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554 女王との二つの話し ②

レイチェル達がロンズデールに行くのを明日と書いており、先の話しで矛盾が出てしまったので、一部分訂正しました。

シャクール・バルデスが同行する事になった理由を、レイチェルは次のように語った。


「国のためとか、立派な理由ではないぞ。ズバリ言うと、観光だ」


・・・・・観光?


俺は耳を疑った。今レイチェルは何と言った?観光?

この、一国の行く末、いや大陸全土がどうなるかという事案に対して、観光と言ったのか?


「・・・レイチェル、バルデスって僕とユーリが戦った、あのバルデスだよね?」


「あぁ、最初にそう言ったはずだが?」


ジーンの躊躇いがちな質問に、レイチェルも首を傾げてそう答える。

何を分かり切った事を、という感じだ。


「・・・う~ん、僕が戦った印象では、もう少し真面目な感じだったけど・・・観光・・・」


ジーンは自分が戦った相手が、そんな軽いノリでこの任務に同行するのが信じられないようだ。

俺はバルデスという男と面識はないが、本当であればジーンとユーリに勝っていたはずだという。

実力も相当なもののようだし、悪い男ではないと聞いている。


「ジーン、言いたい事は分かる。動機が観光では、確かに不謹慎と言ってもいい。だが、前にも話した通り、バルデスはアンリエール様に四勇士を降りたいと話している。それをアンリエール様が引き留め、ある程度の自由を認める事にしたんだ。観光が目的でも、あれだけの力を貸してもらえるのは助かる。それに、ジーンの印象ではもう少し真面目なんだろ?なら、任務は任務でキッチリやってくれるさ。アンリエール様も、そこは信頼しているからバルデスに任せたんじゃないかな?」


レイチェルはバルデスに対して、それなりの信用を持っているようだ。

二日に一度は城に行っているわけだし、顔を会わせる事も多いのかもしれない。


「・・・それもそうだね、実際に実力は僕よりもはるかに上だ。白魔法の彼女もかなりの魔力らしいしね」


「そういうわけだ。国としては公に兵を出せないし、半端な力量では足手まといだ。そうなると、かなり絞られるだろ?ゴールド騎士は顔が売れてるし、ヴァンも城の再建や町の警備で忙しい。顔が知られてなくてずば抜けた力があるとなると、四勇士のバルデスはまさに欲しかった人材なんだよ。本人も乗り気だしね」


レイチェルが認めているならば、バルデスの同行にこれ以上口は挟めない。

それに偽国王との戦いが終わった以上、彼らと敵対する理由も必要もないのだ。

実力も十分でこれ以上ない戦力だ。そこでバルデスの話しは終わりだった。




「じゃあ、次の話しだ。アラルコン商会のクインズベリー進出の事だが、これは認めてもらえた。私はアラルコン商会の外部役員という立場になったから、これからはレイジェスとアラルコン商会の、バランスを取った行動をしなければならない。みんなに手伝ってもらう事も出て来ると思う。面倒をかけるが、よろしく頼む」


「別にいいじゃん。アラルコン商会って、食料品とか日用品とかが中心でしょ?魔道具は被るけど、まさか隣近所に出店するってわけでもないし、うちには影響ないんじゃない?」


ケイトは黒の鍔付き帽子を指で弾くと、レイチェルに笑って見せた。


「そうだな、レイジェスから徒歩で30分程離れた場所を検討している。取り扱い品で被る物はあるが、お客を持って行かれる事はないと思う。まぁ、うちはリサイクル品が中心だしな」


「じゃあ、いいじゃん。それに、アタシもアラルコン商会に行ってみたかったんだ。食品と日用品はなんでも揃ってるんでしょ?」


「あぁ、私が行った店は魔道具専門の店だったが、クインズベリー支店は食品と日用品と魔道具を中心の、大型店で考えているそうだ。ロンズデールの魚は新鮮で美味しかったぞ。ケイトの腕も鳴るんじゃないか?」


