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52 あなたに

店に着いたのは午後1時を過ぎた頃だった。


アローヨと戦い、マルコスと対峙した事で、軽い興奮状態だった私は、気持ちを落ち着けるため、

街をブラブラと歩いて頭を冷やし、時間を潰してきたのだ。


「ぃらっしゃっせ~、って、レイチーじゃねぇか。うぃ~っす」


従業員用の裏口ではなく、お客さん用の正面出入り口から入ると、ジャレットが入口横のメインレジに立って、ガントレットを磨いていた。


各部門のコーナーにもレジを設置してあるが、店内を色々見て回り、最後にまとめてお会計をできるように、出入り口の横には、メインとなるレジを設置してある。


メインレジは時間帯で着く人を決め、その間は自分のコーナーからやりかけの仕事を持ち込んだりして、空いた時間に作業をするようにしている。


「おはよう、ジャレット。なにか問題はなかったかい?」

「ん、大丈夫だよ。いつも通りだ。ミッチーから事情も聞いてるよ。どうだった?」


ジャレットはガントレットをカウンターに置くと、私に話を促してきた。


「アラタには会えなかった。でも、まだ無事みたいだ。まず、ミゼルとシルヴィアも入れて4人で話したい。カチュアは?」


ジャレットは腕を組むと、眉を寄せ天井を見上げた。

「レイチー、カっちゃんには黙ってろって事だから、まだ話してないけどよ。俺は隠し事は好かねぇな。話してもいいんじゃねぇか?また行くんだろ?そん時は連れて行ってやれよ」


「でも、期待させて会えなかったらよけい傷つかないかい?今のカチュアにこれ以上辛い思いはさせたくない」


「俺から見て、カっちゃんの時間はあの日から止まってんだよ。表面だけ笑ってても心の中でずっと泣いてんだ。きっかけが必要なんだよ。会えなかったとしても、カっちゃんはそこまで弱くねぇよ。

むしろよ、会えるまで毎日通ってやるって強く立ち直ってくれんじゃね?もしよ、更にへこんじまったら、レイチーもユーリンもシーちゃんもいるじゃねぇか?俺ら男は、こういう時頼りにならねぇけど、みんなで支えてやろうぜ」


ジャレットはやたら白い歯を見せて笑うと親指を立てた。

チャラいくせに爽やかで、うさんくさい笑顔に、私は思わず笑ってしまった。


ひとしきり笑うと、色々考えてさっきまでモヤモヤしていた気持ちが、晴れるようだった。


「ひでーな、そんな笑う事なくね?俺けっこー良い事言ったと思うぜ?」


「ごめんごめん、うん、そうだね。ジャレットは良い事言ったよ。私、これからカチュアと話してくるね。みんなには閉店後に話すとするよ。それでどうかな?」


ジャレットは私の表情を見ると、納得したように頷いた。

「おう、いい顔になった。カっちゃんの事はまかせたぜ。俺は他の皆に軽く話し通しておくよ。閉店後に事務所な?」


ジャレットは本当に仲間想いだ。今話せて良かった。私はきっと怖い顔をしてたから。

カチュアの事だけでなく、私の気持ちをほぐす事も考えて話してくれたのだろう。


私の足取りは少し軽くなった。



カチュアとは事務所で二人きりで話す事にした。

思いの他、落ち着いて話しを聞いてくれた。

黙って一人で行った事を謝ると、何度も首を横に振って、気にしないで、と言ってくれた。


行きたい?と尋ねると、黙って頷き、そのまま下を向いてしまった。

シャツの裾を力いっぱい握り締めているところを見ると、本当は今すぐにでも行きたいのだと感じた。


そう言えば、ここのところカチュアはワンピースを着なくなった。シャツとパンツスタイルばかりだ。

カチュアはワンピースが好きで、2回に1回はワンピースを着てくるが、こういうところにも現在の心境が現れているのかもしれない。


私は来週一緒に行こうと誘った。

いいの?と不安そうに、小さな声で聞き返されたので、私は笑って、当たり前じゃん!と答えた。



「・・・レイチェル・・・ありがとう」



下を向いたままだったので表情は見れなかったけど、少し涙声だったから、私はカチュアをそっと胸に抱きしめた。やっぱり少し痩せている。



・・・アラタが心配しちゃうから、もう少しご飯食べようね?


・・・うん


・・・無理に元気出さなくてもいいんだよ?


・・・でも、私いっぱい迷惑かけてるから


・・・誰も迷惑なんて思ってないよ


・・・・・・・


・・・カチュア


・・・うん


・・・みんなカチュアの事、大好きだよ



それからカチュアが泣き止むまで、私はずっとカチュアを抱きしめた。


辛い時、悲しい時は、いっぱい泣いていいんだよ


私があなたを抱きしめるから


いっぱい泣いたら、今度はいっぱい笑おうね


あなたに笑顔でいてほしいから







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