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552 冬の訪れと朝礼

誤字脱字を見つけたので編集しました。内容に変更はありません。

一日の休みをもらったお蔭で、心身ともにずいぶんリフレッシュする事ができた。

ここのところ気を張り詰める事も多かったし、昨日は何も考えずにカチュアと二人でゆっくりと休日を満喫できた。休みを提案してくれたジャレットさん、カバーしてくれたみんなには本当に感謝だ。


レイチェルだって、本当は疲れているはずなのに、俺を優先してくれて助けられてばかりだな。


「アラタ君、なんだか調子良さそうだね?」


「うん、やっぱり昨日ゆっくりできたのが良かったと思う。体が軽く感じるよ」


「ふふ、良かった」


午前8時、家を出て、二人で並んで歩く。

言葉を交わす度に口から出る息は白く、朝の寒さに指先が冷たくなる。

去年の11月は言うまでもないが日本にいた。その日本の11月と比べて、クインズベリーの方が確実に寒い。

日本は温暖化の影響か、年々雪が降るのが遅くなり、暖冬と言う言葉も珍しくなくなった。

11月でも昼間は暖かく、暖房が要らない時も多々ある。


しかし、ここは違う。

普通に寒い。俺はレイジェスで買った黒のダウンジャケットを着て、カチュアも白の膝丈のウールコートを着ている。ついこの前まではコートはいらなかったのに、寒くなるのは早いなと思った。


樹々の間を通り歩き、凍った落ち葉を乾いた音も冬を感じさせる。


「アラタ君、手、寒そうだね?」


「うん、俺冷え性なんだよね。指先がすごい冷たい」


そう言って手をすり合わせて、ハァ~っと息をかける。


「この前、手袋入荷してたから今日買っていこうね」


「うん、でも派手な柄多くなかった?なんかキラキラ光ったヤツとか、手の甲にハートマークのとか、あれは無理だな」


顔をしかめて見せると、カチュアも口に手を当てて笑った。


「あはは、確かにそうだよね。あれね、ジャレットさんが仕入れたんだよ。こういうの好きな人もいるんじゃない?って言ってた。男の人は抵抗あるよね?私もあれは、子供とか、そういうのが好きな女の人だと思う。でも、普通の無地も沢山入ってたから、それ買っていこうね」


ポケットに手を入れて、そうだね、と相槌を打つ。家から店まではほんの1~2分程度の距離なので、程なくして店に着いた。






店に入ると、すでに全員揃っていた。いつも出勤が遅くて、だいたい最後になるユーリまでいたのには驚いた。どうやら俺とカチュアが最後のようだ。

挨拶と昨日のお礼を言うと、みんな気にするなと優しい言葉をかけてくれた。


「うん。顔色も良くなってるように見える。回復したようで良かった」


「レイチェルは休まなくて大丈夫なのか?」


「フッ、大丈夫だ。私は睡眠はしっかりとっているからね。それに今は私が抜けれる状況ではない。だから今回の件が落ち着いたら、たっぷり休暇をもらう事にするよ」


そう言って笑って見せるレイチェルからは、確かに疲れた印象は見られなかった。



「じゃあ、全員揃ったし、朝礼を始めっか。おざーっす!」


ジャレットさんが全員席に着いているのを確認して、元気よく朝の挨拶を口にした。


レイチェルは今回の件が落ち着くまで、お店は完全にジャレットさんに任せる事にしたようだ。

俺もその方がいいと思う。

城と店を行き来して、その上アラルコン商会の、クインズベリー進出の橋渡しもしなければならない。レイチェル一人の負担が大きすぎると思ったからだ。


みんなが挨拶を返すと、昨日の売り上げや、各部門での困りごとや気付いた点などを上げていく。

大きな問題はなかったが、締めくくりにジャレットさんが、一つ気がかりを口にした。


「武器と防具、あと攻撃系の魔道具と傷薬関係がやたら売れてっから、やっぱ城での騒動が尾を引いてると思う。みんな自衛手段、備えをしてんだな。だから、カチュアとユーリは傷薬と回復薬をできるだけ作っておいてくれ。無理はしなくていいぞ、焦らずに、でもできるだけ沢山な」


「ジャレット、それってどっち?ゆっくりでいいの?それとも急かしてんの?」


ユーリが眉間にシワを寄せて、意味が分からないと怪訝な顔をして見せる。


「だから、焦らずにゆっくりでいいんだけど、できるだけ沢山だ」


「・・・もういい」


ユーリはコーヒーに砂糖をどばっと入れて、一気に飲み干した。

少しイラっとした感じが見える。



「・・・ん~、やっぱちょっと大変か?なぁレイチー、エっちゃんがさ、一昨日誕生日で8歳になったんだわ。ちょっと早いけど、白魔法部門で雇用できねぇか?」


エっちゃんとは、エル・ラムナリン。以前レイジェスがディーロ兄弟に襲撃された時に、ユーリが助けた女の子だ。それ以来、ユーリを慕ってよく店に来るようになり、お手伝いという形で店で働くようになったのだ。

好きな時に来て、暗くなる前に帰るという自由な形で手伝ってもらっているが、ジャレットさんは正式雇用して、もう少し長時間働いてほしいようだ。


「ん、そうだったのか。誕生日は確認してなかったな。8歳か・・・私も10歳になったら、正式な雇用を考えていたんだが、ちょっと早いな・・・」


考えるように腕を組んで、少し頭を上げる。


「一般的には10歳からの雇用が普通だけどよ、8~9歳から働き始める子がいないわけじゃねぇぞ。

エっちゃんなら、みんなとも仲良くできてるし、年齢以上に気が利いてる。ちょうど白魔法使いだから、今欲しいとこなんだよな」


ジャレットさんはずいぶん押している。それだけ今、人手が欲しいのだろう。


「ユーリン、カッちゃん、お前達もエっちゃんがもう少し長くいてくれれば、作業が楽になるだろ?」


「ユーリンて言うな。でも、エルがもう少しいてくれれば助かるのは本当」


「うん、私もエルちゃんがいてくれればうれしいし、助かります」


ユーリとカチュアの意見に、レイチェルも真剣になったようだ。目を閉じて思案している。


「・・・週に3~4日だな。勤務時間は10時から15時まで。昼休憩は1時間、時間給で800イエン。この条件でエルのご両親と話してみてくれ。いきなりフルタイムでは、エルもご両親も戸惑うだろう。1日置きくらいで気楽に来てもらおう。勤務時間で希望を言われたら、柔軟に受けてくれ。あとはジャレットに任せる」


「おう、分かった!良かったなユーリン、カッちゃん!次エっちゃんが来た時に話そうぜ」


レイチェルの許可が出て、二人は嬉しそうに頷いた。

ユーリもこの時は、流石にユーリン呼びを黙認したようだ。


「さて、他になければ私から昨日の事を話そう」


レイチェルは俺に視線を送ると、アンリエール様との謁見について話し出した。



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