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506 戦いの後 ③

「え?マルゴンが・・・いなくなった?」


「うん、私もレイチェルから聞いただけで、詳しい事は分からないんだけど・・・怪我の治療をして、その後かな・・・いつの間にかいなくなってたんだって」


カチュアも考えながら話しているようで、腕を組んで天井に目を向けている。


「誰にも、何も言わずにいなくなったの?」


「うぅん、置手紙はあったみたい。その手紙によると、やる事ができたって、あとクインズベリーのために行くって書いてあったみたいだよ。でも元々は牢に入れられてたわけでしょ?本当ならやっぱり脱獄犯になるんだけど、王妃様が今回の件でマルコスさんの力は大きかったっておっしゃられて、恩赦を与える形にしたみたい。だから、国から追っ手を出すとか、そういうのはないみたいだよ」


「・・・そっか、つまり自由になったって事なんだ・・・うん」


なんだか、複雑な気持ちだ。

この戦いを終えて、俺はマルゴンに対して、今までのような嫌な気持ちはほとんどなくなっていた。

仲良く笑い合う事はできないけど、それでもマルゴンを認めるような気持ちになっていた。

だからだろう。犯罪者として追われる事もなく、自由になったと聞いて、どこかほっとしてる自分がいた。


「・・・ふふ、アラタ君は優しいね」


「え、急になに?」


「マルコスさんが無事で安心したんでしょ?顔を見れば分かるよ」


「え、そうなの?・・・いや、当たってるけど・・・俺分かりやすいのかな?」


「うん。分かりやすいと思うよ。私もよく言われるから、一緒だね」


カチュアはクスクス笑うと、ベットから立ち上がって、俺に服を脱ぐように言ってきた。


え!?なんで脱ぐの!?と、俺が驚くと、手にしていたタオルを見せて、汗を拭くからだと言う。


「アラタ君、なにを想像してたの?」


「え!?・・・いや・・・それならクリーンでいいじゃん?」


よからぬ事を想像してしまい、バツが悪くなって頭を掻いてごまかす。

カチュアはそんな事お見通しと言うように、クスクス笑って俺の頬をつついてきた、


「あはは、クリーンでもいいけど、ちゃんと体拭いた方がスッキリするよ。本当はお風呂に入れてあげたいんだけど、まだ体痛いでしょ?ちゃんと動けるようになったら入ろうね」


そう言ってカチュアは水を入れたボウルでタオルを絞り、俺に早く脱ぐように言ってくる。


あらためて自分の着ている服を見てみると、茶色の浴衣のようなものだった。

土の寝間着である。少しだけど回復効果があり、着ていると擦り傷くらいなら一日で治るというものだ。

この世界に来た初日に、レイチェルにも着せてもらった事でよく覚えている。


「・・・じゃあ、お願いします」


そう言って寝間着の上をはだけさせると、なんだか妙に気恥しくて敬語になってしまった。


「はい、それでは拭いていきますね」


カチュアもそんな俺に合わせるかのように、敬語で返して背中にタオルをあててくる。

ほどよくひんやりしたタオルが、とても気持ち良かった。




「・・・アラタ君」


「うん、なに?」


「本当は・・・もっと大怪我してたんじゃない?」


「・・・いや、どうだったかな・・・よく覚えてないや」


「・・・・・前にした約束、覚えてる?」


そう言ってカチュアは、俺の背中を拭く手を止めた。

不安な心を隠しているような、そんな小さな声だった。


「・・・うん、覚えてるよ」


俺も前を向いたまま返事をした。

それは、あの日・・・パスタ屋で夢の世界から帰って来た時にかわした約束だった。


「・・・カチュアを置いて、一人でどこかに行ったりしないよ。これから先も・・・ずっと」


「・・・うん」


カチュアは一言だけ返してくれると、また俺の背中を拭き始めた。


きっとカチュアはなんとなく分かっているんだと思う。

俺が本当はもっと危ない状態だったという事を。


今、どんな表情で俺の背中を拭いているのか分からないけれど、ずいぶん心配をかけた事に胸が痛む。


「・・・終わったよ」


そう言ってカチュアは手を止めると、俺の背中に体を預けて来た。

カチュアはそのまま何も話さない。


時間だけが過ぎていく・・・・・


5分・・・10分・・・いや、ほんの1分程度だったかもしれない。

俺も何も話さなかったけれど、ゆっくりと体を振り向かせて、カチュアに向き直った。


「いつも泣かせてごめん。いつも一緒にいてくれてありがとう」


「・・・うん」


そう言ってカチュアを優しく抱きしめた。

カチュアも俺の背に手を回して、抱きしめ返してくれた。


今、カチュアは笑ってくれたけど、多分、俺の背中を拭いている時は、悲しい顔をしてたんだと思う。


カチュアを悲しませないためにも、俺はもっと自分を大事にしなければならない。

それは分かっている。けれどどうしても戦わなければならない時がある。

それはこの光の力を持つ限り、避けられない運命だ。


ならばどうしたらいいか・・・


俺はこの力との向き合い方を真剣に考えなければならない、そう心から思った。



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