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597 ララの種明かし

違和感を感じたのはララが身に纏う白い一枚布だった。


私の雷を受けておいて、この布は焼け焦げていない。

着ている本人の皮膚は焼け焦げ爛れ、泡を吹いて痙攣まで起こしている。

それほどのダメージを受ける雷を浴びて、衣類が無傷だなんてありえるだろうか?


そして、この男はなぜわざと攻撃を受けたのか?


私はこの男にハッキリと言った。

目を眩ませて突っ込んで来るだけの、単純な攻めだと。


それなのに、凝りもせずになぜまた真正面から突っ込んで来た?


私もサリーもコイツを見くびる言動はしたが、こいつが本当に無能ならば、自分の所属する部隊の幹部になれるものだろうか?



「・・・ふむ、やはりな。そう簡単に終わるとは思わなかったぞ」


「なに!?ど、どうやって・・・」


確かに手ごたえはあった。だがララは、標的を仕留めたと確信した事による興奮で、それが人の肉体を刺し貫いた手ごたえか、それ以外・・・、そう、厚い氷を突き刺した手ごたえなのかまで、瞬時に区別する事が出来なかった。


「これだよ」


種明かしをするように、まるで盾のように氷で固めた左手を見せる。

そこにはララの短剣が、根本まで深く突き刺さっていた。


「くっ、こいつ・・・」


死んだふりまでして作った機会。そして短剣を突き立て仕留めたと確信したにも関わらず、相手が自分の行動を読み、上回っていた事で、ララが感じたものは・・・ララ自身は認めていないが、心の奥底で感じたものは敗北感。


悔しさに歯軋りをした時、ララは自分に向けられた殺気を感じ取り、その場から大きく後ろに飛び退いた。それとほぼ同時に、一瞬前までララのいた空間が、まるで空間を両断したかのように、鋭い音を立てて切り裂かれた。


「チッ、勘の良いハゲだ」


ハサミを向けた軌道上にあるものを切る事ができる、サリーの魔道具イマジン・シザー。

ララの首を狙ったその攻撃は、殺気を感じ取られ躱されてしまった。


「バルデス様、ご無事でなによりです」


「フッ、どこぞの捻くれた白魔法使いに、顎を割られた経験が生きたな。あの娘の動きを見た後では、こやつの攻撃などスロー過ぎて欠伸がでるわ」


攻撃を躱された事に舌を打つが、すぐにバルデスの無事に表情を緩めて、駆け寄って来るサリー。


以前、クインズベリーの見張りの塔で、ジーンとユーリを相手に戦った際、ユーリのアッパーで顎を割られた事を思いだし、バルデスは苦笑い交じりに顎を擦った。


「ふぅ・・・このままではラチがあきませんね。あなた方、面倒くさいって言われませんか?」


「貴様に言われたくはないな。だがその問いには答えてやろう。いいか、周りがどう思おうが、好きに思わせておけばいいのだ。大事なのは私とサリーの気持ちだ。他はどうでもいいのだ」


「バルデス様・・・」


指先を突きつけて、迷いのない目で言い切るバルデス。頬を赤らめるサリー。

戦いの最中にも関わらず、どうしても緊張感のない二人に、ララは頬を引きつらせた。


一体なんだこいつらは?

メイドの女は自分に腹を蹴られ、背中に肘を落とされた。

男の方は、防いだとはいえ腹に短剣を刺されたのだ。

それなのにこの二人は、なぜこうもイチャイチャ、ヘラヘラしていられる?



「おい、貴様は目が見えないのだろう?しかし、なんらかの魔道具によって我らの位置を特定している。違うか?」


「・・・ほぅ・・・この短時間でよく分かりましたね?」


「最初に迷いなく我らを見つけた時から、当たりは付けていた。特殊な目をしているのではと考えもしたが、おそらく視覚で捉えているのではなく、感覚で見ているのだろうと判断した」


「ほぅ・・・そこまで分かっているのでしたら、種明かしをしてあげましょう」



それまでどこか相手を侮るように、薄ら笑いを浮かべて話していたララだったが、バルデスの洞察力に並々ならぬものを感じたのか、表情が引き締まる。


「このララは生来目が見えません。ずいぶん苦労しましたよ。光の無い人生なんて、味わった事のない人には到底分からないでしょう。ですがそんな私を救ってくださったのがカーン様でした。カーン様の魔道具により、私は自分を中心に、全方向の映像を頭に直接映して捉える事ができるのです。視覚に頼らず、体全体で見ると言えば少しは分かりますかね?あなた方が最初は薄く見えたのは、なんらかの魔道具で姿を隠していたからなのでしょうが、このララの前では意味を成しませんでしたね」



「なるほど、全方位とは、私の想像よりも優れた魔道具のようだな。サリーのハサミを躱したのもその力か。外見にそられらしい物が見当たらないのを考えると、体内に埋め込む型のようだな。ついでにもう一つ教えてもらいたい、貴様はワタシの雷で確かにダメージを受けていた、泡を吐いて痙攣する程のな・・・しかし、その回復力はどういう事だ?回復薬でどうなるものでもないし、貴様は体力型だろう?どうやって回復した?」


バルデスの疑問にララはたっぷりと余裕を持って答えた。

鼻で笑い、見せつけるかのように自分が身に纏う白い布を掴んで見せる。


「ふっふっふ、教えてあげましょう。これですよ、これ。魔道具、命の護布ごふ。これはただの白い布切れではありません。着用者の生命が危機に陥った時、この通り助けてくれるのですよ。そしてこの布は非常に強い耐久力を持っているため、破く事も燃やす事も非常に難しいのです。これが私の復活の種明かしです」



「なるほど、それはすごい魔道具だな。それほどの物、本来は国王クラスが持っているべき魔道具じゃないのか?貴様ごときがもっていては宝の持ち腐れだろう?今からでも遅くない。貴様の国の王に献上してはどうだ?」


真顔でそう告げるバルデスに、ララの頬が引きつった。


「ん?どうした?怒ったのか?私はまっとうな意見を述べたつもりだがな。だって、貴様が持っていても無駄に消費するだけだろう?だいたい想像はつくぞ、その魔道具、使用回数に制限はあるのだろう?それだけの魔道具が無制限のはずがないからな。貴重な回数を貴様の命で使うのはもったいない」


真顔でララの命の軽さを説くバルデスに、ララの怒りが爆発した。


「こ、この無礼者が!このララをそこまで愚弄するのか!ゆるさ・・・!?」



ララが飛び掛かろうとしたその時、突然船体が大きく激しく揺れた。



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