表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
519/1565

519 ロンズデールからの使者 ④

「アラタ君、ちょっといいかな?」


「ん、どうしたの?」


馬車に乗ろうとすると、カチュアが呼び止めて来た。

すでにレイチェルとリンジーさんは馬車の中に入っているため、後は俺が入れば出発できるところだった。


ジャレットさん達は、カチュアが急に俺を呼び止めたので、なにかなと目を向けている。


「あのね、リンジーさんだけど・・・みんながまだ完全に信用できてないのは分かるの。昨日会ったばかりだし、しかたないって思う。でもね、昨日一緒にご飯食べて、一緒の部屋で寝て、いっぱいお話しして、私はリンジーさんは良い人だなって思ったんだ。今度またお泊りに来てねって、さっき約束したの。だから、アラタ君にもリンジーさんを信じて欲しい。もし、困ってたら助けてほしいの」


じっと俺を見るカチュアの目を見て、俺はニコリと笑って答えた。


「・・・うん、分かった。安心して。俺だって昨日握手したんだし、もうリンジーさんとは友達だよ。俺で力になれるんなら助けるさ」


「良かった。ありがとう、アラタ君」


カチュアは安心してほっと息を付いた。


「じゃあ、行ってくるね。あ、今日の夕飯は何かな?」


「まだ決めてないの。食材昨日でほとんど無くなっちゃったから、今日のお昼にモロニーマートに行ってくるよ。アラタ君、からあげ好きだもんね。からあげにしようか?」


「うん、からあげがいいな。夕飯が楽しみだよ」


そう言って俺は、カチュアとその後ろに立つみんなに、軽く手を振って馬車に入った。






「アラタ君とカチュアちゃんは婚約してるんですよね?」


「あ、はい。今回の件が落ち着いたら式を挙げようと思ってます」


馬車が動き出すと、向いに座っているリンジーさんが話しかけてきた。

俺はその事を話していないので、昨日、カチュアが寝る前にでも話したのだろう。


「素敵ですね。新婚旅行はぜひロンズデールにいらしてください。温泉もありますし、観光地としてとても人気があるんです。私、ご案内しますよ」


そう言って笑うリンジーさんは、裏表があるようにはとても見えなかった。

やはりカチュアが言うように、本当にただの良い人なのだろうか・・・


俺は軽く頭を振った。

なんで俺はこんなにリンジーさんを疑う?リンジーさんは良い人だ。

ずっと笑顔だからってそれの何が怪しい?笑顔の裏を読むなんて、俺はまだ日本にいた時の悪い癖が抜けていないのか?



【アラタ、もうちょっと笑いなよ?今のお客さん、どうもって愛想良く帰ったでしょ?ああいう時は笑顔で言葉返すもんだよ?なに「あ、はい」なんて言ってんの?まったくアラタだなぁ~」


ふと、以前ヤヨイさんに言われた言葉が思い起こされた。



「・・・はい、カチュアと相談してみます。その時は、ぜひお願いしますね」


俺は笑ってリンジーさんに言葉を返した。

笑顔には笑顔で返そう。ヤヨイさんにそう教えてもらったじゃないか。


レイチェルは何か考えているようで、ずっと馬車の窓から景色を眺めていた。

きっと、エルウィンとの事だろう。


気になるけどデリケートな話しだし、俺が口を挟める事ではない。


空気を呼んだと言うか、リンジーさんもずっと俺にだけ話しかけて、話題が尽きないようにうまく話しを広げるので、宿につくまでの間、馬車の中に沈黙が漂う事はなかった。





「・・・着いたな、降りようか」


馬車が停まり、クリスさんの宿に着いた時には、レイチェルも気持ちに整理を付けられたのだろう。

いつもと変わらない様子で、俺とリンジーさんに顔を向けた。

レイチェルは引きずるような性格だと思わないけど、切り替えが早くて内心少しほっとした。


俺とリンジーさんは、返事をして先に馬車から降りた。


「エルウィン、ここで二人合流する。中で話して来るから少し待っててくれ」


最後に馬車から降りたレイチェルは、そのままエルウィンに声をかけた。

俺がエルウィンに伝えようかと思ったのだが、レイチェルは早いうちに一度、自分からエルウィンに話しかけるべきだと考えたのかもしれない。

確かに、ああいう雰囲気になると、時間が経てばたつほど話しかけづらくなると思う。

なんでもいいから会話をして、お互いに気にして無いよ、という意思疎通はしておくべきだ。


「はい、分かりました。ここで待ってますね」


エルウィンは頭が良い。

そういうレイチェウの気持ちも察したのだろう。

声をかけられた事に、一瞬だけ驚いたように目を開いたが、すぐに笑顔を作って返事をした。


エルウィンが今、自分の気持ちとどう向き合っているかは分からないが、一先ず二人の関係が落ち着いた事に安心した。




「あら、アラタ君にレイチェルじゃない。今日はどうし・・・あ、あなた!心配しましたよ!」


宿に入ると丁度受付にクリスさんがいて、リンジーさんを見ると指をさして声を上げた。

やはり宿でも騒ぎになっていたようだ。詰め寄って来るクリスさんに、俺とレイチェルは間に入って状況を説明した。


リンジーさんの付き添いの人も、とても心配していたらしい。

それはそうだろう。暗くなってから外にいたら、トバリに喰われる事はほぼ確定なのだ。


「はぁ~、こういう事はこれっきりにしてくださいね?」


「はい。本当に申し訳ありませんでした」


リンジーさんが深々と頭を下げると、クリスさんは、じゃあお連れの方を呼んできますね。

と言った階段を上がって行った。



少し待つと、ドタバタと音を立てながら、体格の良い白髪の男性が階段を駆け下りて来た。


「あ、ガラハドー!」

「リンジー!お前いい加減にしろよ!」


リンジーさんが明るい声で手を振ると、ガラハドと呼ばれた男性はリンジーさんの顔に指を突きつけ、宿中に響き渡る大声で怒鳴りつけた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