は、ロンズデール国王、リゴベルト・カークランドの生死の確認だ。



なぜならこの転覆は、我々帝国が引き起こした人為的なものだからだ。



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