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511 経過報告

「まず、国王陛下の国葬だが、まだしばらく時間がかかりそうだ。ご遺体が無い事は国民には伏せてあるから問題ないが、城が半壊している事がやはり大きい。つまりやりたくてもできる状態じゃないという事だ。やっと少しだけ落ち着いてきたが、これは当分かかるな」


しかたない事だろう。

あの戦いからまだ五日だ。復旧作業なんてまだまだ時間がかかって当然だ。


「それと、アンリエール様が正式に女王陛下になられる事が決まった。来週にでも国民に向けて発表される予定だ。事前に国民へお披露目の知らせも出るから、詳しい日時はそれを見てだな」


「そっか、王妃様が無事に即位されるのか。良かった」


安心して息をつく。

王妃様の即位は、この国を立て直すための最重要事項だった。

戦いの爪痕は大きかったが、ここからこの国は良くなっていくだろう。


「うん。アンリエール様なら、きっとこの国を見事に復興してくださるよ。今回の件で、エリザは兄二人と少し溝が出来ていたんだが、それもマルス様とオスカー様が謝罪されて、すっかり仲直りされた。以前より仲良くなったと思うくらいだよ」


そう話すレイチェルの表情も柔らかい。

今ではレイチェルは、エリザベート様を、エリザと呼び捨てている。

エリザ様がそう望んだと言っても、王女様を呼び捨てなのだ。なかなかに勇気がいる。

エリザ様はレイジェスのみんなにそうして欲しいようだが、今のところ呼び捨てにできているのは、レイチェルとケイトとリカルドの三人だけだ。

ただリカルドの場合は、尊敬も何もなくて雑な感じだったが。


「それと、リーザとローザのアコスタ姉妹だが、引き続きアンリエール様の側近として護衛を続けるようだ。城で店長から聞いたのだが、あの二人は店長の弟子だったそうだ。アンリエール様に紹介したのが店長だと言うから、私達の知らないところで色々動いたんだな・・・」


レイチェルは少し寂しそうに見えた。

極秘で事を進めていたのは分かるけど、やはりレイチェルは話して欲しかったんだと思う。


「レイチー、四勇士の件はどうなった?俺とシーちゃんが戦ったレオ・アフマダリエフだ」


ジャレットさんとシルヴィアさんが戦ったのは、四勇士の体力型の男だった。

そしてそのレオ・アフマダリエフという男は、この戦いで命を落としている。


「あぁ、それだが、アフマダリエフ家で後任を選ぶ事になったそうだ。アンリエール様は、今回の件で四勇士を罰する事はお考えにない。彼らは城を護る。その役目を忠実にこなしただけだと言っておられた。それと、もう少し自由を与えるともおっしゃられていた。なんでも、ジーンとユーリが戦った、黒魔法使いのバルデスが、メイドのサリーと共に外の世界を見たいから、四勇士を降りたいと言ったそうでな。クインズベリー国からすれば、バルデス程の人材の流出は避けたいだろ?だから、とにかく説得したそうだ。それで残る条件がある程度の自由という訳だ」


「・・・出て行けばいいのに」


ぼそっとユーリが呟いた、

ジーンから聞いた話しだが、ジーンとユーリが戦ったシャクール・バルデスという黒魔法使いは、ユーリがアッパーで顎を砕いて勝ったそうだ。

だが、バルデスは塔を破壊しないように、相当魔力を抑えて戦っていたらしい。

全力を出していない相手に、二人がかりでかろうじて勝った事が悔しくて、ユーリはバルデスに対抗心みたいなものがあるようだ。


「ユーリ、城に泊まった時、彼とも話したじゃないか?いずれ共闘する事もあるかもしれない。だから、これからは仲間として認めていかないと。彼だって僕らが憎くて戦ったわけじゃないんだ」