「やった!そりゃ楽しみだね、ジーン!」


満面の笑みを向けられ、ジーンもそれに応える様に笑顔を見せた。


「ははは!ケイト、僕達はレイジェスの店員なんだから、いくら気に入ったからってアラルコン商会に移籍しちゃ駄目だよ?」


「分かってるって、アタシはレイジェス以外で働く気は無いから!」


ジーンとケイトの様子をほほえましく見つめ、レイチェルは言葉を続けた。


「まぁ、アラルコン商会の事は今すぐというわけにはいかない。時間はかかる。私もまたロンズデールに行って話してこなければならない」


「レイチェル、今度はいつ出発するのかしら?」


「まだ決まってはいないが、近いうちに行かなければならないだろう。写しの鏡で連絡をとっているが、向こうになにかあれば明日にでもという可能性もある。だから、いつでも動ける準備はしておかないといけない。あぁ、それと私とビリージョーさんは、これからまた城へ行かねばならない。シルヴィア、落ち着かなくて悪いな。店の事は頼んだぞ。ジャレットを支えてくれ」


「分かったわ。こっちは気にしないで大丈夫だからね。ロンズデールの事、長くなりそう?」


「どうだろうな・・・ラミール・カーンという男を押さえた後、国王をどうするか。バルカルセル大臣が従来通り政治を行うのであれば、まぁ一つの決着にはなる。だが、国王が変わらない事には抜本的な解決にはならないだろう。その辺りが難しい。私達が最後の最後までいる事になるのか、それともカーンをなんとかすればいいだけなのか、状況次第で滞在日数も変わってくるだろうな。だが、ある程度の期間はいる事になるだろう。できればここで年を越したいところなんだがな」


肩をすくめるレイチェル。年を越したいという言葉に、俺も焦燥を感じた。


クリスマス。

カチュアと今年のクリスマスが楽しみだと話したばかりだ。

できればそれまでには解決させて帰って来たい。

国家に関わる問題に、何をのんきな事をと思うかもしれないが、人のやる気なんてそんなものだ。

使命感だけでなく、個人のささやかな楽しみが原動力になる。


「レイチェル、クリスマスまでには帰って来ようぜ」


「ん?どうしたアラタ?ずいぶん気合が入った顔してるじゃないか?・・・そうか、カチュアとクリスマスパーティーがしたいんだな?まったく・・・まぁ、私も年越しはレイジェスがいいと言ってる時点で、バルデスの観光や、キミに文句は言えないな」


レイチェルは小さく笑うと、壁掛けの時計に目をやり、そろそろ開店時間だとみんなを促した。


「じゃあみんな、後は頼むよ。ビリージョーさん、行こうか」



「あ、レイチェル、待って」


従業員用のドアから出ようとするレイチェルを呼び止めると、レイチェルは、どうした?と言うように振り返った。


「俺も、城に行っていいかな?」


「・・・急にどうしたんだ?アンリエール様への報告や、細かい事は私とビリージョーさんで大丈夫だぞ?」


「いや、そうじゃないんだ。俺、もう一度店長と話したいんだ。ロンズデールに行ったら、次はいつ会えるか分からない。だから、会えるうちに会って、もう一度話しておきたいんだ」


レイチェルは俺の顔をじっと見つめると、分かったと言って頷いた。


「まぁ、確かにいつ向こうに行く事になるか分からないしな。なにか聞いておきたい事でもあるのなら、一緒に行こうか。ジャレット、一人減るが、店はまわるかい?」


「おう、大丈夫だ。心配すんな。アラやん、行っていいぞ。ただし、閉店までに帰って来い。いいな?」


「あ、はい。分かりました」


妙に迫力のある声で念を押されたので、やや驚いた。

なにかあるのだろうか?聞きたかったが、あまりレイチェル達を待たせても悪い。


だから、みんなにお礼を言って、カチュアに行ってくると声をかけて店を出た。



店の外には、すでにレイチェルが用意しておいた馬車が着いていた。


「うん、時間通りだ」


満足した顔で頷いたレイチェルに続いて、馬車に乗り城へと向かった




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