「む・・・分かった」


ジーンにたしなめられ、ユーリは渋々といった顔で頷いた。

ユーリは男性陣でジーンの話しだけはちゃんと聞くのだ。現に俺はジーンがユーリに殴られたところは一度も見た事がない。ジャレットさんでさえ、殴られる事があるのにだ。


「ねぇレイチェル、店長はどうなるの?」


ケイトが腕を組んでレイチェルに顔を向けた。

しばらく帰って来れないという事は聞いているけど、ケイトの質問の意図はそういうそれとは違うようだ。レイチェルも少し表情が曇った。


「・・・アンリエール様から王宮入りを求められてた。無理強いはされていないが、やはりこれまでとは状況が違うからな。女王となった今、店長の力を国のためにと求めるのは当然の判断だろう。もっと言えば、私達全員を迎え入れたい様子だったんだぞ。さすがにこの店があるからそこまでハッキリとは口にされなかったが・・・」


その言葉にざわめきが起きる。

ケイトは予想していたようで、溜息を付いた。


「あ~、やっぱり・・・そういう話しになるかもなって思ってた。女王として国のトップになったら、今までみたくこっちの気持ちを察してばかりはいられないからね。実際、国難だしね」


ケイトは頭の後ろで手を組んで、天井を見上げた。

少しだけ眉をひそめて苦い表情をしている事から、ケイトにしてもこの話しはあまり望ましいものではないようだ。


「なぁ、それでどうなりそうなんだ?店長は受けるのか?」


ミゼルさんが確認をとるように、レイチェルに問いかける。


「いや、店長はその場でハッキリと断っていた。自分はあくまでレイジェスの店長だからと。ただ、国がこの状況だし、できる限り力を貸すとは言っていた。アンリエール様も分かってはいたのだろうな。それで了承してくださった。ただ、やはりしばらく店には来れないだろう。私も店長のサポートで城にいる事が多くなるが、二日に一度は店の様子を見に来るようにするよ」


そこで言葉を区切ると、レイチェルはジャレットさんに向き直った。


「ジャレット、そういうわけだから店の事はキミに任せる。もし急ぎの用があれば、写しの鏡を使ってくれ。ただし、アンリエール様に繋がるから、本当に緊急事態に限るぞ」


「おう、任せとけ。まぁ、そうそう何もねぇとは思うが、もしもの時はな・・・」


ジャレットさんは親指を立てて軽く頷くと、事務所の隅に置いてある金庫に目を向けた。

売上金の他に、カギなど貴重品を入れておくのだが、写しの鏡も入れてある。


「うん、もしもの時はいつでも遠慮せずに連絡をくれ。さて、じゃあ私はそろそろ行くけど、みんなからなにかあるかい?」


席を立つレイチェルに、俺は一つ思い出して呼び止めた。


「あ、レイチェルちょっと待って。あのさ、昨日バルクさんから聞いたんだけど、ロンズデールから使者が来るかもしれないって言ってたよ」


「・・・なに?ロンズデールから?」


レイチェルはピタリと止まると、どういう事かと聞き返して来た。


「あぁ、その様子だと城に話しは行ってないみたいだね?ロンズデールの行商人から聞いたって言ってたよ。今回の件でなにかあるんだろうって言ってたけど」


「・・・そうか・・・うん、分かった。城に戻り次第、アンリエール様と店長に伝えよう。こっちではそんな話しは出ていないからな、行商人の情報網は大したものだな」


そう言って感心しているレイチェルに、俺はもう一つ、頼みたかった事を口にした。


「それと、俺も城に行きたいんだ。エリザ様ともあれっきりになってるし、店長さんとも一度ちゃんと話したいんだ。どうかな?」


「ん?そうか、まぁ大丈夫だと思うが、今日いきなりは難しいな。話しは通しておくから、次に私が来た時に行けるようなら一緒に行こう。何事もなければ明後日また来るよ。それでいいかい?」


頼むよ。そう俺が返事をすると、レイチェルは、分かった。と言ってニコリと笑った。


「じゃあ、私は行くよ。みんな、店を頼んだよ」


軽く手を振り、レイチェルはドアを開けて出て行った。




それから二日後、店に来たレイチェルから、俺が城へ行けるという事を告げられた。



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